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世界一おいしい!目玉焼き。(1372文字)



とんでもなく胸きゅんな耳打ちがある。




友人が5歳の娘カナちゃんを連れて我が家にやってきてくれたのは先週のこと。
最後にあったとき、カナちゃんはまだ0歳。
息子のタクトは4歳。
お互い覚えているはずもなく「ハジメマシテ」の初対面。



親たちも4年ぶりに会うものだから、子供たちの様子を少しは気にかけながらも、積もる話に大輪を咲かせ、ブーケをたくさん積んでいく。



合宿のように我が家で食事を共にし、夜はみんなで雑魚寝。
どこにも出かけず、ひたすら家でおこもり。

初めは「ママ、お絵かきしたい」「ママ、トイレいきたい」と、
ママを介して私たちに意思を伝えていたカナちゃんも、次第に慣れ、徐々に直接話しかけてくれるようになった。


タクトは年下の静かな女の子とどう遊んだらいいかと、カナちゃんの反応を見ながらいろいろと手を替え品を替えていく。
携帯、テレビ、ゲーム、ボードゲームや坊主めくりにトランプ。
2人が落ち着いたのはお絵かきとごっこ遊び。
次第に2人の世界ができあがり、かわいい笑い声が聞こえてくるようになった。


・・・・・・・・・・



「ママ、おなかすいた」
小鳥のように小食なカナちゃんが小鳥の声で囁いた。

よし、タクトにお願いしてみよう。
なんどか一緒に料理をしたことがあるので、タクトに冷蔵庫の中身や、つくるものを提案。
彼が作ることにしたのは、目玉焼き。
久しぶりに台所にたったので、うまく火がつけられなかったり、床に卵を落としたりとハプニングがありながらも完成。


半熟とろーり。
ちょっと焦がしてしまったところも香ばしい香りで良い感じ。
家族以外のだれかに初めてつくった、彼の渾身の目玉焼き。



喧嘩にならないよう、きれいに半分こ。
カナちゃんの反応がきになって、なかなか食べることに集中できないタクト。静かにぺろりと食べ終わったカナちゃんに追いつく。
カナちゃんのもの言いたげな様子。
私はタクトに目玉焼きをもう一個つくるよう提案。


キッチンに戻り、タクトは緊張しながら2個目の目玉焼きづくり。

カナちゃん2つ目もペロッと完食。
タクトは3個目の目玉焼きづくりへ。


・・・・・・・・・・


作り終えた安堵感とともに最後の目玉焼きをたべるタクト。
その表情はどこか不安げ。


カナちゃんは無言のままそっとママの方へいき、タクトをみながらコショコショ。
そっと聞き耳をたてるタクト。
心臓が波打つ。


友人がほころんだ顔でカナちゃんが囁いた内容を息子に伝える。

「タクトくん、カナちゃんね、一番おいしかったんだって」


「ママのご飯より?カナちゃんのおじさんのご飯より?」
私は驚きとともにカナちゃんにきく。
だってカナちゃんのママはカフェ経営者。カナちゃんのおじさんは有名なイタリアンのシェフ。

「うん。タクトくんのが一番おいしかった」


「ずきゅ~ん」
すぐ横で、キラキラピンク色した言葉の矢が、タクトの心臓を貫く。


「よかった~!喜んでくれているかどうか心配だったんだ」
一気に緊張がゆるみ、うれしくて泣きそうなタクトと、カナちゃんの照れた顔。


料理ってきっと、作り手と食べ手のきもちが合わさって、「一番おいしい」がうまれる。
二人のしあわせな様子をみて、友人とわたしもとても満たされた。


はるばるきてくれたけれど、観光や外出はほぼせず、密着高橋家24時間を楽しんでくれた友人親子。
カナちゃんはあれから毎日おやつに目玉焼きを作っているとのこと。




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