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基本チェックリストの威力。8年間前向き調査で機能障害と関連

📖 文献情報 と 抄録和訳

日本人高齢者における機能障害発生に対するキホンチェックリストの総得点の予測能力。8年間の前向き研究

📕Matsuzaki, Hideaki, et al. "Predictive ability of the total score of the Kihon checklist for the incidence of functional disability in older Japanese adults: An 8‐year prospective study." Geriatrics & Gerontology International (2022). https://doi.org/10.1111/ggi.14435
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✅ 前提知識:基本チェックリストとは?
・全25項目の質問(Yes or No)で構成されている(うち1つはBMI算出)
・不利な回答で1ポイント、0-25ポイントで採点
■ 基本チェックリストの質問項目の意図
・1~5の項目...日常生活関連動作について
・6~10の項目...運動器の機能について
・11.12の項目...低栄養状態かどうか
・13~15の項目...口腔機能について
・16.17の項目...閉じこもりについて
・18~20の項目...認知症について
・21~25の項目...うつについて
🌍 参考サイト >>> site.

[背景・目的] 8年間の追跡調査において、基本チェックリストの総得点(t-KCLスコア)と機能障害の関連を調べ、危険因子との基本モデルにおけるt-KCLスコアが高齢者の機能障害の予測能力の増加に寄与するかどうかを検討すること。

[方法] ベースライン時に機能障害のない65歳以上の高齢者2209人を追跡調査した。t-KCLスコアはベースライン調査の質問票を用いて決定した。機能障害は介護認定の情報に基づいて定義した。t-KCLスコアと機能的障害の関連はCox比例ハザードモデルを用いて検討した。機能障害に対するt-KCLスコアの増加予測能力は、C統計量、カテゴリーフリーの純再分類改善(NRI)、統合識別改善(IDI)の差によって評価された。

✅ 機能障害の定義
・要支援1以上の介護度認定を受けた人を機能障害ありと判断

[結果] 追跡期間中央値は7.8年であり、557人が機能障害を発症した。t-KCLスコアが1ポイント上昇することによる機能障害の調整ハザード比(95%信頼区間[CI])は1.08(1.06-1.10)であった。基本モデルにt-KCLスコアを追加すると、C統計量(95%CI)は0.747(0.728-0.768)から0.760(0.741-0.781)へと有意に改善された。また、基本モデルにt-KCLスコアを追加した場合、NRIとIDIはそれぞれ0.187(95%CI:0.095-0.287)、0.020(95%CI:0.012-0.027)であった。

スライド2

✅ 図. t-KCLスコアの四分位ごとの機能障害の累積発生率。機能障害リスクの累積発生率曲線はt-KCLスコアの四分位間で有意に異なり、四分位2と四分位3の組を除くすべての四分位比較で有意差がみられた。

[結論] t-KCLスコアは、8年間の追跡調査において、機能障害と独立した正の相関を有していた。さらに、基本モデルにt-KCLスコアを追加することで、機能障害の予測能力が向上した。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

基本チェックリストを眺めていて、思った。

「これ、初回の問診で結構聴いてる!!!」

近年、評価指標を使用することや、状態のモニタリングの重要性が認識され、実践されてもいる。
その中で、臨床現場では深刻な1つの問題が生じていると感じる。
それが、『重複』の問題である。

回復期病棟に入棟した患者をイメージしてみよう。
その患者の入棟初日のこと。

看護師:「この1年間に転んだことがありますか」
患者:「2回くらいあります」(1ヶ月前基本チェックリストで答えたのに・・・)
ソーシャルワーカー:「この1年間に転んだことがありますか」
患者:「2回くらいあります」(さっき聞かれたのに)
理学療法士:「この1年間に転んだことがありますか」
患者:「2回くらいあります」『さっきも聞かれました!!!』

上の例は、職員間連携が不足している極端な例を描写した。
だが、多かれ少なかれ、どの病院にとってもあるあるではなかろうか。
しっかりと評価しようとすることは、間違いなく「善」である。
しかし、その重複は患者自身の精神に負担をかけるし、職員の貴重な労働時間を同一の評価に費やすという非効率な事態を生んでいる。

これを解決するためには、①評価指標の共通使用・共通理解、②結果の共有可能性を高めるが有効と思われる。

①評価指標の共通使用・共通理解
・類似/同一項目を含む違った評価指標の使用をやめる
・メジャーな評価指標ツールを職種横断的に理解する
・例. 基本チェックリストを保健師だけでなくPT/OT/ST、看護師、ソーシャルワーカーが把握していて、 包含されている転倒恐怖心、病前身体活動量、IADL評価の別個の評価をやめる

②結果の共有可能性を高める
・マイナンバー制度とリンクし基本チェックリストなど医療関連情報の閲覧を可能にする
・この場合、個人情報保護との兼ね合いなど倫理的問題がありそう
・閲覧者を医療職などに限定するシステムができれば実践できるか

業務には重複はない方がいい。
だが、コミュニケーションには理解の重複がある程いいと思う。
僕は、この文献抄読で基本チェックリストについて理解した。
これで、高齢者安心センターの職員や保健師と話すときには、共通理解のもとで話ができる。相手の知っていることを、自分も知っている。
それがお互いにとって、嬉しいのだ。

知ることは愛すること
スヌーピー

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