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#読書感想文

阿呆の彷徨き|『阿房列車』

阿呆の彷徨き|『阿房列車』

 最近、内田百閒の『阿房列車』をスロウなペースで読み勧めているのだが、これが強烈に面白い。
 此処で言う阿房というのは、読んで字の如くアホのことではなく、秦の始皇帝が建設した阿房宮に由来するらしい。よって『阿房列車』の内容は、列車の中でいきなりケツを丸出しにしたかと思えば、島根県の民謡「安来節」を絶叫しながら廊下を往来。挙句の果てには、隣席に鎮座している老人が身につけている金品を奪い取り、脱兎の如

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三栖一明

三栖一明

 これまで自伝というものにあまり興味を持つことができなかった。なぜか。他人の人生に興味を持つことができないからである。と、ソリッド・スネークの如く答えることができるのは、他人の人生を顧みないほどに自身の人生を何かに捧げた経験がある人間だけである。つまり、なにも成し遂げていない一般ピープルくんが「他人の人生なんか興味ないです」と口にすると、ただの恥をまとった人間である。痛い人間である。
 しかしなが

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『コミティア魂』がかなり良かった

『コミティア魂』がかなり良かった

 コミティアという「自主制作漫画誌展示即売会」という文字にすると堅苦しいこの上ないイベントに行ったことがある。堅苦しい旗揚げを飲み込みやすく噛み砕くと「オリジナル作品だけの同人誌即売会」と言った具合になる。つまり、自分の欲望を紙という媒体を通して世間に知らしめる発表会と言った具合のイベントだ。
 これが猛烈に良かった。猛烈に良かったというのには理由が存在する。当たり前だ。理由なく良かった良かったと

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『「トランプ信者」潜入一年: 私の目の前で民主主義が死んだ』を読んだ

『「トランプ信者」潜入一年: 私の目の前で民主主義が死んだ』を読んだ

 まさかドナルド・トランプについて今年一番関心を寄せるとは思いもしなかった。それほどに、この『「トランプ信者」潜入一年: 私の目の前で民主主義が死んだ』(著:横田増生)がとてつもなく面白い本だった。
 ドナルド・トランプについて考えた際どういうイメージが頭の中を駆け巡るか。「顔を真っ赤にして怒っている老人」「嘘の情報を撒き散らしアメリカを分断に導いたデマゴーグ」「強さを取り戻すと息巻いておきながら

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読んだ本を整理する 3月編

読んだ本を整理する 3月編

 3月編とか書いてすぐに飽いて嫌になり辞めると思うのだが、読んだ本の内容をじわじわと忘れつつある。それがなんとなく嫌な気持ちになってきたので、備忘録がてら感嘆な感想とともに整理しようかと思う。

① 『ウィトゲンシュタインの愛人』(著:デイヴィッド・マークソン)

 よくわからない内容だった。終末世界でひとり生き残った女が、芸術家・作家・思想家のトリビアを入り混ぜつつ、自身の日常や過去のことを手繰

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コーマック・マッカーシー『アウター・ダーク』を読んだ

コーマック・マッカーシー『アウター・ダーク』を読んだ

 コーマック・マッカーシーの『アウター・ダーク』を読んだ。相変わらず、主要人物の心情が言葉で描写されておらず、人間の言動、人間の行動に伴い形を変える自然物、眼の前におこる自然現象ばかりが淡々と言葉で描写されていた。
 事実だけを描写しているのにも関わらず、読み進めていると言い表しようのない不気味な雰囲気や他人に隙を見せることができない緊張感、捕まれば一瞬にして命を握られる悪意じみたものなどが這い寄

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森博嗣の『馬鹿と嘘の弓』を読んだ

森博嗣の『馬鹿と嘘の弓』を読んだ

 関係の薄い知り合い、お互い顔は知っている程度の知り合いが捕まったことがある。それもかなり大きめの罪で。これ以降、音沙汰が無くなれば風の噂も聞くことも無くなった。
 ここでいう捕まったというのは法的にまずいことをして警察のお世話になったということだ。とある日に飯を食いながらニュースを眺めていると、知った顔がスマートフォンの画面に写ったもんだから大変に驚いた。驚いたと同時になかなかにショックを受けた

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井伏鱒二「川釣り」

井伏鱒二「川釣り」

 井伏鱒二の『川釣り』を読んだのだが、これがものすごく良かった。
どこが良かったかと言うと、釣りの技術に関して何も述べていないあたりが良かった。いや、多少なりとも技術が云々カンヌンと書いていた気もする、氣もするが、技術に固執するのではなく、釣りを通じて人との交流がありましてんが主題であったと思う。
 そもそも、書の序盤に「これは技術を教える所ではありません」と断り、もとい保証がが入っているように、

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「どうせ陰謀論者じゃないかよ」

「どうせ陰謀論者じゃないかよ」

 叶井俊太郎の対談集『エンドロール!』を読んでいるのだが、これが結構おもしろい。
 叶井といえば、『アメリ』を買い付けて莫大な富を得たと思ったら、いつの間にか三億の借金を抱え破産。その後は、『いかレスラー』とか『日本以外全部沈没』とか『プー あくまのくまさん』などヤバメの映画を宣伝プロデュースをしている人物である。
 そんな叶井は、膵臓ガンにかかり余命半年と宣告。余命が幾許もないのなら、今のうちに

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