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地方札《赤八》本来の技法『オテアゲ』 の出来役について

『マジック:ザ・ギャザリング』が一世を風靡して以来、トレーディング・カードゲームは、世界じゅうで爆発的な人気を博しました。しかし……

  1.レアなカードを揃えるには莫大な金額を必要とする
  2.ソリッドな仕上がりのゲームほど技量の差が出やすい
  3.延々と続くシリーズ展開を追っているうちに疲弊してしまう

 などのせいで、往時ほどの勢いはありません……日本を除いて。
 コロナ禍で直接の接触がはばかられ、しばらくイベントが開けなくて少し元気がなくなってはいましたが、それでも日本では様々なTCGの新エキスパンションは次々と出続けていました。そして緊急事態宣言が開けると、感染対策をしながら徐々にイベントも復活してきて、再度の盛り上がりを見せつつあります。
 海外では、ランダムなパックを必死で集めなくても定額で全セットを購入できるLCG(Living Card Game)型へと移行しているのに、なぜ日本だけTCGが残り続けているのでしょう?  
 いろんな理由が考えられますが、ぼくはそのひとつに「本来日本人は何よりもカードゲームが好きだった」ことをあげたいと思います。

 ポルトガルから4スート×12ランク=48枚のトランプが《南蛮カルタ》として輸入されてすぐ、《天正カルタ》として和製版が複製されました。それが江戸時代には「めくりふだ」と呼ばれるようになると、 その「ヴァージョン違い」が日本の各地で何十種類も作られました。これを「地方札」と呼びます。我々が知っている花札(正確には《八々花》)や、関西でよく使用される《虫札》《株札》も、もともとは地方札の一種だったのが、かろうじて現在でも生き残ってるわけです。
 これら以外で、もっとも普及していた地方札をあげるとすれば、今回論じる《赤八》になるでしょう。しかし《赤八》本来の技法は、伝承者が見つからなかったせいで、長らく幻とされてきました。
 しかし札を子細に観察することで、本来の技法の一端が見えてきたのです。2007年12月29日、ぼくはそのことを同人誌で発表しましたが、ここに再録いたします。江戸に想いを馳せながら、お読みになっていただければ幸いです。

補足:めくり札では、各スートは次のように呼ばれています:
  クラブ =(紺もしくは黒の太い棒)
  スペード(赤い細い棒)
  ダイヤ =おうる/豆(貨幣)
  ハート =コツ(カップ)
 ランクが1つないので、10の札はありません。つまり数札は1(A)~9までです。
 ジャック(J)は古くはソウタと呼ばれていましたが、女性であることがしばしば。あるいは(11ではなく)十/ジュウとも呼ばれます。
 クイーン(Q)がなく、かわりに馬/ウマと呼ばれる騎士がいます。
 キング(K)は、玉座に腰かけているので輿/コシと呼ばれます(あるいは一番最後の札なのので切/キリとも呼ばれます)
 タロットの小アルカナに似ていることに気づかれたかたもいるでしょう。つまりは同じルーツというわけです。
 では本編の、はじまり、はじまりぃ♪

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