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椎体圧迫骨折後の介護度悪化

📖 文献情報 と 抄録和訳

椎体圧迫骨折後の死亡率、鎮痛薬の使用、および必要なケア:18,392人の高齢者の後方視的コホート研究

📕Honda, Akira, et al. "Mortality, Analgesic Use, and Care Requirements After Vertebral Compression Fractures: A Retrospective Cohort Study of 18,392 Older Adult Patients." JBJS (2024): 10-2106. https://doi.org/10.2106/JBJS.23.01438
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar, プレリリース 【🇯🇵】
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[背景・目的] 高齢者の椎体圧迫骨折(VCF)は、日常生活動作能力の悪化により、健康上・社会経済的に大きな負担をもたらす。VCFが患者の転帰に及ぼす長期的な影響、特に鎮痛剤の長期使用や機能低下については不明な点が多い。本研究の目的は、長期的な臨床転帰を検討し、VCF後の持続的な疼痛と機能障害の危険因子を明らかにすることである。

[方法] この後方視的コホート研究では、大東京圏の郊外県の請求データを用いて、高齢者のVCFにおける死亡率、鎮痛薬使用期間、要介護度の変化を評価した。国際疾病分類第10改訂版(ICD-10)コードに基づいて判断した、65歳以上で2014年6月~2019年2月の間にVCFと診断された患者を対象とした。画像検査を受けたかどうかを判断できる請求データも用いた。VCF診断後1ヵ月以内に外来受診を中止した患者は除外した。

[結果] 対象はVCF患者18,392人で、平均年齢は80歳であった【🇯🇵】。患者の76%は女性で、追跡期間の中央値は670日であった。VCFと診断された時点で、3,631人(19.7%)が介護依存であった。全体で968人(5.3%)が1年以内に死亡した。鎮痛薬を投与された患者8,375人のうち、22%が4ヵ月以上鎮痛薬を必要とした。1年以上の長期鎮痛薬使用と関連する因子は、女性(オッズ比[OR]、1.39[95%信頼区間(CI)、1.16~1.65])、胸腰部のVCF(OR、1.95[95%CI、1.50~2.55])または腰部のVCF(OR、1.59[95%CI、1.23~2.04])であった(基準は胸部)。1,510人(8.2%)の患者の要介護度が1年以内に増加した。「骨折前介護度あり」の患者では、介護度悪化のリスクが、指標診断時に自立していた患者(3.0%[14,761人中450人])よりも10倍高かった(30.2%[3,509人中1,060人])(p<0.001)

図は、椎体圧迫骨折(VCFs)後の介護度の悪化の累積確率を示すKaplan-Meier曲線である。
データは、介護度の前提条件に基づいて骨折前介護度なしと骨折前介護度ありに分類されている。

[結論] 介護依存の既往がある人は、自立していた人よりもVCF後に機能低下を経験する可能性が高く、これは介護依存患者に対する医療資源の集中的かつ適切な配分の必要性を強調するものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

同じ圧迫骨折を受傷した患者さんの中でも、ぐんぐん良くなる方、そうでない方、様々である。
その要因には、多数あるのだろうが、今回の抄読研究はその1つを明らかにしてくれた。
その要因が『骨折前の介護度の有無』である。
骨折前に介護度を有していた患者は、骨折後の介護度悪化リスクが10倍高くなるという。

介護度を有するということは、日常生活において何らかの支援を必要とする状態。
当然、骨折後の活動性はさらに落ちやすいことが推察される。
活動性が落ちれば、入院関連機能不全によって、さらに廃用が進み、動作能力は落ちるかもしれない。
入院してきた時点での介護度の有無は毎回確認するので、介護度を持っている圧迫骨折患者さんの機能低下には特に注意していきたい。

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