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ぱいなっぷれ!

素直じゃないけどスイートなきみ。
そんなきみが皮膚の下に隠してる
とろりとした甘さが、
ぼくを駄目にする。
もっと。もっと。
もっとほしい。


石垣島のパイナップルが旬を迎えているらしい。
果物屋さんの店頭で、
トゲトゲなパイナップルと目が合った。
あたりに漂う香りが誘っている。

思わず手に取って
しげしげと眺める。
分厚くて堅そうな皮と、トゲ。
葉っぱの先も鋭利だ。
薔薇に棘があるように、
パイナップルにもトゲがある。
つまりは誰にも渡したくないから、
トゲで身を守っているのだとしたら。
絶対おいしいに決まっているではないか。
私はその小ぶりなパイナップルを手に
レジへ向かった。
どんなにトゲを出しても、
もう逃げられないからね。
食べちゃうんだからね。


ポコットパインと名付けられた
そのパイナップルは、
ちょっと変わっている。
ひとつひとつの房を、
手でもいで食べるのだ。
そんなことできるの?
と思うだろうけれど。

堅そうに見える皮は案外とやわらかく、
指で簡単にちぎれる。
くさび形にもいでみると、
ゴールデンな果肉が目に飛び込んできた。
中からは、夏の熱い風の匂いがした。
沖縄の光と風を思い出す。

甘い!
ねっとりと絡むような南国果物の濃い甘さが、
口の中に広がる。
舌がピリピリする感覚がない。
果汁が指から肘の先まで伝い、
ぽとりと床に落ちた。
今はそれにかまっている場合ではない。
とにかく目の前のパイナップルを
食べるのだ。
ひたすらに指でもいでは、口にする。

指でもぐ。
おいしい。

再びもぐ。
あまい。

もうひとつもぐ。
やめられない。

本棚の上にパイナップルを七本並べて、
月曜日から
順番にひとつずつ食べていきたい。
パイナップりたい。
そんな想いに駆られるのだった。


パイナップルには
消化を助ける酵素があるので、
肉料理の後のデザートにもいい。
昔、焼肉屋さんでさんざん食べ散らかした後、
サラダバーに並んでいたパイナップルを
たくさん食べた記憶がある。

「焼肉をあんなに食べたくせに、
よくまだそんなにも食べられるね!」

そう友人に言われた記憶がある。

その時はただ単純に、
美味しくて肉料理の後に合う果物だなと
思うくらいだったのだが。
肉を食べすぎた体が、
消化を促すものを欲していたのもしれない。
自分の体の本能に拍手を送りたい。 

パイナップルは、実がなるまでに
約二年かかるのだという。
一本の苗からひとつの実を収穫し、
翌年もうひとつ実らせる。
そうするとその苗は、
植え替えられることになるのだそうだ。

太陽と土の恵みに出会った果物が、
人の手によって甘く育ってゆく。
それが長い長い旅をして、
私の家のテーブル(あるいは本棚?)に
やって来た。
沖縄を訪れることは
まだできない現状だからこそ、
こうして近くで沖縄を感じられることは
とても嬉しい。


今日の梅雨の晴れ間の太陽は熱く輝いて、
沖縄の島で見た太陽に
どこか似ていた。

夏も近い。
パイナップルで季節を感じるのも
悪くない。


さて、明日もパイナップる?


文章を書いて生きていきたい。 ✳︎ 紙媒体の本を創りたい。という目標があります。