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2019年 夏、ロンドン 進むショッピングのデジタルシフトとサーキュラーエコノミーへの取り組み

昨年(2018年)のアメリカ西海岸、ロサンゼルスシアトルポートランドに続き、2019年夏のインスピレーショントリップは、サステナブル、スマートシティ、クオリティ・オブ・ライフをテーマに、ロンドンから北欧ヘルシンキ、タリン(エストニア)に出かけました。

まずはロンドンから。
ヨーロッパにリサーチに行くときに、いつも入口に位置付けているのがロンドンです。ファッション流通の仕事をしていると、ロンドンが世界のアパレルチェーンの最激戦都市のため、当地を定点観測地として、時系列で変化を見ることで、グローバルチェーン各社の勢いや取り組みが確認できます。

本題に入る前に、さっとストリートウォッチをレビューすることから始めましょう。

オックスフォードストリートでの気づき ①PRIMARKの進化

今回は、イギリスで最も売れているファストファッションチェーンのPRIMARKのパワーアップに目が留まります。オックスフォードストリートEASTの店舗では、安さだけではなく、以前よりもクオリティが上がった印象を受け、また、ヨガやランニングのアスレジャー用アイテム、ホームウエアの充実、コスメおよびサロンまで導入しており、まるで、TOPSHOPの廉価版のようでした。

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オックスフォードストリートでの気づき ②ショップバッグと広告戦略

一方、ストリートで同社のライバルである、H&Mのショップバッグを持っているいる人が少なくなっていることに気づきます。以前は、PRIMARK、H&M、Selfridgeが不動のトップ3だったのですが、H&Mのバッグが激減です。

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H&Mの店舗に入るとそこそこ来店客はおり、レジに並んでいる購入客もいますが、よく、観察していると、日本に1年先行して、ビニールのショップバッグを廃止し、紙のショップバッグを有料化したことが原因であることがわかりました。

多くの購入客が、紙のショップバッグは有料だ、と言われると、首を振り、購入商品を自分のバッグに突っ込んで帰る姿を多数見かけたものでした。

ファッション専門店にとって、購入客が持ち歩いてくれるショップバッグは大事な広告のひとつ。今後、環境問題への配慮から、無料のバッグが配れなくなるとなると、ブランド各社の広告や顧客コミュニケーションのありかたも変わって行くのだろう、と感じました。

オックスフォードストリートでの気づき ③ユニクロのボリューム戦略と集客増

過去、ロンドンでユニクロを見て、来店客がいまひとつなのが、気になっていましたが、今回は以前に比べて、来店客が多くなっていたことに気が付きます。

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要因を考えると、ひとつは、以前(2年前)と比べ、中心価格帯の商品の価格を下げたようで、安く感じたこと、あわせて小奇麗に並べていた店頭在庫のボリュームが増したことで、安さが演出できて、集客アップしているのでは、と感じたものでした。
古今東西、店頭ボリュームと集客は比例するものだ、ということを思い知らされます。

進化するクリック&コレクト

さて、ショッピングのデジタルトランスフォーメーション関連の話題に入ります。

2017年のロンドンの投稿では、オンライン注文の店舗受取り=クリック&コレクトの普及を取り上げました。百貨店からチェーンストアまで、オンライン注文した商品が、翌日には希望の店舗で受け取ることができるサービスが標準化していました。

今回、その先端を行っている老舗大手アパレルチェーンNEXT(ネクスト)が、自社の店舗網(全英に500店舗以上)と物流網を活かして、自社商品と他社ファッションブランドの商品だけでなく、AmazonUKの商品の受取拠点になっていることを知りました。

これはAmazon Hub Counter(アマゾンハブカウンター)という取り組みで、AmazonUKが宅配以外の選択肢として、国内に受取りのためのロッカーを設置するだけでなく、チェーン網をもったスーパーや専門店と提携し、AmazonUKで注文された商品を、提携先チェーンの物流網に乗せて、店頭で受け取ることができるというサービスです。プライム会員はもちろん無料で。

この取り組みのメリットは、Amazonにとっては、宅配以外の選択肢の多様性、顧客にとっては自分の都合のよい場所、タイミングで受け取れること、受け取り拠点になった店舗にとっては、商品を受け取りに来た顧客がついで買いをしてもらえる可能性がある、というところでしょうか。

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実際、僕も視察中にある雑貨屋さんで見た面白グッズをAmazonUKで購入し、Nextの店舗で受け取り指定をしました。無事、翌日受け取ることができました。

NIKEのアプリのインストアモードとサーキュラーエコノミーへの取り組み

オックスフォードサーカスのNIKEの旗艦店で気づいたことを2つほどご紹介します。

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1つは、前年(2018年)、ポートランドで体験した、顧客がスマホアプリを使って、気に入った商品の店内在庫を自ら確認して、試し履き予約ができるサービス。
あの時も、靴の購入時のストレス解消の素晴らしいソリューションだと、感動したわけですが・・・この機能が進化していることに気づきました。

ロンドンの旗艦店は5階建てのため、顧客が欲しい商品が複数階に分散している場合があります。そんな環境の中で、同アプリをインストアモード(その店舗だけで使える機能)にすると…異なったフロア(階)で商品を見て、それぞれの店内在庫を確認をして、試着予約をした複数商品を、店舗スタッフが顧客が希望したフロア(階)にまとめて持ってきてくれて、一か所で試し履きができる、というものです。

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このしくみは、顧客が店舗でどんな購買行動をするか、に着目し、そこで起こりうるストレスをテクノロジーでどう解消できるかを考えた上で、実現した機能だと思い、あらためて、NIKEのDXチームの顧客目線の取り組みに感心したものでした。

もうひとつは、NIKEのサーキュラーエコノミーへの取り組みです。履かなくなったスニーカーを回収して、再生できるパーツを取り出し、それを使って新しい製品化を行おうという、リサイクル、あるいは、アップサイクルへの試みです。
気に入ったスニーカーもアッパーは平気なのに、かかとが擦り切れて、履けなくなる、なんて経験は誰でもあるはずです。それをゴミとして、捨てるのは忍びないですよね。
これに対して、NIKEは回収バッグを配布して、店頭に持ってきてもらうか、バッグに入れて送ってもらう、というキャンペーンを行っていました。

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再生されるのは、ソールが中心のようですが、これからファッション業界、スポーツ業界でも出来るだけ廃棄を少なく、使わなくなった製品のパーツを利用して新しい商品をつくる、リサイクル、あるいはアップサイクルの取り組みは進んで行きそうです。 

※サーキュラーエコノミーとは、廃棄しなくてもよい素材だけを使って、製品をつくる。使用済み、または不要になったら、それらを原料にすることで、新しい商品をつくる循環をつくり、廃棄ゼロを目指すという取り組みです。
アディダスやNIKEは、ソールもアッパーも製品そのものが再生素材として利用できる素材を使ったシューズの製品化に取り組み始めたようです。

愛着のスニーカーをクリーニングして長くつきあうことを応援する Jason Markk

ロンドンで毎回訪れるスニーカーショップにSIZE?というチェーン店があります。SiZE?のカーナビ―ストリート店は、最新トレンドのシューズの品ぞろえをするだけでなく、2階のフロア全体を、その時々の話題のトピックのPOPUPコーナーにすることでも知られています。

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前回、2017年に訪れた時は、オンライン注文の店舗受取り=クリック&コレクトの受取カウンターでしたが、今回はスニーカーケアグッズを販売するJason Markkとコラボしたスニーカーのクリーニングサービスコーナーでした。

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サステナブルって言葉がバズワードのようになっており、環境に優しい素材を使うことがサステナブルだと思っている方も少なくありませんが、僕は、買って、持ち物にしたものをメンテして…長く、大切に使う、ということも大事なサステナブルな発想のひとつだと思っています。そんな観点から、SIZE?がPOPUPコーナーにこのトピックを選んだことは、タイムリーでさすがだな、と思いました。

ロンドンでリサーチ疲れを癒してくれる?のはクラフトビール

Tripadvisorでホテル近辺のパブを探して、クラフトビールで評判のローカルパブを訪ねました。EARL OF ESSEX。
気の良いマスターが何種類か試飲させてくれ、気に入った一番気に入ったイングランドDouble IPA、WYLAM IF 6 WAS 9 を頂く。オリジナルの各種つまみメニューも相性が良くて美味い♪

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さて、ロンドン定点観測を終えて、次は2019年のインスピレーショントリップのメイン都市であるフィンランドのヘルシンキに向かいます。

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