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世界の200個のガイドラインを統合した、最強の脳卒中ガイドライン

📖 文献情報 と 抄録和訳

世界脳卒中機関を代表して、世界的な脳卒中ガイドラインの体系的なレビューと統合

📕Mead, Gillian E., et al. "A systematic review and synthesis of global stroke guidelines on behalf of the World Stroke Organization." International Journal of Stroke (2023): 17474930231156753. https://doi.org/10.1177/17474930231156753
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[背景・目的] 世界中で複数の脳卒中ガイドラインが存在する。 これらを総合し、既存の脳卒中ガイドラインが脳卒中患者の管理について推奨していることを要約するために、世界脳卒中機関 (WSO) の後援の下、世界脳卒中機関 (World Stroke Organization, WSO) ガイドライン委員会は利用可能なガイドラインを検討しました。
●目的:2011 年 1 月 1 日以降の脳卒中ガイドライン (脳卒中の一次予防およびクモ膜下出血を除く) を特定するために文献を系統的にレビューし、品質を評価し (ガイドラインの国際評価、研究および評価 (AGREE II))、強力な推奨事項を表にまとめ、以下に従って適用性を判断する。 脳卒中ケアが利用可能(最小限、必須、高度)。

✅ 今回の研究に至った背景
・2014年、Lindsayらは、The international Appraisal of Guidelines, Research and Evaluation(AGREE II)ツールの6つのドメインのうち2つ(RigorとEditorial Independence)で60%以上のスコアを獲得した10の脳卒中ガイドラインからの推奨に基づいて、Global Stroke Services Action planを作成した(📕Lindsay, 2014 >>> doi.)
・2021年、WSO理事会は、既存の脳卒中ガイドライン・品質委員会に、グローバルガイドラインの統合を更新することを命じた。
・WSO理事会の承認を得て、システマティックレビューとガイドライン作成の専門知識を持つ共同委員が、性別、年功序列、場所によってバランスをとりながら、オープンコンペで追加された。

✅ このレビューの特徴:3つの所属施設レベルに応じたガイドライン統合
・国や地域によって医療提供の状態が異なる可能性があることを考慮し、先進的(Advanced stroke services)、必須(Essential service level)、最小限のサービス(Minimal level of resource availability)において適用可能かどうかを判断した。

[レビューの概要] 検索により 15,400 タイトルが特定された。 911 のテキストが検索され、200 の出版物が 3 つのサブグループ (急性期、二次予防、リハビリテーション) によって精査され、関連ガイドラインの最新版から推奨事項が抽出された。 急性治療に関して、二次予防についての推奨事項は本文参照のこと。リハビリテーションの推奨事項については、抄読者が抜粋し、3つの所属施設レベルすべてで推奨される事項、かつ理学療法士にとって重要と思われた部分を以下に抜粋した。

■ 病院でのケアの組織とリハビリの原則
・患者、家族、介護者の教育は、公式、非公式に行うべきである。
・患者およびその家族との個人を中心とした協力的な目標設定が推奨され、明確に伝達され、文書化され、ケアの移行期を含め、定期的に見直される。

■ 有酸素運動
・心肺機能を高め、認知機能を向上させるために、大きな筋肉群を使った個別指導の有酸素トレーニング(心拍数と血圧をモニタリングしながら)を包括的な脳卒中リハビリテーションプログラムに取り入れるべきである。
・運動は、最低でも週3回、最低でも8週間続ける必要があり、耐久性に応じて、ウォームアップとクールダウンを除いて1回あたり20分以上行うようにする。
・患者、医療従事者、家族、環境に関連した身体活動に対する特定の障害に対処するための戦略を用いる。
・脳卒中後遺症のある人に処方された薬に関するアドバイスを提供する
・脳卒中後の人々、その家族、介護者に対し、脳卒中への感情的適応に関する支援と教育を行い、心理的ニーズが時間や環境に応じて変化することを認識する。

■ 特定の障害:上肢と下肢
・座ることが困難な脳卒中患者には、監督や援助を受けながら、座ったまま腕の長さ以上に手を伸ばす練習をする。
・椅子から立ち上がることが困難な脳卒中患者には、立ち上がる練習をさせるべきである。
・立つことが困難な脳卒中患者には、バランス感覚を養うための活動を提供する必要がある。
・足首から足にかけての装具は、適切な評価と有効性を確認するためのフォローアップを行った上で、足が下がっている特定の患者に使用されるべきである。

■ 退院と継続的なケア
・退院前に、患者および家族・介護者と医療・社会的ケア計画について合意する;患者が安全で快適な家庭環境を持っていることを確認し、介護者が必要な支援を受けていることを確認する。
・構造化された有酸素運動(病院内)から、自宅や地域社会でのより自主的な身体活動への計画的な移行を実施する必要がある。

ほとんどの勧告は高所得国からのものであり、そのほとんどは併存疾患、資源への影響、および実施を考慮していなかった。

[結論] このレビューでは、強いコンセンサスが得られた脳卒中治療の多くの分野が特定された。 しかし、ガイドラインの推奨事項には広範な重複と冗長性があった。 将来のガイドライングループは、効率を向上させるために緊密な協力を検討し、開発プロセスに実際の経験を持つより多くの人々を参加させ、併存疾患を考慮し、実装についてアドバイスする必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

医学は不確実性の科学であり,確立のアートである
Medicine is a science of uncertainty and anart of probability.

Guyatt, G. H. "Evidence-based Medicine ACP Journal Club."

世の中には、1つ1つの事実(1つのOriginal research)が夜空に浮かぶ星の数ほどは存在している。
そして、それら1つ1つの事実は、数多の色眼鏡や偏りといった、バイアスを含んでいる。
それらを考慮した上で、より確実に近い真実を編んでいく。
それがレビュー論文や、ガイドライン編集、といった作業だと思っている。

今回のガイドラインは、質の高いガイドラインを選抜し、世界中の200個のガイドラインを編んだ、現時点での最終形態とも呼ぶべきガイドラインだと思う。
そこで強く推奨されていることは、やろう、少なくともやることを検討しよう。

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