見出し画像

骨粗鬆症をX線で評価する

📖 文献情報 と 抄録和訳

股関節全置換術前のAP型股関節X線写真におけるRadiographic Indexは、BMDの低い候補者を明らかにする

Liu, Y., et al. "Radiographic indexes in AP hip radiographs prior to total hip arthroplasty reveal candidates with low BMD." Osteoporosis International 33.4 (2022): 871-879.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

✅ Tスコアとは?
- 骨密度が正常な若年成人の平均値より大きいか小さいかの指標のこと
🔑 Key points
- 股関節前後(anteroposterior, AP)X線写真を用いて、THA前の骨密度(bone mineral density, BMD)との関連性を調べるためにいくつかの指標を測定し、大腿骨BMDの予測に非常に有効な指標を見出した。
- 具体的には小転子の10cm下における管状骨比は、大腿骨BMD減少の有用な指標となることが証明された
- この手法は、DXA検査が特に推奨される低BMDの潜在的候補者を特定するために、患者および臨床医の双方にとって有用である。

[背景・目的] 本研究の目的は、股関節のAP X線写真を用いて、股関節全置換術前の低骨密度患者を特定することである。

[方法] 股関節のAP X線写真の指標と腰椎と股関節のDXA検査のTスコアをTHA前の患者から取得した。股関節のAP X線写真で測定された指標には、管踵比率(CCR)、管フレア指数(CFI)、形態的皮質指数(MCI)、管骨比率(CBR)、管骨面積比率(CBAR)などがある。大腿骨のTスコアと指標の関連性を相関分析で評価し、骨減少症に対する指標の診断価値をROC曲線で検討した。

画像1

✅ 股関節前後(AP)X線写真における12指標の測定方法
(A). HAL:股関節軸長、FHW:大腿骨頭幅、FNW:大腿骨頚部幅、FIW:大腿骨転子間幅、FNSA:大腿骨頚部軸角、FHNR(Femoral head neck ratio)=FHW/FNW; bar = 2 cm.
(B). CCR = G/C; CFI = A/G; MCI = B/E; CBR-7 = E/D; CBR-10 = G/F; CBAR (7–10) = (E + G)/(D + F)

[結果] 合計81名の患者が対象となった。CBR-7、CBR-10、CBAR(7-10)の平均値は大腿骨のTスコアと高い相関があった(それぞれ、r = - 0.592、r = - 0.634、r = - 0.631, p < 0.0001)。観察者内および観察者間のばらつきの評価結果は良好であった。CBR-7、CBR-10、CBAR(7-10)は、非骨減少群と骨減少群で有意差があった(p<0.0001)。CBR-10は曲線下面積(AUC)が最も大きく、大腿骨近位部における骨減少症の診断価値が高いことを意味した(AUC=0.821、カットオフ値=0.3805)。

[結論] 小転子下10cmにおける管状骨比は、大腿骨減少症の大きな指標となることが証明された。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

これまで、レントゲン画像を見た際の骨萎縮・骨粗鬆症の有無の評価には、以下の指標を用いていた。

これまでの骨粗鬆症

✅ 単純X線写真による骨粗鬆症の診断法
1. 骨の透過度はどうか?:白くはっきり ➠ 正常 ➠ 黒くすけている ➠ 骨密度低下
2. 骨梁が認識できるか?:骨がはっきり見えて、骨梁が分からない ➠ 正常
3. 骨梁が粗か?:粗である ➠ 骨密度低下
4. 骨陰影がぼやけるか?:ぼやける ➠骨萎縮度Ⅲ
📕岸本英彰. 骨粗鬆症治療 5.3 (2006): 194-198. >>> site.

この評価を用いた場合、“おおよそのこと” がわかる。
自然、患者や、実習生などへの説明も歯切れが悪くなる。

「みて。このレントゲン。黒く透けているでしょ。で、骨陰影もなんとなくぼやけているからⅡかⅢだと思うんだよね・・・」

So What?(だから何?)。
はっきり断定しない評価は、その後の行動可能性が低く、結果から得られる経験の価値も低まる。
モヤッとした印象を残すだけで、後出しジャンケンできてしまう。
「転倒、骨折?だから言ったでしょ」
「詳細な計測をしたら骨粗鬆症じゃなかった?だから言ったでしょ。じゃあⅡだったんだね」
それに、なんの意味があろう。

YesかNoか、それがはっきりしてこそ、行動できる、振り返りに価値が出る。
今回の抄読研究は、その1つの指標を提供してくれた。
これから、実習生への説明は以下のようになるだろう。

「みて。このレントゲン。小転子下10cmの管状骨比が0.38より大きいでしょ。これは骨粗鬆症である可能性がとても大きいと考えられるんだよ。」

断言してこそ、勝利と敗北がある。
勝利と敗北があってこそ、生長が見出せる。
少なくも評価指標は、その結果の解釈に断言の要素が必要だと思う。

・・・そう
僕にとって勝利も敗北も、生命そのものなんだ
だから僕は全力でぶつかっていくよ
最高の勝利と敗北を味わうために

~浅野いにお「おやすみプンプン3」より~

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓

【あり】最後のイラスト

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●○

#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び

この記事が参加している募集

最近の学び