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変形性関節症者の臨床実践ガイドライン。システマティック・レビュー


📖 文献情報 と 抄録和訳

変形性関節症診療に関する中核的勧告:臨床診療ガイドラインの系統的レビュー

📕Conley, Brooke, et al. "Core recommendations for osteoarthritis care: a systematic review of clinical practice guidelines." Arthritis care & research (2023). https://doi.org/10.1002/acr.25101
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[背景・目的] 目的変形性関節症(osteoarthritis, OA)の管理における介入に関する臨床実践ガイドライン(clinical practice guidelines, CPG)の質を評価し、質の高いCPGの推奨の統合を提供すること。

[方法] 5つのデータベース(OvidSP Medline、Cochrane、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature [CINAHL]、Embase、Physiotherapy Evidence Database [PEDro])と4つのオンラインガイドラインリポジトリを検索した。OA管理に関するCPGは、1)英語で書かれ、2015年1月~2022年2月に出版され、18歳以上の成人を対象とし、Institute of Medicineが定義するCPGの基準を満たすもの、2)Appraisal of Guidelines for Research and Evaluation II(AGREE II)の評価項目で質が高いと評価されたものを対象とした。OAに関するCPGは、機関アクセスでのみ入手可能である場合、ケアのシステム/組織に対する推奨のみを扱い、介入管理の推奨を含まない場合、および/または他の関節炎疾患を含む場合は除外された。

✅ Should do, Could do, Do not doの定義
・Should do:「すべき」推奨は、そうすべきでない根拠がない限り、すべての状況において適用されるべきであると著者らが判断したものである。これらは強力なエビデンスに基づくもので、例えば、臨床的に適切なプラスの効果を報告する質の高い研究が複数ある場合、リスクを上回るベネフィットがある場合、あるいはCPG作成グループのメンバーの意見としてベネフィットが明白である場合などである。
・Could do:「できる」推奨は、個々の患者の状況に応じて適用できると著者が判断したものである。これらは通常、質の低い複数の研究または質の高い1つの研究から得られた一貫したエビデンスに基づいており、有益性が有害性を上回るものであった。
・Do not do:「してはいけない」の推奨は、著者がベネフィットがない、あるいはベネフィットを上回る害があるという強いエビデンスがあると判断したものである。

[結果] 対象となった20のCPGのうち、11が質が高いと評価され、統合に含まれた。股関節、膝関節、手関節、肩甲上腕関節、および/または多関節OAが対象となった。

■ コンセンサス❶:すべき Should do

■ コンセンサス❷:できる Could do

■ コンセンサス❸:してはいけない Do not do

✅ 変形性関節症に超音波治療は推奨されない!?
3つのCPGは、膝関節、股関節、および/または多関節のOA患者に対する超音波治療の不使用を推奨している(📕1,2,3)。
<文献1に詳細情報が載っていた>
・We suggest not offering therapeutic ultrasound for people with knee and/or hip OA [1]
■ 根拠
・超音波治療が膝関節OA患者の疼痛と身体機能に統計学的に有意な効果をもたらすという中程度の質のエビデンスがある。
股関節OAの参加者を対象とした無作為化比較試験(RCT)はないため、この集団のエビデンスレベルは間接性の懸念から低品質に格下げされた。
・膝関節OA患者における超音波治療の効果は中程度であり、有害性のリスクは低いが、現在のエビデンスは短期間(2~8週間)の追跡調査のみに限定されていることをワーキンググループは指摘した。
・また、ワーキンググループは、治療終了後の効果が持続するかどうかについても懸念を表明した。
・利用可能なエビデンスによると、効果を得るためには週に3~5回の治療セッションが必要である。
受動的な治療法のために医療専門家のもとを訪れる回数が多いこと、また、個人に経済的な負担がかかることを考慮すると、ワーキンググループは、膝関節および/または股関節のOA患者に超音波治療を提供すべきではないと考えた。
■ 有害性
・一般的に、超音波療法が安全でないことを示唆する証拠はない。
・その作用機序から見て、超音波治療が重篤な有害事象を引き起こす可能性はむしろ低いが、潜在的な有害事象の正式なモニタリングによる有害性の積極的な監視が望ましいことは明らかである。
→つまり有害性による反対推奨というよりは、効果に対するコスト/労力が少ないことが懸念されているようだった。

📕1. Royal Australian College of General Practitioners. East Melbourne (Australia); 2018 >>> pdf.
📕2. Bannuru RR, et al. Osteoarthritis Cartilage 2019; 27: 1578–89. >>> doi.
📕3. Van Doormaal MC, et al. Musculoskeletal Care 2020; 18: 575–95. >>> doi.

[結論] OA管理に関する質の高いCPGのこの統合は、医療提供者に、患者の転帰を改善するために推奨されるOAケアの明確で簡便な指針を提供するものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

臨床実践ガイドラインとは、「健康に関する重要な課題について、医療利用者と提供者の意思決定を支援するために、システマティックレビューによりエビデンス総体を評価し、益と害のバランスを勘案して、 最適と考えられる推奨を提示する文書」(専門理学療法士:指定研修より)である。
つまり、以下のプロセスによってできあがる。

■ 単一試験 → システマティックレビュー → 臨床実践ガイドライン

今回のシステマティックレビューは、その『臨床実践ガイドライン』をシステマティックレビューしたものだ。
単一の臨床実践ガイドライン自体が、木(単一試験)の集合である森(単一のシステマティックレビュー)を集合させた自然公園(単一の臨床実践ガイドライン)である。
それをシステマティックレビューしようというのだから、根の中の根、幹の中の幹、重要の中の重要。
ぶっとい大黒柱を見る営みになる。

その中で驚いたのは、超音波治療が「してはいけない」推奨に入ったこと。
「えっ、危険なの!?」と思い、すぐに参考文献を孫引きした。
すると、危険性があるということではなく、リスク/ベネフィットの関係で推奨されないということのようだった。
鵜呑みして思い込むのではなく、紐解いて真実の中で生きたい。

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