小林泰輔

小林泰輔

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  • 自転車日本一周の旅

    2014年8月〜11月まで自転車で日本一周をしました。 その当時に残していた日記に加筆修正したものを掲載しています。

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自転車日本一周の旅1日目

2014年8月19日。僕は滋賀県にある実家を飛び出し、自転車日本一周の旅に出た。 朝8時、外は快晴だ。空はやたら青く、剥き出しになった太陽がジリジリと僕の肌を焼く。自転車を走らせていると、道路沿いに置かれた温度計が35度を記録しているのが見えた。だけど、「暑い」とか「しんどい」とかいう気持ちは一切ない。 そんなことが気にならないくらい、心の中のワクワクドキドキが勝っていた。 僕は今、好奇心だけに動かされている。 「自転車でどこまで行けるのか試してみたい」「日本という場

    • お前はもう、挙式に呼ばれている。

      先日、家で昼寝をしていると、後輩のGから電話がかかってきて、起こされた。 「ばやしこさん、今どこおるんですか?」 Gは大学の寮の後輩だ。今も徒歩1分くらいのところに住んでいて、よく子どもと遊びに来る。 いつもはお調子者のGだが、どこか焦っているように感じた。でも僕は眠かった。 家やけど、あくびをしながら答えると、Gは「うそでしょ!」と声を上げた。 「Uの挙式、30分後に始まりますよ!」 今日はGと同じく、大学の寮の後輩であるUの結婚式である。GとUは同期で仲良しな

      • 自転車日本一周の旅62日目(最終日)

        朝早くに目が覚めた。仕事の支度をしていたW先輩が「もう少し寝てっていいぞ」と言ってくれたが、目が覚めて眠れそうになかった。先輩が仕事に出るタイミングで一緒に家を出た。ありがとうございました! 新大阪の街並み。写真じゃ伝わらないけど、とても晴れていて爽やかだった。ビル群を抜け、川沿いに出て走る。朝日が気持ちよかった。 住宅街の中をゆっくり走り、国道1号線に合流。関西大学の横を通り、高槻へと向かう。少しずつ、旅の終わりに近づいているのを実感する。 お腹が空いたのでコンビニに

        • 自転車日本一周の旅61日目

          目を覚まし、テントのファスナーを開けると、外は霧雨が降っていた。帰るなと言われているみたいだった。湿度があるからか、寒さはそこまで感じない。タバコを吸ってからテントに戻る。 支度をしながら、この2畳ほどの空間で寝泊まりすることはもうないのだと思うと、とてつもなく寂しい気持ちになった。 枕にした2リットルのペットボトルに、快適とはいえない折りたたみのマット、バッグを置くと寝返りが打てなかった。それくらい狭かった。 だけど、慣れてみたらここは家だった。 毎日ファスナー

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        自転車日本一周の旅1日目

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        • 自転車日本一周の旅
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        記事

          自転車日本一周の旅60日目

          おばあさんたちの話し声で目が覚めた。3人のおばあさんたちが椅子に座り、コーヒーを飲みながら話をしている。周りに民家がなかったので、このパターンは想像していなかった。 コソコソ支度をしていると、おはようございます、と言われる。おはようございます、と返事をして、猛スピードで支度する。時計を見たら、まだ朝の7時だった。 道の駅を出て、セブンイレブンでパンを食べる。コーラを飲んで気合を入れ、山道を走った。 途中、次の坂が見えるほど見通しのいい場所を通過した。遠くに見える山の一部

          自転車日本一周の旅60日目

          自転車日本一周の旅59日目

          テントには保温機能がないので、朝起きると身体中の至るところが冷たい。 ブルブル震えながら自販機に行き、こいつをゲトる。今までこれを飲む人の気持ちが理解できなかったが、朝日を見ながら飲むと体が温まり、目が覚めた。今日も頑張るぞ、と気合を入れて出発。 少し走って尾道市に入る。尾道駅を通過するときに連絡船の音が聞こえ、やけに懐かしく感じられた。四国を旅していたのは、もう2週間も前のことなのだ。時間が経つのは本当に早い。アメリカ人が「タイムイズフラ〜イン」というのも肯ける。 平

          自転車日本一周の旅59日目

          自転車日本一周の旅58日目

          起きてすぐ、錦帯橋の近くに行って深呼吸をした。寝床のすぐそばに錦帯橋があると、特別な気分を味わえる。野宿の楽しみってこれか、と、旅の終盤になってようやく気づいた。もっと早くに気づくべきだった。 勝手に慣れ親しんだ山口県を出て、広島県入りを目指す。 晴れた空の下、厳島神社の近くを走っているとパトカーと救急車が停まっている。自転車と自動車の衝突事故らしい。チャリダーは元気そうだったが、自転車は車と衝突した勢いで大破しており、後ろのタイヤがない。強引に曲がろうとしたところにぶつ

          自転車日本一周の旅58日目

          自転車日本一周の旅57日目

          空が明るくなる前に家を出た。吐く息は白く、外はかなり寒い。Hは眠そうな顔をして送り出してくれた。まるで、またあとで会うみたいだ。ありがとうH。 のんびりと道を進むと、街全体にかかっていた靄が晴れていく。すぐに朝になった。 喉が渇いたので、小さいスーパーで缶のキリンレモンを買って自転車を押しながら飲む。のんびりとした雰囲気が流れていていい感じだ。山口県っていいところだなあ。 そんなことを考えていたらアップダウンに襲われる。クリアすると標識が見えた。どうせなら行きに通ってい

          自転車日本一周の旅57日目

          自転車日本一周の旅56日目

          寒すぎて目が覚めた。近くのコンビニに行ってスープを飲み、体を温めてから出発する。今日も快晴で気持ちがいい。 しばらく平坦な道を走った。 北九州市に差し掛かると、当然のことながら筑豊ナンバーと北九州ナンバーの車ばかりになる。緊張しながら走っていると、横を通り過ぎたワゴンRが車道の左端で信号に止まった。幅寄せがエグい。 だが、その右側が普通に空いていたのでそっちを通る。車から降りてきてめちゃくちゃキレられる、と聞いたことがあったので、運転席の方は見ないようにした。 少しし

          自転車日本一周の旅56日目

          自転車日本一周の旅55日目

          爆睡していると、ダースベイダーのテーマソングが聞こえてきて目が覚めた。音は斜め前の部屋から来ている。どうやらめざましのようだが、当の本人は唸り声のようないびきをかいていて一向に目覚める気配がない。 少ししたら止んだが、カプセルホテルで目覚ましをセットするというのはなかなか勇気がいることだと思う。僕には絶対にできない、と思ったらまたダースベイダーのテーマソングが流れてきた。笑ってしまった。 狭い空間にも慣れたので、寝転びながらスマホをいじっているとN先輩から連絡がきた。N先

          自転車日本一周の旅55日目

          自転車日本一周の旅54日目

          朝起きてすぐに確認したが、やはり運動靴は乾いていなかった。プーマのランニングシューズのジャマイカモデル。ボディが黄色くてソールが緑。そしてラインが黒。めちゃくちゃかっこいいのだ。 かっこいいのだが、乾いていない。仕方がないので、荷台に巻きつけて自転車を漕ぎながら乾かすことにした。 日記には書いていなかったが、僕はこの旅で結構この技を使っている。自転車を漕いでいたら洗濯物が乾くのだ。ふと触ったときに乾いていたらかなり嬉しい。 サンダルのまま、曇り空の下を走る。山に入り、走

          自転車日本一周の旅54日目

          自転車日本一周の旅53日目

          天気予報が見事に的中し、テントから出ると雨が降っていた。今日から11月ということもあり、外は立っているだけで身震いするほど寒い。 雨の中を走るのは北海道以来、2回目だ。今回もレインコートを持っていないので、ビショビショになるのを覚悟で出発した。 最初は平坦な道が続いた。雨に打たれながら街を抜けていく。途中、ホームセンターがあったのでレインコートを買おうとしたが、もうすでにビチョビチョである。2リットルのアクエリアスを買って自転車に積み、先に進む。 延岡市を越えると山

          自転車日本一周の旅53日目

          自転車日本一周の旅52日目

          朝起きて初めて、自分が今いる場所に気づく。どこだここ、という感じである。本来ならば今日は雨の予報だったので晴れていて助かった。 支度を済ませて、山を下っていく。鹿児島市内でしろくまを食べたかったが(水曜どうでしょうの甘いもの国盗り物語が大好きなのだ)、今回はおあずけになってしまった。 坂を下っていると霧島神宮があったので、立ち寄ってみる。 林に囲まれた参道を歩き、境内に入る。あまり人はおらず、お参りしてからあたりをフラフラした。 この看板の横にさざれ石の説明書きが

          自転車日本一周の旅52日目

          自転車日本一周の旅51日目

          朝7時、穏やかな秋空の下、ひたすら道を南下する。海沿いを走り八代市にあるスーパーに立ち寄った。店の中はやけに海外の香水の香りがした。ジャマイカのスーパーと同じ匂いで懐かしかった。 カップ麺を食べながら、このままなら余裕で鹿児島に行けそうだな、と思う。 だが甘かった。 まったく進めないほど急勾配な道が続く。 山。 もはや道なのか、不安になるくらいの道。クマとか出てきそうだけど、ここら辺にはいないのかな? ゴリゴリとメンタルが削られる。 景色が変わらないので気を

          自転車日本一周の旅51日目

          自転車日本一周の旅50日目

          朝起きて、Mが仕事に行くのを見送った。カギはある場所に隠してくれればいいから、ゆっくりしていけという。二度寝をかまして家を出た。Mありがとう!楽しかった! 少々二日酔いだったので、ピンクがかったオレンジ色のカレーを食べる。夕月という店で、カレーはバターが効いた独特な味だった。 ご飯を食べて長崎をあとにする。本当に最高の街だった。 来た道を少し戻る。いくつか山を超えたあと、行きに通った花だらけの道を右に曲がって東に進んだ。いい天気なので気持ちがいい。 坂道のない、平坦な

          自転車日本一周の旅50日目

          自転車日本一周の旅49日目

          寒すぎて目が覚めた。声を出そうとすると、喉が乾燥してひっついており、声が出ない。枕にしていた2リットルの水をガブ飲みした。甘ったれたことを言うと、野宿には本当に厳しい季節になってきた。 テントのファスナーを開けると、目の前にこんな景色が。一瞬で目が覚めた。 タバコを吸いながら震えていると、軽トラに乗った農家のおじいさんがやってきて、兄ちゃん寒いのにようがんばってるな、と缶コーヒーを2本も買ってくださった。人から奢ってもらってばかりだ。 感謝しながらコーヒーを2本飲み、タ

          自転車日本一周の旅49日目