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2018年 夏、ロサンゼルス アメリカ西海岸で進むショッピングのデジタルシフト体験

世界で進むショッピングのデジタルシフト体験シリーズ。2017年のロンドンに続き、2018年はアメリカ西海岸、ロサンゼルス、シアトル、ポートランドに出かけました。

当時、執筆中だった「アパレル・サバイバル」(日本経済新聞出版社2019年2月出版)の取材も兼ねて、ファストファッション時代に続く、ショッピングのデジタルシフト時代を牽引するアマゾンによる流通再編、そして、「アマゾン・エフェクト」が進むアメリカの小売り最前線を体験するためです。

アメリカ西海岸行きにあたり、下調べをしていて注目していたのが、オンライン企業であるアマゾン社が取り組み始めていた実店舗における試みでした。

未来からの逆算発想で、オンラインの世界で次々に常識を覆して来た同社が、果たして、「アマゾン・ブックス」、「アマゾン・ゴー」、買収したスーパーマーケット「ホールフーズ」などの実店舗でいったい、どんなことを実現しようとしているのかを自分の目で見たい、体験したいと思いました。

まずはロサンゼルスから

南カリフォルニアドライブとサンタモニカ

5年ぶりのアメリカ、ロザンゼルスです。LAX空港からレンタカーに乗り込みます。今ではUber(ウーバー)が普及しているので、移動はそれで済ませることも出来ますが、ロサンゼルスでは、広域に移動をするので、レンタカーとUberを併用することにしました。かつてカリフォルニア州サンディエゴで暮らしていたこともあり、南カリフォルニアの青空の下でクルマを運転すると第2の故郷に戻って来たような気持ちになります♪

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西海岸、LAに着いてからのお決まりのコースは、まずサンタモニカに北上しながら太陽を浴びて、当地に来たことを体に感じさせ、時差を抜き、その後、トーランスやガーデナ地区の日系ホテルを拠点に動くパターンです。

モンサンタモニカのショッピングストリート、プロムナードの入口はNIKE(ナイキ)の旗艦店、LULU LEMONの店舗に変わっていました。

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両ブランドとも、アスレジャーのコト体験提案、デジタルシフトの最先端を行っており、最も勢いを感じるブランド群です。
ナイキの店舗でのデジタル活用体験については、同社の本社のあるポートランドの旗艦店を訪問した時のエピソードの中で詳しくお伝えします。

クラウドファンディングから実店舗に展開した機能性ビジネスウエア MINISTRY OF SUPPLY

今回、このエリアでの視察で一番印象的だった店舗は、プロムナードショッピングセンターに入居していた、MINISTRY OF SUPPLYというマサチューセッツ工科大学(MIT)の同級生たちがアスレチックウエア用素材を使って開発した機能性ビジネス服の新興ブランドでした。

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彼らは、2012年、まず体温調整機能を持ったビジネスシャツを開発し、Kick starterというクラウドファンディングで400,000ドルというアパレルの最高金額記録をたたき出し、その後、ビジネスウエア全般にアイテムを広げ、DtoCブランドとして認知を高め、実店舗も展開し始めたブランドです。
とても着心地がよく、僕もセットアップスーツ、シャツ、アンダーウエア、ソックスまで一式を購入してしまいました(笑)。

書店における革新的な体験を実現したamazon books(アマゾン・ブックス)の衝撃

アメリカ西海岸視察時は、サンタモニカのようなファッションストリートと郊外の大型ショッピングセンターを中心に視察をします。
今回のショッピングセンターの視察のメインはウェストフィールド・センチュリーシティです。

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グローバルな勝ち組企業の店舗は一通り視察することができますし、もちろん、取材対象だった、アマゾン・ブックスやBonobos(メンズカジュアルのDtoCブランド)やSephora(化粧品)などの注目店舗も入居していたからです。

ここではアマゾン・ブックスをご紹介しましょう。

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その名の通り、アマゾン・ドットコムが運営する本屋さんです。
一部のメディアでは、アマゾンのレビューの高い本を中心に集めた売れ筋ばかりの店、とかアマゾンプライム会員を獲得するための実店舗、と紹介されていましたが・・・
実際、体験してみると、それ以上の驚きがありました。

まず、店内でアマゾンショッピングアプリを立ち上げ、店内のWifiを取ると、来店客(僕)がこの店にいることが認識されます。
そうすると、アマゾンショッピングアプリ(=自分のスマホ)が何と、同書店内の本の在庫の検索機になるのです。

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アプリを利用して、例えば、ビジネス書の中から、マーケティングの本が欲しければ、マーケティングと検索すると、店内にあるマーケティングの本がすべて、棚の名称と共に表示されます。

同時に、アマゾン・ドットコム上のそれらの書籍の評価やレビューが読めるので購入にあたっての参考になります。

もし、店内の在庫の中に欲しい本、探している本がなかったら・・・その時は、もちろん、同じアプリの中で、アマゾン・ドットコムで販売している無限大の在庫からオンライン購入をすることが出来、自宅に届けてもらえます。

つまり、来店客には、自分のスマホの中で、店内在庫とアマゾンドットコムの両方が選択肢となり・・・
今日、ここで買って、持って帰れる本と、店内にはないので通販で宅配してもらう本の両方のショッピングが同時にできるわけです。

これは、まさしく、書店で本を探している顧客が、どんなことが出来たら嬉しいかを考えた、リアル店舗とオンラインの両方を駆使した拡張体験の提供と言えるでしょう。

それ以外にも、ショッピングアプリのカメラ機能を使って、店内にある本の表紙にシャッターを切れば・・・
AIの画像認識によって、アマゾンドットコム上の本のページを出してくれるという魔法のような体験をさせてもらった時には、
テクノロジーの可能性にワクワクしたものでした。

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決済はもちろん、アマゾンに登録済みのクレジットカード決済のキャッシュレス。

アマゾンブックスでこれらのデジタル体験を通じて感じたことは・・・アマゾン社は既存の書店以上に、顧客が書店で、本を選び、購入する上でのストレス(ペイン)を研究、熟知しており、店内で、オンライン技術を活用したら、どんなことが顧客に提供できるのか?を考えた末に行きついた店舗ならではの体験価値なのだな、ということでした。

果たして、既存の書店がこんなことを考えることができただろうか?過去を背負っていないからこそ、白紙から顧客の未来の理想のショッピング体験から逆算して考えることができる、アマゾン社だからこその、顧客(のスマホ)を巻き込んだ実店舗でのショッピングソリューションだと感じたものでした。

ウォルマートのストアピックアップ

続いて、オンラインのアマゾンとアメリカ全土で流通の頂上対決を繰り広げるチェーンストアの王者、ウォルマートの試みを観に、郊外PICO RIVERAの大型店舗に行きました。

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こちらでもカギになるのは、店舗におけるオンライン活用でした。

まず、店舗が広いので、スマホをwifiにつなぎ、来店店舗を指定して、欲しい商品を検索すれば、在庫の有無と置かれている通路ナンバーと棚番号が出て場所がわかります。

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また、来店前に、オンラインで欲しい商品の店舗在庫を検索し、オンラインショッピングで決済を済ませておき、時間と配送料のかかる宅配ではなく、自ら都合のよい時に車で取りに行くという
「ストアピックアップ」のサービスが提供されていました。

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これは、前回紹介したイギリスの「クリック&コレクト」と同じですが、イギリスでは、顧客がオンライン注文をする対象が倉庫在庫なのに対し、当地では店内在庫である、という違いがあります。
国土が広いアメリカは、ECにおいて、倉庫在庫ではなく、店舗在庫を売ること、という結論に達したものです。

来店した顧客は、注文した商品を、店内カウンターで受け取りながら、追加の買い物もできますし、注文品を受け取るだけなら、店内に入らなくても、スタッフに駐車場のクルマのところまで届けてくれるという、「カーブサイドピックアップ」というラクチンサービスも提供しています。

実は、2020年、コロナ禍のアメリカにおいて、このサービスが、買い物はしたいが、店内には入りたくない顧客に支持され、とても威力を発揮して、同社の業績アップにつながっていることを、ニュースでご覧になった方もいらっしゃると思います。このサービスは、コロナだから始めたのではなく、とっくに準備していたことが活かされた、という話です。

デジタルシフトと言えば、オンラインショッピングから宅配という1つの選択肢だけではなく、実店舗を活用した取り組みが日本よりもだいぶ進んでいることを思い知らされました。

そして、それらのデジタル化によるサービスは企業側の作業効率化の事情ではなく、アマゾンにしても、ウォルマートにしても、どうしたら顧客に快適なショッピングをしてもらえるか?という顧客の理想のビジョンを描いた上で取り組んでいるんだ、ということが感じられます。

慌ただしい視察後のご褒美はプライムリブ

ロサンゼルスで、広域に取材した後のご褒美はステーキです。20年来、お付き合いをさせて頂いている、当地在住のS氏と楽しい夕食でした。

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比較的固めのステーキが多いアメリカですが、プライムリブは柔らかくて美味しいです。
クラフトビールと共に頂きました。ロサンゼルスではレンタカー利用がもぱらですが、Uberがあると、ディナーに出かける時には、お酒が飲めるので、有難いです♪

さて、ロサンゼルスで充電の上、次は、アマゾンの本拠地、シアトルに向かいます。

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