見出し画像

デザイナーが知っとくべき主な法律

デザイナーが知っておくと、便利な法律を紹介していきます。

主にデザイナーが知っておくべき法律は、「知的財産権に関わる法律」と「デザイン業務に関わる法律」の2つに分けられます。


画像1

引用元:https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/shien/design/guide.html


「知的財産権に関わる法律」はデザイン業務によって生み出されたデザイン、情報や成果物を守るための法律です。知的財産権は法律で守られ、他社から模倣されにくくなり、されても阻止したり賠償請求ができたりします。

「デザイン業務に関わる法律」は、デザイン業務によって生み出された商品の消費者やデザイナーを守るための法律です。


画像2

今回説明のために度々ガラスのコップが出てくるので、これで想像してみて下さい。


「知的財産権に関わる法律」

①特許法

審査あり登録制
出願日から20年間

高度な「発明」を保護する。自然法則を利用した技術的思想の創作で産業上有用なものを対象とし新規性と進歩性が求められる。装置や機構、物質といった「物」と、 製造方法、処理方法ヒジネスモデルといった「方法」の2つのカテゴリーがある。

特許法は、科学的な根拠に基づく、機能や構造などの技術的なアイデアを保護するための法律です。

例えば、割れないガラスを発明したとします。その割れない理由が、特別な開発した素材や製法によって生み出している場合だと、科学的な根拠に基づいているので「発明」として、保護の対象となる可能が高いです。

メリットは、取得できると20年間は独占的に使用できます。自社だけで利益を上げることでなく、他社からロイヤリティで収益を得ることもできます。

デメリットとしては、その取るためにお金と時間がかかる点です。自力で出願するのはほぼ無理なので、弁理士さんを通して出願することになります。費用は50万円を超え、登録までに一年半以上かかる場合もあります。

また登録されると、発明の詳細が公開されてしまいます。さらにその20年が過ぎてしまうと、その発明を誰でも自由に使えるようになってしまいます。


②意匠法

審査あり登録制
登録日から20年間

新規なデザインの創作を保護する。新しいデザイン(意匠)の創作のうち量産できる工業製品の形状模様・色などの「意匠」が対象。物品(部分を含む)の形状、模様、色彩またはこれらを結合(物品に表示される一部の画像も含む)させた、視覚を通じて美感を起こさせるものを「意匠」として定義している

意匠法は、外観のデザインなどを保護するための法律です。具体的に言うと、そのデザインの形状、模様、色などが含まれます。意匠法がデザイナーにとって、一番馴染み深い法律かもしれません。

正直デザインは簡単に真似されやすく、コピー商品が出回り、二番煎じに利益を持っていかれることもよくあります。そうならないためにも、意匠権を取ることで、デザインを守り、クライアントの利益も守ることができます。

意匠は特許に比べて、有利な点もあります。意匠権は、特許よりも低コストで、早く権利化ができます。また意匠権は、登録日から20年間なので、特許よりも長く権利を行使できます。ただこちらも基本的には、弁理士さんを通して出願します。

意匠権の範囲は幅広く、プロダクトデザインからパッケージデザインまで意匠権で保護される対象になります。例えば、家電製品、文房具、日用品のプロダクトから、包装紙のパッケージデザインまで。

先程の具体例の「割れないガラス」。これを用いて、コップをデザインするとします。その外観のデザインをデザイナーに依頼し、形状、模様、色を考えてもらった場合は、意匠権で保護する形になります。


③実用新案法

審査なし登録制
出願日から10年間

工夫のある「考案」を保護する。自然法則を利用した技術的思想の創作のうち産業上有用な物品の形状、構造または組み合わせに関する考案が対象。審査なしで登録できるが、権利行使に当たっては技術評価書が必要。

実用新案法の保護対象は、形状・構造・組合せに限定しています。つまり、特許の簡易版であり、製造方法や複雑なアイデアは実用新案にはなりません。また特許や意匠の様に審査は無く、無審査で登録が出来ます。

実用新案でも他の権利に比べて、有利な点もあります。特許や意匠よりも、さらに低コストで、さらに早く権利化ができる点です。

活用法としては、具体例の「割れないガラス」。特許として取るのにお金も時間もかかりそう。だけど、権利化しておきたいという場合に実用新案は向いています。実用新案は特許と同様にデザインではなく、技術に関するアイデアなので、より幅広く権利を取れる可能性があります。


④商標法

審査あり登録制
登録日から10年間(更新登録可能)

商品やサーピスの名称ロゴタイプ、マークなどを保護する。文字、図形、記号、立体的形状もしくは色彩、またはこれらの結合、音等が対象となる。自己の商品サービスと識別でき他人のそれと誤認しない自他識別性のあるもの

商標法は、商品やサービスの文字や図形などを保護するための法律です。

ロゴ、ネーミングやコピーライトなどの図や文章のイメージも強いですが、立体形状でも登録が可能になります。意匠との違いは、無形でも有形でも登録できる点です。

よくロゴやマークなどの最後についている、™や®が商標表記になります。この™や®の違いは登録しているかどうかで、®が登録商標マークで、™は自由に使える商標マークになります。

メリットは、独占的に使用しようでき、類似するものを禁止できます。また商標は更新すれば、永久に保護されます。

デメリットは、お金と時間がかかる点です。費用は約10万円ほどかかり、半年の時間がかかります。またよくニュースにもなっていますが、早い者勝ちの先願主義になっており、先に誰かに登録されてしまう可能性もあります。

ただ例外があり、先使用権というものがあり、認知度の高い商標であり、登録をしていなかっただけの場合は、商標は保護されます。

具体例の「割れないガラス」。これに「UnbreakUnglass」という名前を付けて、「割れそうだけど絶対割れないガラスコップ」というコピーライトをつけ、販売したとします。この名前と文章は商標が取れる可能性があります。


⑤不正競争防止法

コピー商品や紛らわしいデザインなど、事業者間における不正競争を防ぐ法律。消費者に周知の商品や商標などを真似されたり、商品の形態を模倣・コピーされたりした場合などの「不正競争行為」に対し、これを阻止できる。また、事業にかかわる営業秘密(秘密管理されている有用で公然と知られていない技術情報や営業上の情報) を不正に取得・開示された場合にも効力を発揮し、内容によっては刑事罰や損害賠償の対象となる。

不正競争防止法とは、事業者間の公正な競争を確保するための法律です。つまり、ビジネスをする上でのルールの禁止事項をまとめてあるルールブックだと考えるとわかりやすいです。

デザイナーが知っておいた方が良いものは、この辺りです。

・周知表示混同惹起行為
お客さんに本物だと誤解させ、偽物・まがいものを使う行為です。

・商品形態模倣行為
他の製品をそのまま、マネして販売する行為です。

・営業秘密不正取得・利用行為等
他社の情報を盗んだり、秘密の情報を公開する行為です。

ただ不正競争防止法では、「営業秘密」に該当するためには、要件を満たす必要があり、すべての企業秘密が守られるわけではありません。なので、これに対応するために、企業とデザイナーが仕事をする場合は、まず初めに秘密保持契約(NDA)を結ぶようにしましょう。

秘密保持契約とは、当事者間(デザイナーとクライアント間)の重要な秘密情報を他に漏らさない契約です。これには費用などはかからない上に、あやふやにならずに進められるので、まず仕事の話をする前に結びましょう。


⑥著作権法

審査はなく創作した時点で発生。
著作者の死後70年間(放送・有線放送は行なった時から50年)

思想または感情を創作的に表現した作品と、その創作者を保護する。範囲は、文芸、学術、美術、音楽など。著作物を複製、口述譲渡、貸与ができる「著作権」と、著作者の氏名を公表する権利や、著作者の意図しない著作物の改変を禁止する権利など、著作者の人格を保護する「著作者人格権」で構成される。

著作権と著作者人格権は異なるので、要注意です。著作権は譲渡可能ですが、著作者人格権は譲渡不可です。

また契約書には「著作者人格権を行使しない」とよく書いてあるので、同意するかどうかを考えましょう。著作者人格権の不行使条項とも呼ばれます。選択できるのであれば、同意しない方が良いです。

著作者人格権には、以下の4つが含まれています。

①公表権
著作者(デザイナー)が未公表の著作物(デザイン)を公表する時期、方法を決められる権利です。つまり、デザイナーが作品は公開したくなければ、勝手に公開されない権利です。

②氏名表示権
著作者(デザイナー)が著作物(デザイン)について、名前を表示するか、実名を表示するかどうかを決められる権利です。これにより実績に繋がり、次の仕事にも繋がるので、出来る限り載せられるようにしましょう。

③同一性保持権
著作物(デザイン)を勝手に修正されない権利です。この権利によって、デザイナーの許可なしで、改変や修正ができないようになります。

④名誉声望保持権
著作物(デザイン)が適切な場所に展示する、適切な方法で使用するなど、著作者(デザイナー)の社会的評価を守る権利です。デザイナーの名誉を守り、風評被害を防ぐためにあります。

つまり、「著作者人格権を行使しない」という著作者人格権の不行使条項に同意すると、公開され、自分の名前も公表できず、勝手に修正され、名誉を害される恐れがあるということです。



「デザイン業務に関わる法律」

⑦PL法(製造物責任法)

ユーザーの安全を保護する法律。Product Liabilityの略。製造業者は販売した製造物の欠陥によって、使い手の生命を脅かしたり身体を傷つけたり、財産を侵害したりした場合、被害者に対して損害賠償責任を負うことになる。特に、一般消費者に向けた製品を販売する場合は、法律の内容をよく理解
し、PL保険への加入も検討すべきだろう。

PL法(製造物責任法)は、デザイン業務によって生み出された商品の消費者を守るための法律です。デザイナーというよりは、クライアントであるメーカーにとってより重要な法律になってきます。

「製造物」の「欠陥」が原因で、ユーザーの生命・身体・財産に損害が生じた場合、メーカーに損害賠償責任を負わせるのが主旨になっています。

つまり、例の割れないガラスのコップが万が一割れてしまい、ユーザーが怪我をしてしまった場合は、小売店などを飛び越えて、メーカーに対して責任訴求ができるということです。


⑧下請法

下請取引を行う場合に、下請け業者を保護する法律。「下請代金支払等遅延防止法」の略。委託者である親事業者が優越的地位を利用して、受託者である下請業者に対して契約を有利に締結したり、代金の支払いを減額したり遅らせたり、買いたたいたりといった不正行為を取り締まる。

デザイナーの仕事は「下請法」で保護されています。なので、作業後・納品後に支払われなかった場合や値引きの交渉があった場合は、基本的にはデザイナーの方が有利であることは覚えておくと良いです。

「口約束」でも、「契約」は成立します。しかし、先ほど書いた通り、証拠として残らないので、トラブルにもなりやすいです。そこで、見積書やメールとして文面として残すことが重要になります。

例えば、見積書をクライアントに提出し、見積もりに基づいて発注するとメールでも電話でも連絡があれば、契約は成立します。

つまり、「契約書」と書いてある書類でなくても、裏付ける証拠や書類があれば、契約を証明することができます。


いかがでしたでしょうか?

法律は基本的にはデザイナーの味方であり、知っておくことで有利に働くので、こんな法律があったなと覚えておくと良いですね。


①デザイナーの探し方
②デザイナーとの仕事の始め方
③デザイナーとの契約について
④プロダクトデザイナーのお金の話
⑤デザイナーの権利の話
⑥デザイナーが知っとくべき主な法律


参照資料:https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/shien/design/guide.html

こちらでサポートして頂いたものは、日本の伝統工芸・モノづくりのために使わせて頂きます。