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骨格筋肥大力。外部/内部変数による定式化

📖 文献情報 と 抄録和訳

抵抗運動によるヒト骨格筋肥大のメカニズムに関するエビデンスに基づくナラティブレビュー

📕 Lim, Changhyun, et al. "An Evidence-based Narrative Review of Mechanisms of Resistance Exercise-induced Human Skeletal Muscle Hypertrophy." Medicine & Science in Sports & Exercise (2022): 10-1249. https://doi.org/10.1249/MSS.0000000000002929
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[レビュー概要] 骨格筋は、身体機能と代謝の健康に重要な役割を担っている。筋は適応性の高い組織であり、レジスタンスエクササイズ(resistance exercise, RE)に反応して肥大化し、また、筋の廃用時にはREによって筋の減少が緩和される。レジスタンスエクササイズトレーニング(RET)により誘発される骨格筋の肥大は、外部変数(例えば、REプログラミング、食事、いくつかのサプリメント)と内部変数(例えば、メカノトランスダクション、リボソーム、遺伝子発現、衛星細胞活性)の産物である。

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✅ 図. 骨格筋肥大のための外部変数と内部変数の定式化。骨格筋肥大のための内部変数を活性化(出力)するには、外部変数(入力)が不可欠であるが、外部変数によって刺激された内部変数の応答が、骨格筋肥大の重要な決定要因である。色のついた四角の大きさは、その変数が筋肥大にどの程度寄与しているかを反映している。変数間の相互作用の性質が不明なため、乗法的(-)で示したが、関数が加法的であったり、より複雑な関係(つまり未知の関数)である可能性も認めている。

REは、筋肥大に関連する内部変数の活性化/抑制を刺激する、または、廃用による筋力低下に対抗するための最も強力な非薬理学的外部変数であることは否定できない。ここでは、外部変数がRETと筋肥大に与える影響に関する多くの研究にもかかわらず、外部刺激に対する筋肥大の程度を調節するのは、内部変数(すなわち、固有の骨格筋生物学)が支配的であると仮定している。従って、外部RE変数の変換を媒介する骨格筋由来の主要な内部変数を特定することは、健常者の骨格筋肥大の最も効果的な戦略を決定する上で極めて重要である。このような研究は、臨床集団における機能強化、機能低下の抑制、身体的移動性の促進に役立つであろう。我々は、RETによる骨格筋肥大を制御するメカニズムについて、最新のエビデンスに基づいた見解を提供する。

✅ 内部変数の詳細:Internal variables
■ メカノトランスダクション
・メカノトランスダクション(機械的シグナル伝達)は、機械(物理的など)力に対して特異的細胞応答を誘発する生化学的シグナルへの変換を通じて、細胞が感知、解釈、および応答する複数の段階からなる生物学的プロセス。
・骨格筋でいえば外部刺激として、RE は骨格筋の機械的負荷をもたらした場合の、骨格筋が「感知」して肥大に至る反応を開始するメカニズムのこと
・いくつかのタンパク質複合体は、筋線維収縮中に分子トランスデューサーとして機能するメカノセンサーの候補として特定されている
■ mTORシグナル伝達経路の活性化
・mTOR 複合体には、哺乳動物の 2 つのタンパク質複合体、mTORC1 および mTOR 複合体 2 (mTORC2) の中心となるセリン/スレオニンキナーゼが含まれる。
・mTORC1 による筋タンパク質合成の増加は、骨格筋肥大との関連で注目されている
■ リボソーム生合成
・リボソームは、タンパク質と RNA を含む (リボソーム RNA–rRNA) 分子機械であり、タンパク質の翻訳に不可欠な役割を果たす
・リボソームの生合成は、抵抗運動トレーニングによって誘発される骨格筋肥大の調節因子として浮上している
■ トランスクリプトーム応答
・骨格筋適応の分子トランスデューサーを理解する上でグローバルで偏りのない視点を提供する「オミクス」技術の出現により、運動が2000を超える遺伝子転写産物(45,000の既知の遺伝子の可能性がある)の豊富さの変化をもたらす
・最近、ヒトの慢性的な筋肉負荷に対する筋肉成長反応と相関する 141 個の遺伝子のセットを発見された
■ 筋肉損傷の再誘発
・筋肉の損傷は、骨格筋の炎症メディエーターを大幅に増加させ、衛星細胞の活性化を誘発し、筋肉の再生プロセスに影響を与える可能性がある
・RE によって誘発される筋肉損傷を評価するためのゴールド スタンダードな方法は、z バンド ストリーミングや筋肉の腫れ (浮腫) などの超微細構造の変化を調べること

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

論理的思考のフレームワークとして、『チャンク化』『MECE』、という考え方がある。

✅ チャンク化とMECEとは?
チャンク化とは、似たような情報を一括りにグループ化・塊化すること。
たとえば、白菜、ネギ、にんじん、キャベツを「野菜」として1つの塊化すること。
MECEとは、1つの大きな領域をいくつかの区分に明確に分けて、互いに重複せず、全体として漏れがないという状態。
例えば、チャーハンはご飯、グリーンピース、にんじん、卵、チャーシューからできていて、それ以外はない、という状態。

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チャンク化 & MECEによって何が起こるか?

一度に対峙しなければならない情報量が圧倒的に少なくなる

マジカルナンバー7±2という考え方がある。
ひとが、一度に対峙できる情報量(ワーキングメモリ)は7±2個ほどであるらしい(📕Miller, 1994 >>> doi)。

僕たちは、雑然と並んだ14個には辟易としてしまう。
だが、7個ずつ梱包された、2つなら扱える。
1対2をしたあとに、1対7をするなら勝てるというわけだ。

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今回の論文は、筋肥大力を規定する変数を「外部変数」と「内部変数」の大きく2つに大別した。
さらに、その下位変数としていくつかの要因を提案している。
筋肥大力という広大な海のような領域に対して、チャンク化(フォルダ化)されたFocusを徐々に下っていけば、ワーキングメモリ崩壊を起こさずに、混沌にならずに、情報が整理されてゆくだろう。
真の意味で、しっかり整理したい。

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