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#良い店員である前に、良い客でありたい


今年3月、最寄駅にできたコンビニでバイトをはじめた。

いまのところ月曜の早朝と昼(大学で2限を受けてまた帰ってくる)と木曜の昼、私はコンビニ店員だ。

これは社会の縮図たるコンビニで、日々孤軍奮闘する私の社会勉強の記録。

接客業や営業職の方には共感いただけそうなネタ多めな気がしています。
できるだけ軽快に、ユーモラスに語ります。

そんな新連載・#コンビニバイトの日常 の幕開けです。




これまでバイトは教育系ばかりで、接客業はこれが初めて。

ずっと客側で生きてきた私は、自分が接客側になったら量産型の接客をする店員になるのではなく、真心ある接客をする店員になりたいと思っていた。そしてそれは9割の場合においては実践できているといえる。

たとえば、うちの店舗はセミセルフレジなのでお支払い方法はお客様自身に画面で選択してもらうようになっている。支払い方法の多様化で行き違いがないようにするハッピーな制度だが、はじめから「PayPayで」とかって言ってくれる方や、明らかにゴソゴソ財布から現金を出そうとしていて支払い方法を選択してる余裕のない人に「すみません、お支払い方法の選択をお願いします」と杓子定規な対応をすることが果たして正しいことなのかと言われると私には違和感がある。なので、そういう場合にはなにも言わずにこちら側の画面で操作しておく。

そういった配慮に加え、ニコニコと明るい声で、おじいちゃんおばあちゃんのお客様の世間話にお付き合いしたり、マイバッグへの荷物詰めをしたりする私の接客は、去り際に礼を言われたり「サービス精神が素晴らしいね」などとお褒めいただくことも多い。

だがそれは、治安のいい街の駅改札前にある、全国的にも有数の客層がいい店舗で、いわゆる客ガチャのハズレが少ないからに過ぎない。逆にいえばそれでも残り1割は客ガチャにハズれるのだ。


以前、Twitterで客ガチャについてのこんなツイートがバズっていた。当時コンビニ店員じゃなかった私はエンタメ感覚で”こんな奴いるのww”と眺めていたが、コンビニ店員となった今は“まじでこれ!”過ぎて、このツイートの主さんに会ったら同志として力強い握手を交わし、客ガチャ愚痴大会を繰り広げられる自信がある。


接客業あるあるでよく言われ、上記にもあるイヤホンつけたまま・電話しながら・無言(文句も言わない)あたりに関しては、実は私の場合そんなに腹が立たない。

ほんとうにやばいのは「お客様は神様思想の持ち主」と「常にキレてる人」だ。ど偏見だが、どちらも55歳以上のおばさまと、65歳以上の新聞も買わなくなったおじさまに多い。(ピーッ)(逆に55歳以上のおじさまと、65歳以上のおばさまだと途端に客ガチャ当たり率高くなるのほんとおもしろい)
「タバコを番号で言わない人」もまあまあ困りものだが、間違えた時に怒りさえしなければ、上記の2パターンに比べるとまだ全然かわいいものだ。


残念ながら私はこの客ガチャのハズレに、初回はなんと勤務4日目で(!!)遭遇してしまった。

そのおじさまは現れた瞬間から、並んでた人の順番抜かしをしようとするので「お並びの方がいるので」と先に並んでいた人を優先したら、順番になった途端にビンの酒をバンッと大きな音を立ててカウンターに置き「なんであの人を先に通したんや」とクレームをつけてきた。“あ、ゴミ生まれ変わって人生やり直した方がいい客きた” と悟った。

ちなみにその後、バーコードを読み、会計画面へ移行させていると「シール貼らな盗まれたと思われるやろが!」と怒鳴り始めるので(そりゃビニール袋買わずカバンも持ってなければ思われるやろな)、本気で護身用ALSOKを鳴らそうかと思ったけど、我慢し、毅然とした態度で理不尽な発言はすべてシカトし、すべて終えた後後ろにもたくさん人がいたので、まっすぐ見据えて「アリガトウゴザイマシタ」と問答無用でお帰りいただいた。

当時オープンしたてで、他店からの応援としてきていた社員の方が「翠さん、なんも悪くないからほんま気にせんでいいからな。落ち込まんとってな。あんなカスいっぱいおるから。」と励ましてくれた。



昨日は、来た瞬間からキレてるおばさまがバーコード読んでいる時にアプリのクーポン画面を押し付けてきたのでクーポンのバーコードを読むと、エラーだった。まだ商品をレジに登録していないものや対象外のものはエラーになるので「そちらなんのクーポンでしょうか?」と丁寧に確認したら「ここに揚げ物って書いとるやろ!!」といきなりブチギレられて、“あ、ゴミ。もう一度人生やり直した方がいい人、登場”と、シカトを決め込み(というかしゃべる場面もない)、揚げ物を登録してクーポンを読み直して会計画面に進み、揚げ物を持ってきて差し上げたあと、私は大人な判断を下した。

(あー…どうしようかな。普段ならこんな態度悪い客は挨拶したふりをしてお帰りいただくところやけど、このおばさんうるさそうやし、挨拶してあげよ)

という心の声を殺し、まっすぐ目を見て「ありがとうございました」と言ったのだ。(えらい、天才、なんて素晴らしいの私!)

なのに!ヤツは!後ろに客がいるなか、一向に立ち去ろうとせず、少しして「あんた、態度悪いよ!」と吐き捨てて去っていったのだ。

(は?お前がな!)である。

頑張って心の声は堪えてお帰りいただいて次のお客様を案内したが、あと1秒でもその場に居座られたら「お前がな!」と叫んで護身用ALSOKを鳴らしていただろう。


残念ながらこの世には、店員なら立場上反論できないだろうとナメて自分の不機嫌を撒き散らしてくる、生まれ変わってもう一度人生やり直した方がいいオトナはたくさんいる。


店員とはいえ、私たちも人間である。

今回は残念な客について取り上げたけれど、神様のようなお客様もいて(こちらのミスなのに「あなたが責任じゃないからそんな謝らなくていいよ」と言ってくれた人とか、「遅延してるみたいだから気をつけてね」などと声をかけてくれるような人とか、とにかく愛想がよくて丁寧な人とか)、

そういうお客様にはこちらも素晴らしい接客を、と思うし、別に態度が特別いいわけではないお客さんでも少しでも気分よく帰ってもらえたらと+αの接客を心がけたくなるし、残念な客にはその瞬間そういうやる気が失われて、客観的に許されるレベルで失礼な必要最低限の接客でさっさとお帰り願いたくなる。そういうものだ。

我々はなにも、態度いい客になってくれと言っているわけではない。自分の不機嫌を関係ない人に撒き散らすなという、ひととして当たり前のことを守ってほしいだけなのだ。怒りを撒き散らされるくらいなら何を聞いても無視される方がまだマシだ。


良い店員を作るのは、本人の努力と良い客である。

ならせめて1人の客として、良い客でありたいと私は思うのだ。







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