デザイナーとの仕事の始め方
前回、プロダクトデザイナーの探し方について書きました。
一方で、どうやって依頼するのか、どうやって契約するのか、金額はいくらか、何を依頼すれば良いのか、など分からないことも多くあるかと思います。今回は、デザイナーとの仕事の始め方や進め方について書きます。
・まず、依頼する前に
クライアント側で、何を依頼するべきか、もしくは現状について簡単にまとめてもらうと、スムーズに話が進みます。新商品開発をしたいのか、ブランドを作りたいのか、販路を拡大したいのか、など。
もしくは何を依頼すれば良いか分からない時は、今まで何をしてきたか、何に困っているのか、自分の強みは何か、会社を今後どうしていきたいのかを考えてもらえると良いかと思います。
5W1H(誰が、どこで、何、いつ、なぜ)を用いて、考えてみるとまとやすくなるので、使ってみて下さい。
Who(だれが) ○○製造所
When(いつ) 2020年4月~、来年に新商品発表をしたい。
Where(どこで) 本社は新潟、月に一度は対面で打ち合わせをしたい。
What(なにを) 金属加工技術
Why(なぜ) 今までBtoBの受注仕事が多いので認知度が無い。
How(どのように) 金属加工技術を活かして自社製品を作りたい。
・次に、デザイナーを探す
何を依頼するのかがざっくりと決まった段階で、考えて頂いた案を元にデザイナーを探してみるのが良いかと思います。このコンセプトなども一緒にデザイナーも伴走して考える方がプロジェクトとして上手くいくので、最初にそこまで詰める必要はありません。
またデザイナーには、基本的にはオールラウンダー的に多くの分野に携わっていますが、得意分野が存在しています。職人さんとの仕事が得意な人、工業製品の量産品が得意な人、家具が得意な人、素材研究が得意な人。
パッと見て、何が得意か分かりにくいと思いますので、そのデザイナーにとりあえず聞いてみる、デザイナー界隈に詳しい人に聞いてみるのもありかと思います。
①直接探して、全く知らないデザイナーに依頼する。
②知り合いのデザイナーに依頼する。
③デザイナーを紹介してもらい、依頼する。
④行政機関に紹介してもらい、依頼する。
前回、この4つのデザイナーの探し方について、お話しました。詳しい内容は、上記の記事をご参照ください。
・全体的なプロジェクトの流れ
プロダクトデザイナーとの仕事する場合の全体の流れについて、書いていきます。基本的にはデザイナーであれば同じような進め方だと思いますので、参考にしてみて下さい。
0. 連絡する
まずは気になるデザイナーを見つけたら連絡してみましょう。電話でもメールでもどちらでも良いかと思います。
デザイナーであれば、自分のウェブサイトをもっているので、そこのContactから連絡が取れます。もしくはツイッターやフェイスブックなどのSNSから連絡を取るのもありです。
1. ヒアリング
まず打ち合わせで、クライアントさんの目的や強み(技術や特徴)、商品開発やブランドを作る理由などをお聞きします。そしてデザイナーの強みやどう関われるかなどを話していきます。「まず、依頼する前に」でまとめた内容を送るとスムーズに話が進むかと思います。
基本的にここまでは、無料でして頂けるデザイナーも多いかと思います。ただ機密情報などを話す場合は、秘密保持契約(NDA)を結びましょう。
また職人さんであれば、何度も現地まで来てくれるデザイナーが理想です。この段階で、直接現地までヒアリングに来てくれる人と仕事をする方が上手くいきます。
2. 企画
ヒアリングを元にリサーチを行い、商品やブランドのコンセプトやアイデアを提案します。もちろん、クライアントと綿密なコミュニケーションを取りながら、打ち合わせなどを通して、企画を考えていきます。
ここからは権利や作業が発生するため、契約やお金が発生すると考えると良いかと思います。スペックワークはどちらにとっても良くないので、実際行に入る前に、契約の話をしましょう。(契約については次回書きます。)
3. デザイン
商品開発の場合は、この企画コンセプトにあったデザインを考えていきます。そのデザイナーを視覚化するために、わかりやすく伝えるために、スケッチや簡易模型、CADを用いてデザインを提案します。
4. 最終デザイン
クライアントさんとの打ち合わせを通して、試作・検証・修正を繰り返し、最終デザインを決定してきます。この段階の試作は、ペーパーモックやスケールモデルではなく、実素材で実寸での試作を使っては試していきます。
5. 決定
成果物を納品し、基本的な商品開発の契約終了です。ここから契約次第では、製造や販路拡大のお手伝いをしていきます。
6. 製造・販売
製造するための最終図面や生産管理などにも携わることもあります。また、パッケージや取扱説明書を制作し、販売するまでの最終段階までお手伝いします。
また販売後の販路拡大のお手伝い、商品を紹介するためのウェブサイトやパンフレットなどを制作します。他には展示会のブースのデザインをしたり、クラウドファンディングのお手伝いすることもあります。
プロダクトデザイナーとの仕事の流れは、おおよそこのような流れになります。次回以降に、デザイナーとの契約について書いていきます。
info@taiseimishima.com
三島 大世
プロダクトデザイナー
1992年東京都生まれ。イギリスやイタリアでデザインを学び、東京を拠点にフリーランスのプロダクトデザイナーとして活動。現在は日本全国を飛び回り、工芸や地場産業の特徴を活かすデザインを精力的に行っている。近年は防災士の資格を取得し、防災デザイナーとしても活動を広げる。
TAISEI MISHIMA DESIGNではプロダクトデザインを中心に、商品開発に関連するさまざまな業務を行っています。地場産業の職人さまとの直接の取引や、初めてデザイナーと取引する方との仕事も多数経験しております。
こちらでサポートして頂いたものは、日本の伝統工芸・モノづくりのために使わせて頂きます。