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2018年 夏、シアトル amazon go(アマゾン・ゴー)とシアトルに見た未来都市の縮図

「アパレル・サバイバル」(日本経済新聞社;2019年2月出版)の取材をかねて、2018年夏にアメリカ西海岸に出かけたインスピレーショントリップ。前回のロサンゼルスに続き、今回はシアトルでのエピソードです。

アマゾン・ゴー体験で感じた、ビジョナリー思考

未来の顧客体験から逆算しながら、流通の常識を変え続けるアマゾン・ドットコムが、一体どんな近未来を描いているのか?それを楽しみにシアトルに向かいました。

まず最初に、2018年当時話題だった amazon go(アマゾンゴー)を体験しに、アマゾン本社に行きます。

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メディアでは無人コンビニと紹介されていましたが、それは誤りで、「レジ無しコンビニ」が正しい表現です。
実際、デリで惣菜をつくる人たちは見えるようにしていますし、店内で顧客の質問に答えたり、案内をするスタッフの人数は従来のコンビニの人員よりも多いです。

事前にダウンロードし、クレジットカードを紐付けたアプリのQRコードを使って、ゲートを通って入場すると、天井に設置されたカメラが顧客の行動を一部始終追いかけ始めます。

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棚から何を取ったか、何を戻したか・・・。いたずらに、僕が取って、同行した妻に渡し、彼女が棚に戻した商品は僕に会計カウントされなかった、というように、結構精度は高いと思いました。

ナショナルブランドの食品から豊富な手作り惣菜の数々そして、ビール、ワインまで一般のコンビニで揃いそうなものは一通りあります。
買いたいものをバックに入れ、ゲートを出ると、イートインコーナーがあり、レンジで温めることも出来ますし、フォーク、ナイフ、スプーン、ナフキン、塩、砂糖、ケチャップ、マスタードなどもおいてあります。
数分後にアマゾンゴーから決済完了のメールが届き、レシートには1点の間違いなく、見事だと思いました。

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この瞬間、背筋に何か、スーッと通るものを感じたのを今でも覚えています。コンビニでレジで決済することが、こんなにストレスだったんだな、そして、ストレスフリーってこういうことなんだな、と。

この体験から感じたことは、とても便利な「コンビニ」という業態においても、顧客にとっては、レジに並び、お会計をするという行為が最大のストレスです。アマゾンはこのamazon goにおいて、そのストレスをテクノロジーで取り去ったのです。 メディアでは、この会計テクノロジーや、少人化によるコスト削減が話題になりましたが、
僕はそんなことより、テクノロジーで、これまでの業界の常識を覆し、顧客に、コンビニでレジに並ばず、決済行為をしなくてもよいという、そう遠くない未来に新常識になる体験を提供したことにあると思いました。

そして、前年対比をベースに、過去の改善で勝負する既存の一般企業は、未来の理想のショッピング体験から逆算して、新しいサービスを提供する、アマゾンらに対して、本当に太刀打ちできるのか?と強く、疑問に感じたものでした。これは、前回ご紹介した、amazon booksについても同様です。 

僕らの身の回りの業務についても、改善ももちろん、大事ですが、もっと先のビジョンを描き、そこから逆算して、今どうすべきか考えるという発想が、これからどれだけ大事になるか、という啓示を受けた思いでした。

ノードストローム本店周りのファッション流通の縮図

続いて、ファッション流通のリサーチに出かけます。やはり、シアトルと言えば、「サービスが伝説になる時」でおなじみの、高級百貨店ノードストロームの本社があることで知られていますね。

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ノードストロームの本店のある、5thAveとPineStの交差点。このあたりがショッピングの中心地であることは間違いないでしょう。この交差点には、ノードストローム本店、ノードストロームのオフプライスストア「ノードストローム・ラック」、ZARA、GAP、OLD NAVY、化粧品のセフォラがあります。まさしく、百貨店からSPAチェーンからファストファッションからビューティチェーンまで、現代のアメリカのファッション流通の縮図のような光栄です。

興味を持ったのが、百貨店であるノードストロームの本店の向かいに、百貨店のオフプライスストア(アウトレットのようなもの)=ノードストロームラックがあること。つまり、日本に例えると、伊勢丹新宿店の裏に伊勢丹会館がありますが、そこが、伊勢丹の在庫処分店になっているようなものです。

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そして、ノードストロームラックと同じ建物内に、ノードストロームの百貨店のライバルであるサクスフィフスアベニューのオフプライスストアであるOFF 5THが入居していること。更に、同じ建物に、百貨店並みのトレンドのファストファッションチェーン、ZARAが入居していることです。この建物、ノードストロームの持ちモノだったはずです。

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つまり、ライバル排除ではなく、顧客の利便性と買いまわりを考えた、ノードストロームの結論なんだな、と百貨店ながら、20%はオフプライスストアで売上を取るノードストローム社の柔軟性、懐の深さに脱帽します。

シアトルはIT企業が加速させた近未来都市の縮図

ここ5年でマイクロソフト、Amazonなどの高所得を求めてシアトルに人口が大量に流入し、一方で家賃高騰によりホームレスも増加、行政はそのためのシェルターを街中に用意したそうです。

アマゾンも毎朝、入居しているビルの入口近くで屋台を設け、バナナを無料で配っている(GO BANANA)のもその配慮からだとか。

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同じシアトルダウンタウンでも、たった10-20分の徒歩圏で、シェルターや市場のある、海側と、先ほどのノードストローム本店があるあたりから先と比べると、歩いているとわかるのですが、人々の身成や出店している店舗が明らかに変わるのを感じます。
シアトルの観光地パイクプレイスマーケットから1stAve、2ndAve…とアップタウン方向に歩いて行くと、シアトル社会の縮図も見えるような気がします。
シェルターが海側(ダウンタウン側)にあるためか、すごく近いエリアなんですが、先ほどのPineStや並行するPikeStなど、同じ通りを歩いていても、3rdAveから4thAveの間で街並みや歩いている人の所得層(身なり)がガラッと変わるような印象を受けるのですね。
アパレルチェーンでも低所得者層をしっかり集客しているのはTJmaxxやRossというブランドを10ドル台あるいはそれ以下の低価格で販売するオフプライスストア(ディスカウントストア)。

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一方、10分も歩かない、先のノードストローム本店周辺およびその先との違い。
非常に狭いエリアでファッションマーケットの中~高所得層マーケットと低所得層マーケットが隣合わせになっているのを興味深く感じました。

成長企業の本社移転によって、都市が発展し、経済全体は潤うというメリットがある反面、既存の住人との格差も生まれ、地域がモザイク状態になる? このシアトルは世界に先駆けて、そんな世界中の多くの都市で起こりうることを体験しているのかも知れません。 

Day1 大きな企業になっても起業家精神を忘るべからず

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Amazon関連のオフィスビルの複数の入口にあるサイン"DAY1"はご存知の通りAmazon社の行動指針である「僕らのチャレンジはまだ始まったばかり」ということを意味する言葉。1番になっても常に起業家精神を忘れるなというジェフベゾス氏の教えが身に染みます。

クラムチャウダーが美味い♪

ちょうど シアトルでbirthday を迎えため、dinnerはシアトル ピアのシーフードレストランIvar's Acres of Clamsでクラムチャウダー、カラマリ、タラのグリルをSeattleのクラフトビール Reuben's IPAで頂きました。クラムチャウダーの温かさ、そしてカラマリのサザンドレッシングソースがIPAに絶妙に合い美味しかったです♪

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さて、シアトルでアマゾンの洗礼を受けた後は、世界の中でもコンパクトシティ、サステナブルシティとして名高い、オレゴン州、ポートランドに向かいます。

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