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代謝回転・炎症表現における変形性関節症の3つのクラスター

📖 文献情報 と 抄録和訳

生化学的マーカーデータのクラスタリングによる変形性関節症のエンドタイプ発見

Angelini, Federico, et al. "Osteoarthritis endotype discovery via clustering of biochemical marker data." Annals of the Rheumatic Diseases 81.5 (2022): 666-675.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

🔑 Key points
- 変形性関節症(OA)の根底にある病態を標的とした新しい治療法に対するアンメットニーズが存在する。
- 教師なし機械学習に基づく計算方法は、変形性関節症患者を、異なる分子エンドタイプに対応するサブセットに層別化する可能性を持っている。
- これらの方法を適用することによって、我々は3つの支配的なクラスターを同定し、それらを低組織代謝回転型(C1)、構造的損傷型(C2)、全身性炎症表現型(C3)と特徴づけた
- C1は非進行者の割合が最も高かった。C2は、ほとんどが縦断的な構造的進行と関連しており、C3は持続的または進行的な痛みと関連していた。

[背景・目的] 変形性関節症(OA)患者の層別化は、オーダーメイドの治療法を設計し、医薬品開発を促進するための重要な課題である。IMI-APPROACHコホートにおいて、関節組織のターンオーバーを反映する生化学マーカーをベースラインで測定し、エンドタイプ関連クラスターによって駆動されるOA優勢表現型を研究するために機械学習アプローチを用いて分析し、駆動機能とその疾患文脈の意味を見出した。

[方法] 適切なデータ前処理技術を設計するために、データ品質評価を実施した。k-meansクラスタリングアルゴリズムを用いて、生化学的マーカーデータに基づく患者の優性サブグループを発見した。クラスタメンバーシップを予測するために分類モデルを学習し、これらを解釈するためにExplainable AI技術を使用して、各クラスタの背後にある駆動因子を明らかにし、表現型を特定した。統計解析により、IMI-APPROACHコホートにおける他のマーカーに関するクラスタ間の差異と、縦断的な疾患進行の比較を行った。

[結果] 3つの表現型に関連する3つのドミナントエンドタイプが見出された。

✅ 組織代謝と炎症マーカーにおける3つのクラスターと臨床的特徴
■ クラスター1 - 低組織代謝回転型(C1):患者は、炎症と構造的損傷に関連するすべてのバイオマーカーが中・低域にある。修復および関節軟骨・軟骨下骨の代謝回転率の低下。C1は非進行者の割合が最も高かった。
■ クラスター2 - 構造的損傷型(C2):患者は、骨と軟骨のマーカーが高い値である。S_CTXI、U_CTXIALPHA、S_NMID、U_CTXII。高い骨形成・吸収、軟骨劣化。C2は、ほとんどが縦断的な構造的進行と関連していた。
■ クラスター3 - 全身性炎症表現型(C3):患者は、炎症マーカーとMMP駆動型マーカーの値が高い。S_hsCRP、S_RE_C1M、S_CRPM、S_C3M。一方、骨や軟骨に関連するマーカーは低い値を示した。U_CTXIALPHA、S_NMID、S_CTXI。関節組織劣化、炎症、軟骨劣化。C3は持続的または進行的な痛みと関連していた。

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✅ 図. バイオマーカー値が分類モデルの判断に与える影響。バイオマーカーは重要度順に並んでいる(最も重要なものが上)。X軸のSHAP値は、各患者の影響の強さと方向(正の値は、クラスタに属する確率の増加を示す)を表す。色はバイオマーカーの値を表しています(低い場合は青、高い場合は赤)。

[結論] この研究は、OAにおける表現型の違いを支持するものである。バイオマーカーのアプローチは、OA臨床試験における層別化を促進し、将来的にOA進行の精密医療戦略に貢献する可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

プレシジョンメディシン(precision medicine)という言葉がある。

✅ プレシジョンメディシンとは?
- 日本語訳では「精密医療」や「緻密医療」となる。
- 文字通り、医療をより精密または緻密に行おうという考え方を示したもの。
- プレシジョンメディシンとは、人々の遺伝子、環境、ライフスタイルの違いを考慮し、予防や治療法の確立をめざす医療。
🌍 参考サイト >>> site.

今回論文の視点も1つのプレシジョンメディシンになるのだろう。
人体を構成するすべての細胞は、代謝回転している。
その代謝回転が早い人もいるし、遅い人もいるだろう。
また、炎症を惹起しやすい人、しにくい人もいるだろう。
一人一人違う中で束ねすぎた場合、標準化されたリハビリは暴力となりうる。
たとえば、かなり炎症を惹起しやすい人に対して、高負荷・高頻度のリハを実施すれば、当然、炎症は増悪する可能性が高い。

必要なこと、まず個別の特徴を知る術を明らかに獲得すること。
今回のようなバイオマーカを、毎回計測するというわけにはいかないだろう。
臨床上、もっと簡便で有用な指標がいる。
たとえば、一定期間の髪の毛の伸び(or 爪)から代謝回転特性を知ることや、一定の関節負荷を加えた後の関節温度の経時的変化を追ってみるなどがパッと思いついた。
定規を手に入れない限り、何かに基けない。

必要なこと、代謝回転に影響を与える術を明らかにすること。
たとえば、筋力トレーニングは、膝OA者の関節周囲組織の代謝回転を同化方向に傾ける。

これに類似する、代謝回転を揺り動かす術を知ること。
さらに、その患者の代謝回転に応じて、最適な負荷や頻度を明らかにすること。
これには、地道な研究が必要だろう。
道は長い、が明らかに重要な目的地につながっている。
歩け。

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