健部伸明

青森県出身の編集者、翻訳家、ライター、作家。日本アイスランド学会、弘前ペンクラブ、特定…

健部伸明

青森県出身の編集者、翻訳家、ライター、作家。日本アイスランド学会、弘前ペンクラブ、特定非営利活動法人harappa会員。CMON Japanディレクター。和製非電源ゲームの海外啓蒙団体人Japon Brand代表理事。弘前文学学校講師。著書に『幻獣大全』等

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  • アナログゲームマガジン

    あなたの世界を広げる『アナログゲームマガジン』は月額500円(初月無料)のサブスクリプション型ウェブマガジンです。 ボードゲーム、マーダーミステリー、リアル体験型ゲーム、TRPG、LARP、将棋。各ジャンルの専門家が、他では読めない記事を連載しています。アナログゲームの世界を幅広く紹介し、あなたに新しい趣味を紹介します。

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ゲームの神様:リアル版

その名も刈田(カルタ)堂。正式には野瀬正観世音堂である。 赴いたのは2006年のこと。三戸町の道なき山道を進み、深緑の中にいきなり登場する鳥居。狭く急な参道を登った先にぽつねんと佇む木製のお堂。神仏習合の厳粛で異様な空気感。管理を任されている工藤さんが、親切にもお堂を開けてくれた。そこには夢のような異空間が広がっていた。 観音像を収める厨子の全面に、花札の起源のひとつともいえる、江戸のめくり札の一種「黒札」が、びっしり貼られている。 https://www.asahi-

    • 映画『アライブフーン』最長不倒レビュー:完全版+追補篇

      ●ゲームからリアルへ、そしてリアルからゲームへ このところ公私ともに多忙を極め、NOTEも更新できず申し訳ない。書かずに居続けるのも恐縮なので今回は趣向を変え、すべてのゲーマーにお勧めできる映画『アライブフーン』を紹介したい。  焦点は電源系ゲーマーに当たってるが、マフィア梶田も指摘してるように、すべてのオタクに向けてのポジティヴなメッセージになっている。  そんなわけで今回は特別編。全文無料で公開とさせていただく。 ▼ぼくの鑑賞&レビュー履歴 ・2022/5/25:イオ

      • アナログゲームマガジン大賞2022健部賞

         去年は消極的ながら、この賞の選出そのものを辞退した。  ボードゲーム・メーカーであるアークライトの海外ローカライズ部門の責任者であり、日本のゲームを海外に出すプロジェクトたるヤポンブランドの代表理事であるからして、何を選んでもバイアスがかかる。  結局プレイするのは自分が関わったゲームばかり。  そのなかから選ぶとなると、単なる宣伝の提灯記事になりかねない。  ……とは言いつつ、昨年(2021年)のぼくの一位は、ここで何も書かずとも、皆さんお分かりになっているか

        • 吾、如何にしてグルームヘイヴンおじさんになりしか2 ~アイザックは天才~

           Isaac Childres。天才ゲーム・デザイナー。  2000年、にカリフォルニア州ベーカーズフィールド高校を卒業。  オクラホマ大学にて、物理学およびジャーナリズム学士号取得。  インディアナ州ラファイエットのパデュー大学にて、物理学修士および博士号。ラファイエット在住。  学生時代よりずっと『D&D』などテーブルトークRPGのゲームマスターをしていた。  研究の道より、ボードゲームのデザインと出版を選び、2014年にセファロフェア・ゲームズ設立。  第1作『鍛造戦争

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          吾、如何にしてグルームヘイヴンおじさんになりしか

           またも、やらかしました。 「誰よりも『グルームヘイヴン』のルールを読みこんでるから」との自負が過信となり、微妙で大事なルール質問に、自信満々で誤答しました。いけません。土下座案件です。たぶんこれで3度目です。懲りてないと言われても仕方ありません……すいません。  今度からもっと謙虚になります。  少しでも不安要素があったら、言いきる前に、まずは原典を確認します。  こんなんですから、皆から呼ばれている〈グルームヘイヴンおじさん〉の名前を返上しますです……  と言ったとこ

          吾、如何にしてグルームヘイヴンおじさんになりしか

          『くじゅろく:赤地蔵』技法の推定再現

           ぼくはこのマガジンで、たびたび日本の地方札/めくり札について書き連ねてきました。あるいは抽象化が進み、あるいは塗りつぶされた艶やかな札を見ながら、失われた技法を推定するのはロマンそのものであり、分かりかけたように見えても完全には解読できない部分に、よくやきもきしたものです。  ところが、そんななかでも複数の文献に記録が残され、最近(といってもここ数十年)まで遊ばれてきたために、ほぼ解明されている稀有な技法があるのです。それが《大二》などの豆札で遊ばれた『くじゅろく』。3人遊

          『くじゅろく:赤地蔵』技法の推定再現

          地方札《赤八》本来の技法『オテアゲ』 の出来役について

          『マジック:ザ・ギャザリング』が一世を風靡して以来、トレーディング・カードゲームは、世界じゅうで爆発的な人気を博しました。しかし……   1.レアなカードを揃えるには莫大な金額を必要とする   2.ソリッドな仕上がりのゲームほど技量の差が出やすい   3.延々と続くシリーズ展開を追っているうちに疲弊してしまう  などのせいで、往時ほどの勢いはありません……日本を除いて。  コロナ禍で直接の接触がはばかられ、しばらくイベントが開けなくて少し元気がなくなってはいましたが、それ

          地方札《赤八》本来の技法『オテアゲ』 の出来役について

          ほんとうにお休みの日にやっていること(健部の場合)

          【特集】ほんとうにお休みの日にやっていること  健部です。何足もの草鞋を履いています。COVID-19による位相転移が始まる前は、その草鞋で北半球をさまざま経巡ったものです。海外線だと10時間前後も機上の人になりますので、そこでの楽しみは、機内サービスのワインを煽りながら映画を観ることになります。1フライトで5本鑑賞したこともあります。  今まで行ったなかで一番南はパラオですが、ギリ赤道より北で、南半球にはまだ行ったことがありません。元々北国生まれなので、熱いのが苦手という

          ほんとうにお休みの日にやっていること(健部の場合)

          【江戸うんすん】安永ルール大田南畝『半日閑話』より(1773)

           我々の知っている所謂トランプは、オランダからやってきたものがベースとなっており、ご存じのとおり「4スート×13ランク=52枚」である。  しかしそれより前、種子島に火縄銃やキリスト教徒と一緒に渡ってきたのがポルトガルのプレイングカードであり、「南蛮かるた」と呼ばれていた。これが日本で複製されると、その年号から「天正かるた」と呼ばれ、やがてその図像が簡略されて「めくりふだ」となった。  天正かるた系は「4スート×12ランク=48枚」であり、10のランクの4枚がない。またエース

          【江戸うんすん】安永ルール大田南畝『半日閑話』より(1773)

          はちはち略史

           いま、最も普遍的に売られている所謂「花札」(あるいは、より古式ゆかしく「花かるた」)の正式名称を、みなさんは御存じだろうか? 実は「はちはち(八々)花」というのである。  実際に花札をプレイされている方なら感覚的におわかりいただけるだろうが、今の花札の「めくり技法」は、3人プレイが前提になっている(『ドラえもん』世代のぼくは、ついスネ夫の「悪いなのび太、このゲームは三人専用なんだ」を思い浮かべてしまう)。  札の点数だが、20点の光札×5枚=100点、10点のタネ札×9枚=

          はちはち略史

          古い日本の未公開の技法の資料

           日本という国は、天正の昔からカードゲームが盛んだった。私見だが、ゲームマーケットで売られているゲームの多くがカードゲームであるのは、単にコストや製作が簡単だという以外に、我々の背骨にこういう伝統があるからではないかと思っている。  そんなわけで今回は、今まで公表していなかった古い日本のゲームに関する生の資料を、この場で発表してみようと思う。とっておきの御蔵出しだ。生であるから、リアルな記録なのだが、逆に言えば説明不足の部分も多い。しかし不足分を説明してくれる人も、おそらく

          古い日本の未公開の技法の資料

          戦争とボードゲーム

           現代的なボードゲームの走りは、ウォー・シミュレーション・ゲーム(すなわち戦争ゲーム)にある。元々は実戦の机上演習としておこなわれていたものだが、それを知的遊戯へと昇華させたのである。  ウォー・シミュレーション・ゲームの生みの親とされている人物はふたり。  ひとりめは『宇宙戦争』『タイムマシン』『透明人間』などのSF小説の元祖としても有名な、イギリスのH・G・ウェルズで、1913年に『リトル・ウォーズ』というミニチュア・ゲームを出版した。  この系統がそのまま発展したもの

          戦争とボードゲーム

          トリックテイキングゲーム用語集

           一昔前はトリックテイキングというだけで逃げていく人が多かった。ところが昨今では、喜んで好んでプレイする人も増えているという。あんな縛りが多いゲームに一喜一憂するなど、奇特な御仁だ。かくいう私もそのひとりである。  由緒正しき『コントラクト・ブリッジ』はイギリスから渡って来たものだが、日本にも絵取りから発展した『カン』や『ナポレオン』、点取り系の『ツーテンジャック』、江戸のうんすんかるたを使う『メリ』などの技法がある。むろんゲームマーケットで新作がどんどん出てきて、そのユニ

          トリックテイキングゲーム用語集

          RPGで「冒険者ギルド」とか言うけど、それって何?

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          こんなインストはイヤだ ~『アンドールの伝説』を題材に~

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          鬼札~めくりの"ジョーカー"について~

           10月は海外出張があって新規の記事を書くことができなかった。謹んでお詫びしたい。過去に同人誌で出した「鬼札/ジョーカー」に関する記事を、ここに再録するのでお許し願いたい。  ちなみにプレイングカード(いわゆるトランプ)で、他のどの札の代わりにもなる札をジョーカー、もしくはワイルド・カードと呼ぶが、それがいつごろから採用されたのかは、なかなかはっきりしない。  明確に札として証拠が残っているのは、実は日本の「すんくんかるた」が最も古く、1703~10 年頃に成立していた。

          鬼札~めくりの"ジョーカー"について~