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喜びと悲しみ。バランスを司どる脳領域

📖 文献情報 と 抄録和訳

幸福と悲しみの認識には、後前頭葉と内側眼窩前頭葉領域が重要な役割を担っている

📕Nakajima, Riho, et al. "Posterior-prefrontal and medial orbitofrontal regions play crucial roles in happiness and sadness recognitione." NeuroImage: Clinical (2022): 103072. https://doi.org/10.1016/j.nicl.2022.103072
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✅ 前提知識:前頭葉眼窩部内側と前頭前野後方の位置

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🔑 Key points
- 感情間のトレードオフ関係を支える脳領域が明らかになった
- posterior-prefrontal(PPF)領域の損傷は、幸福の認識の精度を低下させる。
- PPF領域の損傷により、悲しみの認識精度が向上する。
- 前頭葉眼窩領域においても、悲しみの認識で同様の傾向が見られた。
- 慢性期には、悲しみに対する欠損のみが持続し、幸せに対する欠損は持続しなかった。

[背景・目的] 人間の基本的な情動を司る脳領域の中核は、まだ十分に解明されていない。我々は、脳局所切除を受けた患者から得られたデータを用いて、幸せと悲しみの表情に対する感情認識に関与する主要な領域を調査した。

[方法] 右大脳半球性脳腫瘍患者44名と健常ボランティア33名を登録し,顔面表情認識テストを行った.Voxel-based lesion-symptom mappingを行い,感情認識精度と切除部位の関係を検討した.

[結果] 前頭葉後方領域は幸せの認識スコアが低く、悲しみの認識スコアが高い(幸せの障害群)、前頭葉内側眼窩領域は悲しみの認識スコアが低く、幸せの認識スコアが高い(悲しみの障害群)というトレードオフの関係が発見された。

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幸福感障害群、悲しみ障害群ともに、感情認識スコアは対照群に比べ有意に低かった(それぞれp=0.0009、p=0.021)。興味深いことに、幸せの認識の欠損は一時的であったのに対し、悲しみの認識の欠損は慢性期に持続していた。グラフ理論解析により、後前頭葉領域と内側眼窩前頭領域の間の構造的結合を同定した。これらの領域のいずれかが損傷を受けると、両者を結ぶ路程が有意に減少した(p = 0.013)。

[結論] これらの結果は、ヒトの幸せと悲しみの認知のバランスを保つためには、前頭葉後面と内側眼窩領域が重要である可能性を示している。結合性解析と組み合わせた病変研究を用いて、ある領域の切除が臨床に与える影響を調べることは、神経ネットワークを理解する上で有用な神経画像法である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

静と動、光と闇、善と悪。
これらに共通するものとは、何だろうか。
・・・。
『トレードオフ関係』
動くほど静かではありえず、
光るほど闇は存在しえず、
善であるほど悪ではいられない。

そのトレードオフのドメインに、また1項目が加わった。
喜びと悲しみ。
今回、とくに注目したいのは、悲しみを抑制するものが喜びに他ならなかったということ。
日常では、えてして悲しみに悲しみを重ねやすい。
「何で泣いてんだよ!泣くんじゃねぇよ」
このように、悲しみを否定することで悲しみを撲滅しようとする。
だが、今回の抄読研究が明らかにした仕組みに基づけば、『悲しみを消したい?なら、喜びを見つけようぜ!』になる。
闇をかき消すのは、闇の仕事ではなく、光の仕事だったのだ。
全PT、全上司、全人間は、この仕組みに通じておいた方がいい。

闇を見つけて消去するでなく、
光を見つけて発光を強めろ。
それで闇は消える。
光へ向かえ、すべからく光へ。
どこまでも、晴れ男でいよう。

私がいけば必ず雨は上がります
安藤百福

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