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20歳の夏、小田和正さんというやさしさに触れた。


#小田和正  さんのライブツアー、『#こんど、君と』に行ってきた。




ライブというより、クラシックコンサートのようだった。礼儀正しい感じ。

楽しい!!というより、幸福な時間だった。

ミスチルの時のようなロックの熱っぽい盛り上がりではなくて、バラードめな曲調なこともあってじんわり心に染み渡るような静かな盛り上がりを感じている。赤い炎ではなく、青い炎的な。

それは私個人の心の中だけではなくて、会場もそんな感じ。年齢層が高いこともあって、みんな静かに耳を澄まして小田さんの音楽を楽しんでいる、といった空気感。基本は座って楽しむ。もちろん手拍子で心の盛り上がりを伝えていたし、小田さんが近くにきたときには立ち上がって手を振ったりしていた。他のライブみたいに途中で帰るようなマナーの悪さとかもほぼなくて、上品に楽しめた。

このご時世になるまでは、アリーナにマイクを向けられてお客さんが一緒に歌う部分もあったらしい。ライブって総立ちで熱く盛り上がるイメージあるけど、静かな盛り上がりも好きだなぁと思った。



それはそうと。


小田さんの声って、ゴスペルのようだと思う。

初めて聴いた時から「なんて美しい声なんだろう」って聴くたびに思っていた。天国に召される時の天使の声ってこんなんなんだろうな、と。

今日一声聴いた瞬間から涙が溢れそうだった、というかなんか、「救われた…」という気持ちになった。別に特段苦しいことや悲しいことがあったわけでもないのに。今風に言うなら「口から音源」とは、まさにこのこと。

MCでの地声を聞いて、もちろん歌声と話し声は少し違うけど、「ああ、この人の声だ」と思った。


神に選ばれた声。


あんな美しい声持ってたら歌うしかないだろう。歌詞なんかメロディなんかめちゃくちゃでも、誰もがあの声の才能を見出しただろう。
なのに歌詞もメロディも美しい曲を生み出せちゃうんだから、神に選ばれたとしか言いようのない才能なんだろうなぁ。


小田さんの歌は「唄」、歌詞は「詩」という感じがする。最近の歌はメッセージ性が強めで、「親から子へ贈るあたたかい言葉」みたいなイメージ。

昔の人気曲は恋愛ソングが多めで、その中でも「恋」の曲が多い気がする。「言葉にできない」なら「失恋」場面の失恋側の心の中に焦点を当ててエッセイ的に綴っているイメージ。
一方、最近の曲は恋愛に限らず、恋愛に限らず友愛、人類愛、家族愛といった「愛」の曲が多い気がしている。

書く曲が緩やかに恋から愛へシフトしているのは、小田さんの歳の重ね方からくるものなのかなぁと感じる。


ちなみに個人的な歌詞のイメージを比較すると、「ヒゲダン=PV、ミスチル=物語、小田さん=エッセイ。」ヒゲダンは主題歌となる作品をメッセージに置き換えるのが上手、ミスチルは比喩とかで相手に解釈を委ねるのが上手、小田さんはストレートに伝えたいことを伝わるように綴るのが上手だなぁと思う。

歌い方も、ヒゲダンやミスチルはロックなのもあって、ノると踊ったり、叫ぶようにマイクを掴んで歌ったりする。実際彼らの歌声は、体の中心にズドンッと響いてくる。

一方、小田さんは立ち止まっている時は時々膝でリズムをとるけれどいつも静かに軽ぅく(みえるように)歌う。でも基本会場中をゆっくり歩きながら歌っている。そんな小田さんの歌声は、耳にスパーンと入ってきて、頭に突き抜ける。その衝撃の余波として心がじんわり温かくなるなぁと思った。

(ヒゲダンの藤原くん、ミスチルの桜井さん、小田さん。3人とも素晴らしいアーティストで、それぞれのベクトルがあるので、誰が1番とかじゃもちろんない。比較するものでもない。ただ、個々の個性の違いを言葉で伝えるならばこのようなところかなぁと思う。)


小田さんは「天才」というより「神様」みたいな感じだなぁと思う。


会場のどこを歩いていても、スポットライトが当たっていてもいなくても、小田さんがいるところだけ神々しい。
今日見にきていた人は他のアーティストのライブのように「ファン」ではなく「お客さん」という言葉が似合うし、小田さんに対する心情もアイドル的な「きゃー♡」という感じではなく、「敬服」という感じだった印象。

小田さんが自分の近くにくると、客席総立ちになる。それが小田さんのライブのマナー?なのかもしれない。

でもそれも「周りが立ったから…」ではなく、それぞれが小田さんに惹き寄せられるように立っていく。私もそう。ああ、神がお通りになる。そんなものを感じた。



ちなみに私の4列ほど前のおばちゃんはずっと立っていた。

健康で元気なのか、小田さんが彼女を元気にしているのか。

私は世代が違いすぎて、オフコース時代どれだけ人気だったかも、どんなふうに人気だったのか(アイドル的なのか?カリスマ的なのか?)も知らない。小田さんがソロになってからしか知らないから、もしかしたらオフコースを追っかけていた時の感覚が蘇っておばちゃんも若返ったかのように盛り上がっていたのかもしれない、と思う。

母の友達に小田さんのことをめっちゃ好きだった人がいたらしい。「若い時イケメンやったん?」と聴くと、「というよりは才能に惚れ込んでた。いつも小田和正の話してた。」と言っていた。
あのおばちゃんもそうなのかもしれないなぁと思った。



あと小田さんって音へのこだわりがすごい
どの曲も原曲キーだし、バンドにはバンドらしからぬバイオリンがいるし、小田さんのグランドピアノによる弾き語りの曲もある。バイオリンとギターが一緒に演奏することなんてなかなかないと思うけど、音の重厚感が増して「生演奏」って言葉がすごく似合う。綺麗だった。

それにしても若い時に作られた曲でも原曲キーでまだ歌えるってすごい。74歳とは思えない。あんな美しい声いない…。

透明感のある澄んだ声、でも決して弱くなくて、中に強い芯を感じる。綺麗な声であることに代わりはないけれど、「綺麗」というよりは「美しい」が似合うし、「クリア」というよりは、「透明感」とか「澄んだ」が似合う。beautiful でもwonderful でもなくて、「美しい」。日本語の持つ美しさが似合う人だと感じた。



ライブの間、ずっと言葉が溢れて止まらなかった。この空間の素晴らしさをどう伝えようか、と意志で考えるより前に、頭が動いていた。会場があまり大きすぎないから冷房がちゃんと効いていて、集中できていたのもあるかもしれない。

他のライブでは興奮が先にくるから、伝えるための言葉が浮かばない。

静かに盛り上がる、クラシックコンサートのようなライブでは「言葉が溢れて止まらない」という形の興奮があるのだと知った1日だった。





*以下、ネタバレを含みます*



前後半の間に入る、ご当地ムービー。
会う人会う人の写真や拍手やサインに丁寧に応じる小田さんの温かさを感じるし、思っていることを呟きながら旅する様子はすごく癒される。すごくいい企画だなあと思った。

小田さんは手拍子してほしいとき、マイクの下でそっと手拍子する。それもいいのだけれど、さらに盛り上がった時はその場でジャンプしながら手拍子したり軽く走ったりする時があって、それがすごくかわいい。癒される。

MCも無理に盛り上げようとはせずに、真面目でストイックな小田さんの自然体でボソボソ語る。でもきちんとクスッと笑えてしまう。結論から言うと、歌の人だから喋りは…ということなしにMCも良かった。

帰りも長々とバンドマンや自分の紹介、挨拶やお礼をすることなく、きちんとそれらはしつつ、あっさりと引いていく。締めがしゃべりだけじゃなくて「また会える日まで」のアカペラコーラスなのが本当に良い。何度もライブに足を運んできたファンの方にとってはお馴染みのようで、「このコーラスがないってことはまだあるんだ・・・!」とダブルアンコール前も気を抜かずにアンコールの手拍子をしてた。恐れ入った。


「やさしい雨」のとき、正方形のカラフルな銀テがひらひら舞っていて、雨の演出が美しすぎた。

最後の方の曲の時、ディスコを彷彿とさせるミラーボールの照明が綺麗だった。


「会いに行く」「愛を止めないで」「言葉にできない」「たしかなこと」「キラキラ」「Yes-No」「ラブ・ストーリーは突然に」「生まれ来る子供たちのために」「YES-YES-YES」「君住む街へ」

人気曲・名曲かつ大好きなこの曲たちを聴けただけでも、もう思い残すことないと思える。


全部よかったけど、「君住む街へ」が本編最後なの良すぎる。

「そんなに自分を責めないで」
「その手で望みを捨てないで」
「ひとりと思わないで いつでも」

あの声で歌われたら涙が出る。



中学時代だったか。


父が買ってきた『あの日 あの時』をiPodに落として、よく聴いていた。

アルバム単位で聞くから曲名も見ずに進んでいくわけだけど、『YES-YES-YES』からの流れで数曲後に『君住む街へ』があって。聴くたびに辛い心が浄化されていくのを感じていた。

それを6年後くらいに生歌で聴いたなんて。
あー、耳が幸せ。



風を待って
会いに行く
愛を止めないで
夏の日
やさしい風が吹いたら
水曜日の午後
言葉にできない
たしかなこと
キラキラ
 〜御当地紀行〜
so far so good
やさしい雨
Yes-No
ラブ・ストーリーは突然に
明日
ナカマ
生まれ来る子供たちのために
今日も、どこかで
こんど、君と
君住む街へ
 〜アンコール1〜
またたく星に願いを
YES-YES-YES
 〜アンコール2〜
Hello Hello
やさしい夜
また会える日まで

2022年7月2日『こんど、君と』@城ホ セトリ
開場15:00/開演17:00/終了19:30頃


人気曲を抑えたセトリも、いろんなところに歩けるように通路が張り巡らされたステージも、みんなが平等に見えること・楽しめることを考えられたもので、小田さんのサービス精神が伺える。

「ラブ・ストーリーは突然に」はどのライブでも絶対にやるらしい。お客さんが何を求めているか、わかっているんだなあと思う。そして、それにちゃんと応えるなんて、歌声通り、やさしい人だなぁと思う。

ちなみに会場入った瞬間、このステージセットにまずびっくりして感動した。多くの人を入れるより、会場に来てくれた人全員を楽しませることを優先したのを感じて「やさしいなあ」と思った。




この感想の落とし所がわからなくなりつつある。
言葉の限りを尽くしたつもりだし、昨日ライブ中に浮かんだ言葉は全部出し切ったつもりだ。


CDやストリーミングで聴いても美しいと満足してきたのに、生を聴いたあとだと、やはり音源では物足りなく感じてしまう。


今回も父と参加していたけれど、

「ここ数年ライブに行って"この人あったら絶対行かなあかんな"と思ったのは、ミスチルと小田和正くらいやな。」

と言っていた。


小田さんも74歳。

1秒でも長く生きて、1回でも多くライブをして、1曲でも多くの曲を我々に届けてほしいと願わざるを得ない。

またライブがあったら必ず行きます。



p.s. 
昨日中に書き上げて出すつもりが書きながら途中で寝落ちしてて、やっぱり間に合わなかった…。
でも満足。感じた全部を綴れたから。





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