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月星真夜(つきぼしまよ)
2024年6月3日 06:18
その日、ウサギとカメは麻布十番駅にそっと降り立った。歩き始めたウサギは、店の内装が珍しいお店の前で足を止めた。それはまるで鳥の巣のようで、不思議な雰囲気を醸し出していた。「見て!ちょっと覗いてみない?」たまご専門店「本巣ヱ」に一歩足を踏み入れたとたん、金色に輝く「たまごパン」がすぐに彼女の視線を捉えた。焼きたての「たまごパン」をそっと手に取ったウサギは、パティオ十番のベンチに向かった。そし
2024年5月11日 06:04
その日、ウサギとカメは、祭りの賑わいに包まれたラ・チッタデッラにいた。「はいさいFESTA」の会場は、沖縄の離島から持ち寄られた品々で色とりどりに飾られており、二人の馴染み深い、石垣島や宮古島の風を感じさせた。空気はタコライスやソーキそばの香りで満たされ、その一方で、海の波が寄せるかのように、貝殻で作られた繊細なアクセサリーが店頭に並べられていた。中央噴水広場に立つと、二人の耳に三線の音色がゆ
2024年5月2日 06:44
おめで鯛焼き本舗で、思わぬ性格判断をしたウサギとカメは、長い戸越銀座の反対側まで歩いてきていた。あたりを見回していたウサギの目に留まったのは、「紫色のスライム」だった。「うなぎいも? ってなに?」彼女は店頭にあるタペストリーを読み始めた。 「鰻の頭や骨を肥料にして栽培したサツマイモだから『うなぎいも』なのね。どんな味なのかしら?」ウサギはカメの手を引きながら、軽やかに店の中へ入っていった。
2024年4月4日 06:20
その日、朝食を抜いてきたウサギは、巣鴨地蔵通り商店街のゲートの下で、仁王立ちの姿勢で前を見据えていた。「さあて、何から食べようかしら」と彼女は不敵につぶやいた。「立ち直るためには美味しいものが必要なの」と涙目で訴えたのはウサギだった。エイプリルフールに、不器用なジョークで彼女を惑わしたカメには、彼女のために美味しいものを探すしか選択肢がなかった。「巣鴨で食べ歩きしよう」と彼が言うと、ウサギは心