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しゅんたろ@ふていき
2019年6月30日 13:04
「今は多様性の時代だからね」 そういう夫の声は低く、静かで、穏やかだ。それはこの場に最も相応しい。相応しい、音質と音量だ。 この場とは個人経営の喫茶店である。都内の裏路地に40年余りの、照明は薄暗く、静謐という言葉がぴったりだ。隣には、年配のご夫婦が食事後の余韻を楽しむべく読書に勤しみ、前の席では外国の若いカップルが英語で絶え間なく会話をしている。BGMすら流れていないので、その話し
2019年6月23日 00:21
#出産の話 汚い話もあるので、苦手な方は退避そうだ。呼吸法だ。 どうしたら軋むような不快感を和らげることができるか、ベッドの上でゴロゴロ左右に転がり続けて10分ほど。ようやく私はその存在を思い出した。 そうだよ。私は今まで何を練習していたんだ。今こそ呼吸だ。落ち着け。落ち着いてやれば、できる!!! フーーーーフーーーー …………………………一向に良くならない。という
2019年6月18日 21:50
#出産の話 。不安になりそうな人はここで退避してください。出産予定日を控え、私は入念に準備していた。ウォーキングは雨の日以外1時間半欠かさず行い、リラックスして出産できる呼吸法のCDで出産のイメージトレーニングをする。全ては、出産の痛みを少しでも減らす為だった。 私は怖がりだ。出産を象徴する痛みの表現数々に、子供時代から恐怖を感じてきた。痛いの怖い。痛いの嫌だ。いや、痛いの
2019年6月9日 21:11
髪をかきあげれば、生え際に白髪が目立つようになった。今年で35歳の私は、一児の母で、世間一般の尺度に合わせれば立派なおばさんだ。 年を重ねることに、私は若い時から随分と脅かされてきた。 20歳を迎えて当時の付き合ってた彼は、誕生日を祝う言葉の前に「20歳を過ぎたら、ニキビは吹き出物って言わなきゃいけないんだぜ」と言い、新卒で入った会社では、別部署の課長に「女の賞味期限はクリスマスケーキ
2019年6月3日 00:28
憂鬱な月末の今日を、ついに迎えてしまった。考えれば動悸が止まらなくなるし、無駄に早起きをした。だが、その原因である事象に直面する当人は素知らぬ顔で普段通り、ご飯も食べずに玩具で遊べと朝から要求してくる。「息子さーん、今日、進級テストの日だよー?ご飯食べないと集中できないよー」一応声を掛けるが、2歳の我が子はどこ吹く風。出発まであと1時間を切っているのに、未だにパジャマでご飯も食べて