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膝OA者のバランス制御。固有感覚, 足底感覚, 疼痛, ROM, 筋力との関連


📖 文献情報 と 抄録和訳

変形性膝関節症の高齢者において、バランス制御は固有感覚、関節可動域、筋力、疼痛、足底触覚と順次相関する

📕Shen, Peixin, et al. "Balance Control is Sequentially Correlated with Proprioception, Joint Range of Motion, Strength, Pain, and Plantar Tactile Sensation Among Older Adults with Knee Osteoarthritis." Sports Medicine-Open 10.1 (2024): 70. https://doi.org/10.1186/s40798-024-00735-3
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🔑 Key points
🔹変形性膝関節症の高齢者において、固有感覚と足底触覚の悪化、関節可動域の縮小、筋力の低下が検出された。-
🔹変形性膝関節症の高齢者において、バランスコントロールは固有感覚、関節可動域、筋力、疼痛、足底触覚と順次相関していた。
🔹変形性膝関節症のリハビリテーションプログラムは、固有感覚、関節可動域、筋力、疼痛、足底触覚の改善という順序に従って提案される可能性がある。

[背景・目的] 変形性膝関節症(膝OA)患者は転倒のリスクが高く、その原因はバランスコントロールの障害にある。バランス制御に関連する因子を特定することは、膝OA患者の的確なリハビリテーションプログラムの開発を促進する。本研究は、膝OAを有する高齢者と有さない高齢者において、バランス制御と固有感覚、足底触覚(PTS)、疼痛、関節可動域(ROM)、筋力との相関、およびこれらの因子とバランス制御との相関の大きさと順序を調査することを目的とした。

[方法] 膝OAを有する高齢者(n=124、女性:84、年齢:68.8±4.0歳)と有さない高齢者(n=116、女性:64、年齢:67.9±3.5歳)計240名を募集し、膝OA群と対照群に割り付けた。固有感覚、PTS、疼痛、ROM、筋力が測定された。ピアソン相関またはスピアマン相関を用いて、それらがBerg Balance Scale(BBS)と有意に関連しているかどうかを検証し、因子分析と多変量線形回帰を用いて、各因子とBBSとの相関の程度を決定した。

[結果]
■ BBSスコア, 各身体機能の比較
・対照群と比較して、膝OA群はBBSスコアが低く、固有感覚とPTS閾値が大きく、ROMが小さく、筋力が低かった(p: それぞれ0.008、<0.001-0.016、<0.001-0.005、<0.001-0.014、<0.001-0.002)。

■ 両群におけるBBSスコアと各身体機能の関連
・膝OA群では、BBSは固有感覚、PTS、疼痛、ROM、筋力と弱い相関から中程度の相関があった(r: それぞれ0.332-0.501、0.197-0.291、0.340、0.212-0.508、0.236-0.336)。
・対照群では、BBSは固有感覚および筋力と相関していた(r:0.207-0.379、0.212-0.410)。

この表は、変形性膝関節症(KOA)患者群とコントロール群における、固有受容感覚、足底感覚(PTS)、痛み、関節可動域(ROM)、筋力とBerg Balance Scale(BBS)との部分相関を示している。

■ BBSスコアの予測式
・膝OA群では、BBS=54.41+ (0.668*strength) - (0.579*PTS) - (1.141*proprioception) + (1.054* ROM) - (0.339*pain)であった。
・一方、対照群では、BBS=53.85+ (0.441*strength) - (0.677*proprioception) であった。

[結論] 膝OAを有する高齢者では、固有感覚とPTSの悪化、ROMの縮小、筋力の低下が検出され、固有感覚、PTS、疼痛、ROM、筋力はすべてバランス制御に関連していた。固有感覚が最も強い相関を示し、次いでROM、筋力、疼痛、PTSの順であった。5つの因子を改善する順序に従って、的確な膝OAリハビリテーションプログラムが提案される可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

バランス機能が低下している(低いBBSスコア) → バランス練習をしよう!

間違ってはいない。
間違ってはいないのだけれども、単調であり、深みが、思考が少ない。
この感覚は、何なのだろうか。
その正体の1つは、『臨床思考過程における次元異動のなさ』である。
以下のnoteにまとまっているので、興味のある方は参照していただきたい。

バランス機能はNCMRRモデル(障害モデルのフレームワークの1つ)においては、Function limitationレベルに位置する。
Function limitationレベルの低下に対して、Impairmentレベルの原因が存在する。
例えば、バランス不良の原因として、感覚鈍麻や筋力低下が該当するかもしれない。
この次元間移動が統合と解釈であり、臨床思考過程であり、深みであり、思考しているっぽさの正体の1つである。

今回の抄読研究は、膝OA者と対照群で、バランススコアに対する要因の調査を行い、膝OAの有無で随分その関連性が異なることを明らかにした。
具体的には、膝OA者では足底感覚、疼痛、関節可動域がバランス不良の要因となりやすい(対照群ではそうではない)。
ここから、特に膝OA者のバランス不良の要因を考える際に、『足底感覚、疼痛、関節可動域』の低下を疑った方が良さそうだ。
臨床思考過程の深みへ、ズブズブ足を踏み入れていきたい。

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