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才能を測る。サッカースカウトの目

📖 文献情報 と 抄録和訳

サッカースカウトはどうやって才能ある選手を見極めるのか

📕Bergkamp, Tom LG, et al. "How soccer scouts identify talented players." European Journal of Sport Science (2021): 1-11. https://doi.org/10.1080/17461391.2021.1916081
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🔑 Key points
- サッカースカウトの大規模なサンプルに基づき、才能あるサッカー選手を特定するプロセスにおいて重要な3つの問題を検証する。すなわち、「パフォーマンスを予測できる年齢」、「どの属性が適切な予測因子か」、「パフォーマンス予測がどのように形成されるか」である。
- 若い年齢層の選手を観察しているスカウトは、パフォーマンスを予測できる年齢が、通常スカウトする選手よりも高いと考え、パフォーマンスの早期指標が不足しがちであることを認識していることが示唆された。
- スカウトは技術的なパフォーマンス属性を最も重要なパフォーマンス予測因子とみなしているが、これらはしばしば具体的な意味ではなく、広義の意味で説明されている。
- スカウトは、構造化された方法でパフォーマンスを予測しているが、異なるパフォーマンス属性の直感的な統合によって全体的なパフォーマンス予測を形成しており、これは最適とは言えないアプローチである。

[背景・目的] サッカークラブのスカウトは、しばしば才能ある選手を最初に発見する。しかし、これらのスカウトがどのようにサッカー全体のパフォーマンスを評価し、予測するかについての研究は不足している。そこで我々は、125名のサッカースカウトを対象に、才能の発掘過程を調べる大規模な研究を実施した。

[方法] オンライン自己報告式アンケートを通じて、スカウトは、(1)選手のサッカーパフォーマンスを予測できる年齢、(2)関連性があると考える属性、(3)構造的にパフォーマンスを予測する程度について質問された。

[結果] 最も重要な結果は以下の通りである。

①スカウトは若年からの姿を見て将来を予測する
- 12歳以下の選手を観察したスカウトは、それ以上の年齢(平均13.6歳)でも、その選手がプロサッカー選手になる可能性があるかどうかを予測できると認識していた
- ほとんどのスカウト (125 人中 63 人) が U12 およびそれより若いコホートの選手を観察していた
- これらのことは、スカウトが、将来のパフォーマンスを示す初期指標が不足しがちであることを認識しながら、若い年齢での選手の姿を参考にしていることを示唆した
②スカウトは9つの属性を重視、特に観察可能な技術的スキルを重んじる
- スカウトは才能のある選手を見極める際、技術的な特性など、より観察しやすい特性を考慮し、技術的スキルが最も重要な因子として頻繁に言及された。
- 具体的には、技術的スキルまたはボールを扱う技術、ゲーム感覚と認識、生理的または運動能力、スプリント速度、勝つための考え方またはメンタリティ、意欲または内発的動機、ボール コントロール、ハンドリングの速さ、体組成的属性の9つの属性だった
- しかし、スカウトは、将来のパフォーマンスの具体的な予測因子としてではなく、広義にこれらを説明することが多い。
③結局、スカウトは主観を頼って選ぶ
- スカウトは、選手の属性を構造的に評価すると回答している。
- しかし、最終的には、様々なパフォーマンス属性の直感的な統合に基づいて予測(つまり最終スコア)を行っており、これは既存の文献によれば最適とは言えない戦略である。

[結論] これらの結果は、スカウティングプロセスの信頼性と妥当性を向上させるための具体的な手がかりを提供するものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

未来についてわかっている唯一のこと、それは現在とは違うということだ
未来を予測しようとすることは、夜中にライトをつけず、後ろを見ながら田舎道を運転するようなものだ
未来を予測する最善の方法は、それをつくることである

ピーター・ドラッカー

この世の中で、数は少ないが絶対的なものが、いくつかはある。
その1つが『未来の予測不可能性』だ。
未来は、いつだって未知であり、想定外に満ち満ちている。
その中で、スカウトという仕事は、なんと酷な仕事なのだろうと思う。
未知のものに賭け、勝利すれば愛でられ、敗北すれば切られる。
海外など、なおのことそうだろう。
そんな、いわばギャンブラーたちの思考の一端が明らかにされた本研究は貴重だ。

まず面白かったのが、幼少期から経時的に見て情報を得ていた点
これは、すごくわかる気がする。
これから成長するか、成長しないかは、現在の絶対的なパフォーマンス位置が規定するものではなく、身体に内包された成長力、『力』を持っているかどうかが規定する。
そして、力は『F=ma』(F:力、m:質量、a:加速度)が示すように、一時点からのデータでは算出できない。
少なくとも2時点のデータから加速度(変化)を算出する必要がある。
写真では魅力を感じなかった人が、
実際に会ってその表情や身体の所作を見たら、魅力を感じた。
そんなことが、しばしばある。
静止画ではなく、その変動から得られるデータが重要だ。

そして、結局直感・主観で選んでいた、というところも興味深い。
さまざまなデータを見た上で、最後は『自分で』選ぶ。
でも、そりゃそうだろう、とも思う。
数式だけが送りつけられてきて、「これが最も美味しい桃です」と言われても誰も買わないが、数式を知った上で、目の前に並べられた桃の中から自分が「いいね。」と思ったものは買う。
自分で選びたいのだろう、人間だもの。
そして、そうすることで、その後の選択者の行動が激変する。
例えば、数式だけで選んだ(選ばされた)選手が成功しても失敗しても、それは「数式」のせいだ。
だから、選手を選択した後、スカウトは何もしないで他人行儀を決め込むだろう。
しかし、自分で選んだとなれば、その成功も失敗も、自分に帰属する。
責任が発生するのだ。
そうなると、そのスカウトはその選手を成功させるために、フロント陣への話し方や紹介の仕方を考えるだろうし、自分が知っている良質なパーソナルコーチを紹介したりもするかもしれない。
責任を持ちたいのだ、人間だもの。

結局、選ぶという行為はロジカルと人間性の重複したところに存在する営みなのかもしれない。
人間が選ぶ限り、主観を排除できない、というより主観が尊いのだ。
正解を選ぶ、というより選んだものを正解にねじ上げることが嬉しいのだ。

選んだ正解を正解にするかどうかが全てであって、
選択肢(アイデア)には正解はない

西野亮廣

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