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高齢者の体温調節。極端な暑さへの暴露実験


📖 文献情報 と 抄録和訳

加齢は、日常生活動作に伴う極端な暑さへの曝露に対する体温調節反応を変化させる

📕McKenna, Zachary J., et al. "Age alters the thermoregulatory responses to extreme heat exposure with accompanying activities of daily living." Journal of Applied Physiology 135.2 (2023): 445-455. https://doi.org/10.1152/japplphysiol.00285.2023
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🔑 Key points
🔹日常生活活動をシミュレートするために短時間の軽い身体活動を組み込んだ極端な暑さ曝露の実験モデルを用いて、本明細書で報告された熱負荷の程度は、実際の熱波条件下で起こるであろうことをより正確に表している。
🔹代謝熱の発生と環境条件が一致しているにもかかわらず、高齢者では中核体温の反応が増大することが示されたが、これは加齢に伴う熱放散機構の低下によるものと考えられる。

[背景・目的] 高齢者は、加齢に伴う放熱能力の低下もあり、熱に関連した罹患率や死亡率のリスクが高い。年齢が暑熱ストレスに対する反応に及ぼす影響を調べたこれまでの研究では、日常生活動作が欠如しているため、実際の熱波時に生じる熱的・生理的負担を正確に描写できない可能性がある。我々は、2つの猛暑シミュレーションに曝された若年者(18~39歳)と高齢者(65歳以上)の反応を比較しようとした。

[方法] 健康な若年者(n = 20)と高齢者(n = 20)は、異なる日に2つの3時間の猛暑曝露を受けた: 1) DRY(47℃、湿度15%)、2) HUMID(41℃、湿度40%)。日常生活活動に匹敵する発熱を模倣するため、参加者は暑熱曝露中に5分間の軽い身体活動を分散して行った。測定項目は、体幹温、皮膚温、心拍数、血圧、局所発汗量、全身発汗量、前腕血流、知覚反応であった。

[結果] Δ体幹深部温(若年者:0.68±0.27℃ 対 高齢者:1.37±0.42℃;P<0.001)および終末体幹温(若年者:37.81±0.26℃ 対 高齢者:38.15±0.43℃;P=0.005)は、DRY条件下において高齢者コホートの方が高かった。Δ体幹深部温度(若年者:0.58±0.25℃対高齢者:1.02±0.32℃;P<0.001)は、HUMID条件下において高齢者コホートで高く、終末体幹温度(若年者:37.67±0.34℃対高齢者:37.83±0.35℃;P=0.151)では差がなかった。全身の発汗量(若年者:237±40g/m2/h 対 高齢者:239±46g/m2/h;P=0.885)および前腕血流量の変化(交互作用:P=0.640;表3)は、群間で差がなかった。

[結論] 我々は、高齢者は日常生活活動に伴う熱ストレスに対する体温調節反応が低下していることを証明した。これらの知見は、これまでの報告を裏付けるものであり、高齢者は高体温症のリスクが高いという疫学的データを確認するものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「わたし、暑がりで寒がりなのよ」
「俺って、暑がりで寒がりなんだよ」

この言葉は、高齢者の方々からよく聞く言葉だ。
(いやいや〜、そんなことないでしょう)
などと思っていた自分が恥ずかしい。
今回の論文の結果、高齢者は少なくとも暑さに対して、若年者より体温が上がるらしい。
すなわち、外界の変化に対して、高齢者は “変温的”といえる。

これは、外界が暑くなれば体温を下げ、外界が寒くなれば体温を上げるという、体温調整機能の低下によるものなのだろう。
これを臨床に応用すれば、屋外歩行時に患者さんと同じ暑さを感じているようで、多分患者さんの方が体温上がっている。
「高齢者は寒がりだから、多少暑くても・・・」などは御法度だ。
高齢者は、暑さにも、寒さにもより“変温的”である、と思おう。

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