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イベントの類型 トリガー事業&レガシー事業【ローカルイベント学vol.2】

私は、東京2020大会に東京都職員・市役所職員・組織委員会職員という3つの立場にて携わった唯一の経験を持っています。東京2020大会では、まちづくりの考え方・スタンダードが更新されました。
今回は、イベントの分類の考え方について、少し紹介いたします。

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なお、東京2020大会は最大規模のイベントであり、皆さんご存じのとおり光も影もありますが、今回、ライトサイドの話としてお付き合いください!

レガシーとは

レガシーには様々な定義がありますが、一番分かりやすいのはこちら。

東京都 「2020年に向けた東京都の取組-大会後のレガシーを見据えて-」より

たとえば、東京2020大会では、このようなレガシーが目指されていました。
■障がいのある人もない人もお互いを尊重し支えあう共生社会の実現
多様性を尊重する意識と国際感覚の醸成
■参加型・活躍型多文化共生社会の実現
・・・などなど、多分野に渡っていくつものレガシーが、たくさんの組織によって目指されていました。

東京2020大会の事業をふりかえってみると

東京2020大会に向けて行われたイベントについて、あなたはどのようなイメージがありますか? どのようなイベントを知っていますか?


■ オリンピアン講演会
■ パブリックビューイング
■ 聖火リレー
■ ステージ発表
■ パラリンピック競技体験会
■ ホストタウン交流
■ 観光おもてなしボランティア活動 などなど

こういった様々なイベントを2種類に分類する考え方を紹介します。
それが、トリガー事業(気運醸成事業)とレガシー事業です。

例えば、オリンピアン講演会は「トリガー事業」です。なかなか、1回の講演でレガシーを作っていくことは難しいでしょう。
一方、観光おもてなしボランティア活動の立上げを目指した講座は「レガシー事業」です。

どちらが優れているとか、大事というお話ではありません。
どちらも必要です。その「バランスを保ってイベントを打ち出していく大切さ」を全国的に学んだわけです。
というのも、多くの自治体では気運醸成を目的とした「トリガー事業」に偏重して行っていました。その結果、明確に「レガシーはこうです!」と説明に困った状況も大会後に多々ありました。

しかし、同時に、「気運がないことには、レガシー創出は難しい」ということも、全国的に学びました。
2010年代、東京2020大会はまちづくりの最大のチャンスであったことは間違いないのですが、一般市民にはなかなか伝わっていない。そういった状況の中、「私たちのまちでは、○○のレガシーを作っていくために、こういった活動をします!」と打ち出しても、なかなか同意できず、主体的に関わろうとする人はごく一部になったはずです。
気運、つまり「なんとなくの理解や同意」が前提として必要なわけです。レガシーは主催者だけでできるものではないです。主催者と参加者とのパートナーシップによって協働・共創して初めて創出されるものです。

改めて東京2020大会の事業を考えると・・・

イベントに携わる人にとってのヒントをお伝えしたいと思います。

分かりやすいように「市役所のスポーツ事業担当者」になったつもりで想像してみてください。

組織の方針として、あなたは、パラリンピックスポーツの気運醸成を目的に「トリガー事業」として「パラリンピアン講演会(ボッチャ)」を開催することになりました。
<➊そのままの未来>
パラリンピアン講演会は無事に終了!
「やっぱりアスリートはすごいよね!違うわぁ」「やる気がでた!元気貰えた!」との声。(ふぅ、よかったよかった・・・)
<➋何かあった未来>
「あの講演会がきっかけだったよね!」「毎日楽しいよ!本当にありがとう!!」と色々な人から言ってもらえる!

➋何かあった未来では、レガシー事業としてイベントを打った場合を想定しました。私だったら、例えばこのように行います。

■講演会のあとに連続して体験会も行う。
■体験会の後、翌月くらいに連続講座を行う。
■連続講座の中で、教え方を教わる。そして、小学生や自治会、老人会、企業、市役所、社協などへのボッチャ教室をイベントとして行う。
■連続講座の中で、ボッチャ大会を開く。ボッチャ教室参加者にも参加を促す。
■任意団体を作りたいとの声が主体的に上がってきたところで団体づくりをサポート。市役所と協働関係になる。色々な活躍機会を紹介する。
■任意団体として、活動を本格化!

レガシーから考える事業フレーム

上記の➊➋➌➍は、考える順番です。レガシー事業を行うとき、つまり、レガシー創出をしたいときには、この順番で考えることをオススメします。


レガシー
 ➔心のバリアフリーが実現した社会
➋(レガシーが含有している)課題
 ➔障がい者理解、LGBTQ、DE&I  etc・・・
➌➍(課題の解決に向けた)学び・活動
 ➔既存事業を活かす(障がい者青年教室と小学校で体験的な学習活動)、   
  新しい事業・動きをこの機会に作る(スポーツ交流で体験的に理解)、
  その他○○・・・
という順序で一通り考えて、また何周か考えて精度をあげていくと良いと思います。

学びと活動は一緒に考えた方がいいです。「こんな学びをしたらこんな活動が生まれるかも」「あんな活動を生みたいから、あんな学びが必要かも」といった具体に表裏一体でセットで考えることをオススメします。

この事業フレームをもとに、ワークショップで参加者と一緒に考え合っていくというのもできます。ぜひ、お役立てください。

おわりに

私たちサステナブルタウンでは「地域に暮らす一人一人が環境・社会・経済にとって最良な選択を見つけられる”サステナブルな地域社会”を日本中にたくさん作る」ことをミッションに活動しています。

まちづくり活動全般
市民協働、官民共創、生涯学習、社会教育、住民主体、市民活動など

ローカルイベント学
講座、講演会、展示会、体験会、音楽会、フェアなど、プログラム作成・運営ノウハウなど

ソーシャルプロジェクト
コーディネート、コミュニティ活性化、ワークショップデザイン、ファシリテーションなど

オープンイノベーション・ソーシャルイノベーション
産官学民による共創など

サステナビリティ
SDGs、SX、DX、D&I、ダイバーシティマネジメント、ジェンダー平等、男女共同参画、多文化共生、ポートランドのまちづくりなど

観光・おもてなし・多文化共生
やさしい日本語、多言語音声翻訳、多言語対応など

公共施設建替え
ソフトづくり、協働・共創の関係づくりなど

オリンピック・パラリンピック等メガイベント
気運醸成、レガシー創出、プロジェクト支援など

さまざまな分野にて、2012年より、全国各地にて、その地域の課題に合わせてワークショップや講座、講演会等の内容・方法を一つずつ考えて取り組んできました。また、計画の策定支援、職員研修、パンフレット作成支援なども行ってきました。
学びの力でより良い社会づくりを目指す活動を行う専門家として、これからもご要望に応じて取り組んでいきます。
お仕事のご依頼をいただければ幸いです。

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