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身体活動 (走る)により、腱鞘の滑液が増加する可能性

📖 文献情報 と 抄録和訳

身体活動によって足首の腱鞘の滑液が増加する:MR基準の調整が必要である

📕De Maeseneer, Michel, et al. "Physical activity increases synovial fluid in ankle tendon sheaths: an adjustment of MR Criteria is needed." Surgical and Radiologic Anatomy (2023): 1-7. https://doi.org/10.1007/s00276-022-03068-6
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[背景・目的] ランニングの前後で足首の滑膜鞘の液量を比較すること。我々の仮説は、この量は増加し、通常許容される閾値を身体活動後に調整する必要があるというものであった。

[方法] 健常者21名(n = 42足首)がトレッドミルで40分間走った。ランニングの前後に足首専用コイルを用いた3T-MRIを実施した。画像は保存され、その後、標準化された方法で測定され、後側および下側領域の腱鞘の液体量(ml)を2人の読影者が独立して読み取った。統計は、各腱について(Wilcoxon符号付き順位検定)、またプールされたデータについて行われた。クラス内相関係数を算出した。

[結果] 読者1では、すべての腱で、走行後の値が統計的有意差に達することなく増加した。読者2の場合、すべての腱でそうなったわけではなく、ほとんどの腱でそうなった。すべてのデータをプールした場合(n = 800測定)、ランニング前後の統計的な差は有意でした(p < 0.001)。

[結論] ランニング前後のデータでは、滑液が増加する傾向が見られたが、個々の腱では有意な差は見られなかった。全腱を対象としたプールデータ(n = 800)では、ランニング後に統計的に有意な増加が見られた(p < 0.001)。臨床的な意味合いとしては、最近体を動かした後にMR検査を受ける場合、通常許容される滑液の閾値を調整する必要があるということ。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ウォーミングアップって、なぜ必要なのだろう?
何回か膝の屈伸をしてから歩き出すと、なぜスムーズなのだろう?

当たり前のように享受している、ウォーミングアップや事前運動による利得だが、その仕組みを問われると、薄ら笑いを浮かべることしかできない。
だが、今回の論文によって、1つの光明を得た。
運動によって、「滑液量」が増大するという。

それは、臨床的解釈として、何を示唆するだろう。
この論文中の考察では、「運動後にMRI撮影するときには、滑液量が増大するから病的な滑液量かどうかの解釈に注意が必要だ」と、ややネガティブな臨床解釈に用いている。

僕は、この論文を見て感じたことは、「運動が身体のKURE 5-56(金属などの潤滑剤)を付与する」だ。
滑液は、関節運動や腱-腱鞘間の潤滑剤としての役割がある。
その滑液量が増大する → 接触物間の摩擦軽減、に寄与していそうだ。
そして、冒頭に示した疑問の解答になりうる。

つまり、ウォーミングアップによって滑液量が増大することでミクロな摩擦が軽減され、運動がスムーズになる。
何回か膝の屈伸をすると、もしかしたら膝の滑液量がやや増大したり、分布が変わったりして、結果的に関節運動の摩擦が軽減して、運動がスムーズになる。
しばしば、患者さんとこんな話になる。

患者:「膝がギーギー鳴るね。油差してくれる?笑」
:「そうですね。KURE 5-56を持ってきますね 笑」

身体のKURE 5-56、すなわち滑液は、運動によって湧き出る可能性がある。
だから、理学療法士による運動処方は、ある意味で、真にKURE 5-56を持ってくることなのかもしれない。

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