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はちはち略史

 いま、最も普遍的に売られている所謂「花札」(あるいは、より古式ゆかしく「花かるた」)の正式名称を、みなさんは御存じだろうか? 実は「はちはち(八々)花」というのである。
 実際に花札をプレイされている方なら感覚的におわかりいただけるだろうが、今の花札の「めくり技法」は、3人プレイが前提になっている(『ドラえもん』世代のぼくは、ついスネ夫の「悪いなのび太、このゲームは三人専用なんだ」を思い浮かべてしまう)。
 札の点数だが、20点の光札×5枚=100点、10点のタネ札×9枚=90点、5点の短冊札枚×10枚=50点、1点のカス札×24枚=24点、計264点。これをプレイヤー人数の3で割ると、ちょうど88点で割り切れる。ここから「はちはち」の名前がついたのである。
 なのに現在の我々のほとんどは「はちはち」の技法を知らない(技法そのものはネットを検索すればいくつか出てくる)。というのもこの技法は、幕末から昭和一桁まで(何度かの衰退を得つつも)発展したのだが、その過程で複雑華美を極めていった。時間もルールも膨大になり、地方ルールも多くなり収拾がつかなくなった(このへんは麻雀の日本での発展に似ている、というか麻雀のルールの幾つかも「はちはち」から援用された)。残念でならないが、時代の流れもあり、しょうがない部分もある。ぼくのような古いゲーマーは、年に一度ぐらい、供養のつもりでプレイしたりする。
 そんなわけで、かつて草場純さんが八八セットを復刻した際に同梱されていた『八々の遊び方』という冊子の、付録としてぼくが書いた「はちはち略史」を、ここに再掲したい。といっても、花札の淵源からたどるものになっており「八々」だけに限定してはいない(そこから説き起こさないと、説明不可能だからである)。
 例によって長文なので(このゴールデンウィークなど)時間のある時にでも、ごゆるりとご覧ください。

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