「降る、そして照らす」
駅までの道中、僕はぼんやりと歩いていた。
今にも泣き出しそうな曇天に若干の不安を覚えていた。
肩が濡れた。針を刺したような小さな水濡れの跡。その時、直感で察した。これはひと雨くる。
僕は走り出した。これから降る雨から逃げる為だ。
駅が見えてきた瞬間、一気に雨が降ってきた。
先ほどまで神様にせき止められいたかのような凄まじい勢いで地上を叩き始めた。
全身が濡れて、一気に重くなる。マンホールが次々と雨を飲み込んでいく。
豪雨の影響で靴の中まで水浸しになり、靴下が重くなる。
駅に着いた瞬間、さっきまでの雨が嘘のように止んだ。数分後には雲の切れ間から陽の光が差し込んで、水溜まりや葉の上に乗っている雨粒を宝石のように照らしていた。
電車に乗るとそれは美しい夕暮れが顔を出していた。ぼんやりとした日に起きたトラブル。
神様の気まぐれに随分と振り回されたけど、 それでもこんな日があっても良いと思えた。
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