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夜|掌編小説

 じっとりと汗をかいた首筋にハンカチを当て、熱気と湿気が充満した世界の淵に立つ。いつもより、恐怖心はない。駅から自宅まで、歩いて10分。油断はできない。

 臨界点を超えて破裂しそうな世界と、四方八方からまとわりつく暗闇を振り払いながら、大きく足音を立てて夜を踏み散らかす。粉々になった夜は、きっとまた、見知らぬ誰かの体にしがみつくだろう。

 でも、多分誰も気付かない。

 本当は自分が夜にしがみついていることを。

 ほら、誰かを飲み込んで、膨らんだ夜が、そこにある。

(了)


都会の夜は明るすぎて、暗闇が隅に追いやられている気がしますが、例え上っ面だけ明るくしても、人の周りには常に暗闇がうごめいているもの。くれぐれも、油断してはいけない…。
そんな思いで書きました。
小説と言うよりは、自由詩と散文詩をごちゃ混ぜにしたような感じになってしまいましたが…。(;^_^A

声優、演劇講師であるバートラムさん主宰の「1 minute CAST CHOICE」、通称「ワンミニ」の課題用台本募集で採用された作品です。

課題用台本で、しかも240字…。普通に起承転結で物語を書くのは難しかったので、完全にインパクト勝負で書きました。

ワンミニとは、音声ライブ配信サービス「Spoon」内の企画であり、240字で書かれた台本の中から3作を採用し、その台本を配信者が朗読してアップロードし、講評を受け、優秀作品を選出する、というものです。

開催は隔月で、私は昨年11月から台本を応募し、今回の9月度が初採用となりました。

たくさんの方に朗読して頂きましたので、一部ご紹介します。

𝒯❦͙t0⇢ya[とーや]さん
https://www.spooncast.net/jp/cast/5538290

いおりんさん
https://www.spooncast.net/jp/cast/5505403

雪笹yukisasaさん
https://www.spooncast.net/jp/cast/5534821

えっぐぷりんさん
https://www.spooncast.net/jp/cast/5518765


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