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ポップコーンは買わない。vol.113

サイコ

アルフレッド・ヒッチコック監督によるサイコサスペンスの古典的名作。不動産会社に勤める女性マリオンは恋人サムとの結婚を望んでいたが、サムは元妻への慰謝料の支払いに追われ再婚を渋っていた。そんな中、会社の金4万ドルを銀行へ運ぶことになった彼女は、出来心からその金を持ち逃げしてしまう。サムの元を目指して車を走らせるマリオンだったが、大雨で視界が悪くなり、偶然見つけた寂れた宿「ベイツ・モーテル」でひと晩を過ごすことに。そこで彼女は、宿を1人で切り盛りする青年ノーマンと出会うが……。アンソニー・パーキンスがノーマン役を怪演。

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ヒッチコックはサスペンスのフォーマットを作り上げた

まったく意図のわからない選出だと思うだろうが、私もなんとなく名作だし観てみるかという軽いノリで観させてもらった。

アルフレッド・ヒッチコックという人物に関して名前はなんとなく聞いたことはあるが、作品はひとつも観たことがなかった。

アルフレッド・ヒッチコック

サスペンスホラーの第一人者で、このサイコという作品からサスペンスのフォーマットが後世に渡って使い回させることになる。

殺される → 関係者が捜索する → 事件の解決 → 警察や関係者が集まって事件の総括をする → 終わり

超ざっくりとこういう流れだ。なんとなく火曜サスペンスの流れで把握している人もかもしれないが、それはこのサイコからのフォーマットだと言われている。

仕組みを作って後世にずっと残るって、作品以上の結果を残しているのが凄すぎると思う。映画監督である前に発明家であったとは。


ヒッチコック映画の特徴:のぞき視点とエロ、そして恐怖

また、ヒッチコックの作品で特徴的とされるのは、我々観客がのぞき見しているかのような構図になっていることにある。

のぞきで連想されることと言ったら、エロティックなことが思い当たるかもしれない。まさにヒッチコックはエロとのぞきを組み合わせることで、観客にうまい具合の背徳感というか、見つかるとかないんだけど、見つかったらやばいじゃん的なドキドキに一瞬で包まれる。

これはNetflixの全裸監督でものぞきのシーンがある。これは主人公の村西とおるが初めてエロの現場を目撃するところのシーンで、ラブホに開けた穴から他人のセックスをのぞきみしているシーンがあるのだが、

サイコでも同じように物語の主軸となる人物のセックスシーンからスタートし、それをのぞいて見ているかのような構図に仕上がっているのが巧みだなと思うところだ。

そしてそのエロティックな表現と恐怖はセットだからこそより恐怖が引き立つということも感じられる。

エロティック的、つまり衣服をまとっていない状態というのは人間にとって無防備の状態を示す。
本作では主人公がシャワーを浴びている時に殺される。

例えば、誰でも何かしらの怖い思いをした後に風呂でシャワーを浴びていると背後に気配を感じるという経験をしたことがあるはあるだろう。

それはまさに無防備な状態で何か起こった時に何かしらの負傷を負うことになるかもしれないという恐怖を元から持っているからなんだと考える。


実は格差も描いていた?

冒頭のラブシーンでは双方の経済的な理由から結婚に躊躇している様子が描かれている。

これは勝手な思い込みかもしれないが、

実は本作には資本主義の格差も描かれているのではないか。

結果的に会社の金を横領しようとして背徳感に追われながら結婚相手のもとに向かっていくのだが、その挙動はいかにも怪しい。全ての人間の視線が気になり、そして追われているように感じられ、挙動がいかにも怪しくなる。ドラッグでもやっているかのような。まさにいっときの快楽に溺れた姿がそこに描き出されていたように思える。

資本主義による格差が1人の人間の出来心を揺さぶり、よくないことに手を染めてしまう。そして、なんの因果か殺人鬼に殺されてしまうという。

きっと収入の担保がしっかりとしていれば彼女は殺されずに済んだはず、恋人とも幸せになっていたかもしれない。

そんなことを思ってみたりもする。

最後に

名作には実は発明が隠されていて、後世では当たり前に使われている手法が過去の傑作に詰まっているんだなということが本作を観て思った感想です。

まさに源流を見ることができた。

その後他の作品を見たときに、その原型の面影がなんとなくわかるとまたひとつ奥行きのある映画の楽しみ方ができるのではないかと思った。

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