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2018年 夏、オレゴン ポートランド①DX編 ショッピングのデジタル活用と人が集う店舗ならではの楽しさ

「アパレル・サバイバル」(日本経済新聞社;2019年2月出版)の取材もかねて、2018年夏にアメリカ西海岸に出かけたインスピレーショントリップシアトル続いてオレゴン州、ポートランドでのエピソードです。

ポートランドでは多くの気づきがありましたので、2回に分けてご紹介しますね。まずはデジタルトランスフォーメーション編です。

ポートランドでAirbnb(エアビーアンドビー)初体験

ヨーロッパもアメリカも、渡航中の都市内の移動は手軽なUberを頻繁に使うようになりした。
空港から宿泊先へのチェックインも公共交通機関やリムジンではなく、空港でUberアプリを開きます。
ドライバーも点数やチップ稼ぎの目的もあるとは思いますが、街のことををいろいろ教えてくれ、そんな楽しいインプットの時間から各都市での旅が始まります。

今回のポートランドで初めてチャレンジしたのは、ホテルではなく、Airbnb(エアビーアンドビー)での宿泊です。スーパーホストの評判の良い方の中から、予算で絞り、空港と街へのアクセス、部屋の中の雰囲気で選びました。

住宅地の中の2階建ての一軒家、1階部分と扉を別にしている2階部分を借りました。インテリアも素敵でとても居心地がよかったです。

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大きな冷蔵庫やキッチンが使えるため、毎食外食ではなく、時にはスーパーでお買い物をして、ちょっとした食事をつくって宿泊先で食べたり、ゴミの出し方、回収などのローカルルールを体験できるなど、
短期間ですが、当地での生活を垣間見ることも楽しいものです。

Nikeがスマホアプリで解決する顧客が靴を買う際のストレス

今回メインでご紹介したいのは、ポートランドに本社があるNIKEの旗艦店でのデジタルショッピング体験です。

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この年(2018年)からNIKEがアメリカで顧客のスマホのアプリを介して、顧客にデジタルショッピング知見を提供しているという話を聞いていたのですが、
ロサンゼルスやシアトルでは、アメリカ国内専用アプリということで、日本から来た僕にはダウンロードができず、自ら体験することができないでいました。
ところが、アメリカに入国して1週間近くが経ったポートランドではようやく、僕がアメリカにいることが認識されたのか?アプリがダウンロードが出来、その機能を体験することができました。

その機能とは、自分が試し履きしたい靴を見つけた後、顧客自らがスマホアプリを使って店舗在庫確認と試着予約が出来るサービスです。

まず、靴を買う時のことを思い出してみて頂きたいです。店頭で、気に入った靴が見つかると、普通は、その片足だけのディスプレイサンプルを手に取って、店舗スタッフを呼び止め(スタッフがなかなか見つからない時もあります)、「これの〇〇サイズ(自分のサイズ)ありますか?」と聞くところから始まります。スタッフは「少々お待ちください」と言い、バックヤード(倉庫)に在庫の有無を確認しに行きます。
待っている間は、在庫があるのか、ないのか、ドキドキですよね。
店舗スタッフが箱を持って戻ってくれば、お互いニッコリして、試し履きが始まりますが・・・残念な顔をしながら、手ぶらで戻って来て、首を振られたら、その瞬間に、こちらもとても残念な気持ちになり、ショッピング意欲が一気に失せるものです。誰もがそんな経験をしたことがあるのではないでしょうか?

NIKEのアプリは、気に入った靴のディスプレーサンプルについているバーコードを顧客がアプリのスキャン機能で読み取ると、この店にあるその商品のサイズがすべて表示されます。自分のサイズを押して、試着リクエストボタンを押せば、「予約を受け付けました、しばらくお待ちください、在庫をお持ちします」というメッセージが出て、しばらくすると、スタッフが商品在庫を持って顧客に声をかけてくる、というものです。

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試着後、気に入れば、レジに並ぶ必要もありません。

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近くのスタッフに購入したいと言い、クレジットカード決済であれば、スタッフが持っているモバイル端末で決済してくれ、その場でショップバッグに入れて手渡してくれました。レシートは必要なら出してくれますし、不要と言えば、メールで送ってくれます。

この一連の試着予約~決済を終えた後、シアトルで会計なしコンビニ=アマゾン・ゴーで感じたことと同じ感覚を覚えたのを今でもはっきり思い出します。

NIKEはシューズのショッピングの中で、顧客も店舗スタッフも、最もストレスに感じているプロセスのひとつにフォーカスして、そのプロセスをデジタルトランスフォーメーションで顧客と共に解決したのだと。

ちなみに、NIKEの店舗にいない時も、このアプリはオンラインショップ用になり、気に入った商品を見つけたら、近隣店舗の中からサイズ在庫があるお店を教えてくれ、2日限定ですが、オンライン上から試し履きのための取り置きすることも出来ました。 

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あらためて、企業のデジタルトランスフォーメーションというものは、企業が勝ち残るための、企業の効率化の都合のためだけに行うものではなく、むしろ、顧客のお困りごと解決と、快適なショッピング体験のために行うものだ、と気づかされたものでした。

(注:この機能は2018年8月時点のものです。2019年のロンドンのNIKEタウンでは更に進化しており、現在、日本の一部の店舗でも一部の機能が利用可能になっているようです。) 

ノードストロームでストアピックアップ体験

シアトルでもご紹介した高級百貨店のノードストロームで、オンラインショッピングの店舗受取り=ストアピックアップを実際に体験してみました。

着替えのアンダーウエアが足りなくなったので、オンラインで注文し、ダウンタウンの店舗で受け取ることにしました。店舗在庫が対象なので、注文して2時間後には、用意が出来たとメールが来ましたので、

夕方、リサーチの途中で立ち寄って受け取りました。すでにショップバッグに入って、棚に置かれており、スタッフにIDを見せサインをすれば即受け取ることができました。

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ショッピングには歩き回る楽しみというものもありますが、目的のものをさっと買って帰りたい、という時も少なくありません。 

百貨店や商業施設の広い館内をわざわざそのために歩き回る必要がなく、こんなショッピングの新しい形もありだな、と思います。

ノードストロームのストアピックアップカウンターは、LAでもシアトルでもポートランドでも、入口のすぐ近くにあって、受け取りには便利なのですが、
一方、ロンドンの高級百貨店セルフリッジの場合、地下にあって、入口からは少々離れているのですが、ゆったりしたソファーがあって、フィッテイングのための、大きな鏡やスペースもあり、その場で商品確認、素敵なラッピング選びもできるというところが付加価値だと思いました。

今後、日本でも英国のクリック&コレクトや米国のストアピックアップのサービスが広がれば、お店によって、どんな手渡し方をするのかも差別化につながることになるでしょう。

本を売る、本を買う、本好きの顧客が集い、醸し出すオーラがつくり出す店舗でのショッピングの楽しさ

ポートランドでのショップリサーチの3つめは、ファッションストアではありません、パウエルズ・ブックスという老舗の大型書店です。

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今回のアメリカ西海岸視察のテーマのひとつはショッピングの「デジタルシフト」だったのですが、もうひとつは、Eコマース全盛時代に「わざわざ店舗に足を運ぶ理由(わけ)」でした。

こちらの本屋さん、僕も見たことがないくらい、バカでかい本屋さんなんですが、何と、新品と古本を並べて売っています。
それも、別々ではなく、同じタイトルの本でも、同じ棚に、新品と古本が価格違いで並んで置かれていることに驚きます。

こちらの本屋さん、買取カウンターを設けて、読まなくなった本の買取もやっています。

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例えば、本好きな顧客は読み終わった本を持ってやって来て、買取査定に出し、売れた代金で、新しい本を買って帰る、ということもできるわけです。

店舗も大きいし、おそらく、店頭の在庫数も、この町では最大だと思いますので、ものすごい集客力なんですが、本好きな人が集い、一緒に並ぶ新旧の本からも、そして、本を目的に来た来店客からも、むちゃくちゃ本への愛のオーラが出ているのがわかります。

ですから、そこに居合わせた僕も、ものすごくワクワクしてくるんですよね。

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まさにマーケットプレイスとはこういうことではないか、と。

そんな僕も大好きなテーマのコーナーで、しばし、時間を忘れて、過ごしてしまい、予定外の本を買ってしまったことは言うまでもありません(笑)。

売り手だけではない、来店客も一緒になってつくり上げる、メガストアならではの醍醐味というものをあらためて感じさせてもらいました。

ローカル食材にこだわる新アメリカン料理、Ned Ludd

Airbnbで宿泊予約したため、Airbnbアプリが近所のおススメレストランを通知してくれました。
その中から選んだのが、ポートランドの食材で新アメリカ料理を提供してくれるオーガニック系レストラン。

ダウンタウンにあるレストランとは違った、ローカルなレストランです。

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前菜プレート、フルーツのサラダ、マスのグリルを地元のクラフトビールで頂きました。

とても繊細な味で美味い♪ご馳走さまでした。

さて、次回は、ポートランドの後編、ポートランドのコンパクトシティ、サステナブルな街の魅力についてのエピソードです。

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