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ビタミンCと筋肥大。欠損で萎縮, 補充で完全回復

📖 文献情報 と 抄録和訳

ビタミンCは骨格筋の機能維持に不可欠である

📕Takisawa, Shoko, et al. "Vitamin C Is Essential for the Maintenance of Skeletal Muscle Functions." Biology 11.7 (2022): 955. https://doi.org/10.3390/biology11070955
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🔑 Key points
- 以前、ビタミンC(L-アスコルビン酸、VC)の長期欠乏により、ヒトと同様の筋萎縮と身体能力の低下が起こることを、VC合成を欠損させた雌の老化マーカータンパク質-30(SMP30)欠損マウスを用いて報告している。
- 今回、これらの知見が雄のSMP30欠損マウスでも当てはまるかどうかを調べたところ、雄のSMP30欠損マウスでも長期のVC欠乏により筋萎縮と身体能力の低下が起こることがわかった。
- 興味深いことに、VCの補充により、筋萎縮と身体能力の低下が完全に回復した。
- このように、VCはオス・メス両方のマウスにおいて骨格筋の機能維持に必須であることがわかった。

[背景・目的] ビタミンC(L-アスコルビン酸、VC)は、コラーゲンの重合に不可欠な水溶性の抗酸化物質である。以前、我々はVCの長期欠乏により、ヒトと同様にVCの合成ができない雌の老化マーカータンパク質-30(SMP30)欠損マウスを用いて、筋肉の萎縮と身体能力の低下が起こることを報告した。

[方法] 雄のSMP30欠損マウスにも当てはまるかどうかを調べるため、2ヶ月齢の雄のSMP30欠損マウスを2つのグループに分け、1.5 g/L VC投与群(VC(+))とVC未投与群(VC(-))に水を供給してVCを投与させた。

[結果] 4週間後の腓腹筋のVC濃度は、VC(+)群205.7 ± 8.5 nmol/g組織、VC(-)群13.1 ± 0.6 nmol/g組織であった。このように、VC未投与群では4週間で骨格筋のVC濃度を十分に低下させることができた。

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✅ 図1.腓腹筋のVCレベル。(A)実験手順。マウスは2ヶ月齢まで1.5g/LのVCを水に溶かして飲んだ。その後、マウスを2群に分けた。VC処理群(VC(+))とVC未処理群(VC(-))に分けた。VC(+)群は1.5 g/L VC入り水を、VC(-)群はVCなしの水を16週間飲ませた。(B)4週間後の腓腹筋のVC総量。数値は5匹の平均値±SEMで示した。

VC(-)投与群の腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋、前脛骨筋、長趾伸筋の筋重量は、12週間後のVC欠乏により有意に減少していることがわかった。8週目のVC(-)群の身体的持久力はVC(+)群に比べ顕著に低下した。VC(-)群はVC(+)群に比べ、12週目および16週目の夜間相のケージ内での把持力および活動性が著しく低下していた。

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✅ 図2. VC欠乏時の骨格筋重量。8週、12週、16週において、VC(+)群、VC(-)群それぞれn=5と5、n=10と10、n=9と15匹のマウスで比較。

興味深いことに、VC欠乏後12週間のVC補充により、筋萎縮と身体能力の低下が完全に回復した。

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✅ 図3.VCの補給は筋萎縮を逆転させた。(A)実験手順。マウスは生後2ヶ月まで1.5g/LのVCを水に溶かして飲ませた。その後、マウスを2群に分けた。VC処理群(VC(+))とVC未処理群(VC(-))に分けた。VC(-)マウスは12週間VC無添加の水を飲み、その後1.5g/L VCを12週間飲んだ(VC(-)→(+))。VC(+)マウスは1.5g/L VCを24週間飲んだ。(B)24週目の腓腹筋のVC濃度。VC(+)群n=8匹、VC(-)→(+)群n=10匹のマウスを観察。(C)24週目の骨格筋重量。VC(+)群n=8匹、VC(-)→(+)群n=10匹のマウス。

[結論] このように、VCは、VC合成を欠くSMP30欠損マウスの雌雄ともに、骨格筋の機能維持に必須であることがわかった。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ビタミンCは、水溶性ビタミンである。
ビタミンには脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンがあり、それぞれに注意点が異なる。

✅ 脂溶性ビタミンと水溶性ビタミン
- ビタミンは脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに大きく分けられる。
- 脂溶性ビタミンは体内に蓄積されやすいので、欠乏症が起こりにくい反面、大量にとった場合過剰症が起こることがある。
- これに対し、水溶性ビタミンは熱に弱く、水に溶けやすく、多く摂取しても尿中に排泄されるため欠乏症になりやすい。一方で過剰症のリスクは低い
🌍 参考サイト >>> site.

すなわち、ビタミンCは過剰に摂取して良いビタミンと言えるかもしれない。
そして、以前、ビタミンCは疼痛緩和にも威力を有する抄読をしたように、効果は多様だ。

百益あって、一害なしの栄養素と捉えてよいと思っている。
そして、今回のビタミンCの威力はまさに、理学療法士にとってメインステージ「筋肥大」。

今回の結果によれば、ビタミンCが満たされていないことは筋萎縮リスクを高める。
筋機能の改善を前提としたリハビリにおいて、このビタミンCが欠落していることは、水を溜めようとするバケツの底が抜けていることに近いかもしれない。
病院食にレモンを必須にする、ビタミンC錠剤をつけるなど、栄養面からリハ効果にフォローできるかもしれない。

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