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最近インスピレーションをもらった、素敵な展示会とアートブックたち

アーティストの個展や、何かのエキシビジョンに訪れるのが好きだ。
全く知らない展覧会でも、なんとなく入ったらすごく良かった、なんてこともたくさんある。
最近訪れた中にも、素敵な展覧会がいくつかあったので、今回の記事で記録しておこうと思う。

また紙の本はめっきりと買わなくなり電子書籍を買うことが多くなったものの、それでも芸術系の本については紙のものを買うことが多い。紙の素材や印刷の質感など含め、デジタルメディアにはない作品の空気感を感じることが好きなのだ。
最近インスピレーションをもらったアートブックや写真集についても、記録がてらあわせて紹介しようと思う。

最近印象的だった展示会&アートブック

李禹煥(Lee Ufan)展 @兵庫県立美術館

行こう行こうと思って先延ばしにし、結局開催期間の最終日に訪れた李禹煥の展示会。
僕が訪れた週末は作品の撮影が禁止されていたので、写真はほぼ撮影できなかったものの、非常に良い内容のエキシビジョンだった。

展示内容としては、金属や木などの異素材を自由に組み合わせたり変形させた作品が多かった。また空間をうまく使った作品がほとんど。
特に何か明確な結論が出たりメッセージを感じ取ったわけではないけれど、トリックアートやコンテンポラリーアート的な作品群の中に身を置いて思考を巡らせることができた。また個人的に韓国のアートに興味が湧いてきた。

展示されていた作品数は多すぎず少なすぎず、丁度いいボリュームだったのも心地よかった。物足りなさを感じることなく、かと言って疲れることもなく快適に鑑賞することができた。

ちなみに、兵庫県立美術館は個人的に好きな美術館の一つ。
安藤忠雄の建築ではあるけれど、建物の構造的に鑑賞しやすく実用面も考えられている気がするのが嬉しい。

NAHYAT受注会 @Dtree Gallery

NAHYATというニットブランドの受注会に訪れた。
毎年冬に各地で受注会を行っているブランドで、前々から気になっていたのだが、実は訪問するのは初めて。大阪堺のDtree galleryというギャラリーで開催されていた。

今年からセーター以外にもコートやシャツ、パンツなども展開し始めたらしく、どれもすごくかっこよかった。素材の良さやデザインのユニークさなど、スタンダードだけれども個性のある服ばかりで触るのがとても楽しかった。

NAHYATの服はどんな素材をどのような方法で作っているのかが、服ごとにプロファイルとしてまとめられているので、素人がそのような具体的な内容を知ることができるのも興味深い。

そして初めて訪れたDtree galleryの空間が本当に素敵で、こんな場所があったのかととても驚いた。
和室も庭も洗練された美しさで、シンプルなのにラグジュアリーな雰囲気もある。何より主役であるNAHYATの服の素材を存分に堪能できる、素晴らしい展示に仕上がっていた。

展示会のタイミングのみオープンしている場所らしいので、アクセスは悪いけれど、興味のあるイベントに合わせて一度は訪れる価値のある場所だと思う。

ちなみに、僕は事前にWEBで見て気になっていた服を受注会で実際に着用し、オーダーした。
今年の秋頃に届くみたいなので、楽しみに待ちたい。

中根嶺・駒田雄蔵二人展 @Dtree Gallery

Dtree galleryがあまりにも素敵すぎて、NAHYATの受注会に続いて行われていた中根嶺・駒田雄蔵二人展にも訪れた。
オーナーの方にも顔を覚えられていて、少し恥ずかしかった。

今回は中根嶺さんの金工ブランド「Ren」と、駒田雄蔵さんの木工作品の展示会。
中根さんの活動はかねてから知っていたが、作品を生で見るのは初めて。駒田さんは初めて知った作家さんだった。

展示方法がNAHYATのときとは異なり、それぞれの作品の素材によって光の当たり方などを使い分けた、各作品の魅力が引き立つようなデザインの展示となっていた。
金属と木という異素材の作品が一つの空間で融合し、なんとも言えない雰囲気を醸し出しており時が経つのを忘れそうだった。

Renの銅薬缶や、駒田さんの楓の一輪挿しなどには物欲が極限まで刺激されたが、衝動買いするにはあまりにももったいない素晴らしいプロダクトだった。
制作背景などもきちんと理解した上で、何度も悩んで本当に使い続けられそうなものを見極める。物を手に入れるまでのプロセスはどうあるのが良いかということについても考えるいい機会となった。

Tokyo by 森山大道

ストリートスナップが好きでよく撮ってきたが、森山大道の写真集は今まであえて買わないようにしていた。
それでも年始に暇な時間があったので、東京を撮影したスナップ写真集をなんとなく買って何回か眺めてみた。

森山大道の写真は今まで飽きるほど見てきたが、改めて写真集で見てみると、写真自体のインパクトの強さに圧倒される。そんなに大きな写真集でもないし印刷も特別凝っていない、むしろ写真集にしてはチープな質感の本なのに、なぜかグッとくるものがある。
頑張れば撮れそうと思える写真も中にはあるように思えるが、白黒のコントラストの印象深さやダイナミックな街の動き、不透明な時代感など、実際は真似できそうでできないだろう。また、それ以上に長年撮り続けてきたことに彼の写真やスタイルの価値があるのだと思う。

東京のありふれた景色のストリートスナップを見ると、特別な場所ではなく日常の中にアートがあるということを改めて思い出させてくれた。定期的に眺めたい写真集な気がする。

Paris by Elliott Erwitt

Elliott Erwittのパリの写真集も年始に購入し、改めて彼の写真を眺めていた。
一昔前のパリの街並みの写真や映像を見るのが好きだが、彼の視点で見たパリもエモい。

パリのあらゆる場所での一瞬が切り取られたモノクロストリートスナップを眺めると、一時的に写真の中のパリにいるかのような感覚に陥る。
小さくてコンパクトな写真集にもかかわらず、それだけ没入感のある写真集だった。
また森山大道のようなバチバチに雰囲気ある写真というよりも、少しコミカルかつシュールな写真も多い。なんとなく隙がある写真を撮るかと思ったら、物凄くドラマチックで完成度の高い写真も出してくる。いずれにしても一枚の写真から鑑賞者が無意識にストーリーを想像してしまうことが、個人的にElliott Erwittの写真に惹かれる理由だと思う。

ちなみに僕が前回パリを訪れたのは10年ぐらい前だと思う。
パリはロマンチックかつ不思議な魅力のある街で、現代でも大きなハットやステッキといったクラシックなスタイルをして街を歩く紳士淑女をたまに見かけた。日本だとそういったファッションの人はまず見かけない。
日本だと京都なども古さと新しさが融合する街と言われるが、最近の街の様子を見ていると尖ったものが減る一方で似たようなものが増え、京都ならではの個性が消えて実はどんどん画一化された価値観に向かっている気もする。僕が見たのは10年前ではあるが、パリの方が本当の意味で新旧が共存する街なんじゃないかなと思う。わからないけど、写真集を見ていてそんなことを感じた。

To Look without Fear by Wolfgang Tillmans

個人的に大好きなアーティストのTillmansのアートブックを手に入れた。
これはMoMAで行われた彼のエキシビジョンのアートブック。写真の枠にとどまらないアート作品がたっぷり掲載されており、紙の質感やブックの佇まいもこだわり抜かれていると思う。かなり大きくて重たいので場所を取るが、そんな部分も含めて洋書のアートブックが好きだ。

アートブックには彼の過去の作品も多く収められているが、本自体が展示会の一部のようにも感じられるout of the boxな内容。既に見たことのある作品でも、編集が素晴らしくて新鮮な気持ちで眺めることができた。
また作品や彼の思考に関する詳しい解説も網羅されている。作品もテキストも論文レベルのボリューム感の作品集のため、まだ細かく噛みしめることができていないものの、彼の哲学的なものを随所に感じることができる内容だった。時間ができたらもう一度丁寧に読み込みたい。

Elliott Erwitt展 @何必館・京都現代美術館

京都で行われたElliott Erwitt展。
実は会期中に行くのをすっかり忘れていたのだが、当初の会期後にたまたまWEBサイトをチェックしたところ会期が延長していたので、この機会を逃すまいと訪問した。

展覧会では彼の代表的な作品が多く展示されており、大満足の内容だった。やはり写真集で見る以上に魅力を感じる。
チェ・ゲバラやアンディ・ウォーホル、マリリン・モンローなどの著名人のポートレート写真は、改めて見ると写真から伝わってくるエネルギーに圧倒された。実際に作品を目の前にすると、言葉ではうまく説明できないパワーを本当に感じるのだ。

そしてパリやアメリカ、その他世界各国で撮影されたストリートスナップについては、見ているとクスッと笑えるような遊び心が満載でとても刺激を受けた。
「本職はプロの写真家だが、天職はアマチュア写真家だ」と彼自身が言う通り、彼のストリートスナップには本当に心が惹きつけられる。一番好きな写真家。

ちなみに京都の繁華街のど真ん中で開催されている展覧会なのにも関わらず、なぜか僕以外誰も館内にいなかった。幸運にも作品を独り占めできたのは贅沢な時間だった。

まとめ

芸術作品に触れることで、視野が広がり多角的なものの見方ができるようになる気がする上に、人生が豊かになる。しかも気分転換にもなるので展覧会などは気楽に行くことができるのが良い。
これからもマイペースにアートと接点を持っていきたいと思う。

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