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健康の社会的決定要因と心血管疾患との関係を示す1つの図

📖 文献情報 と 抄録和訳

心血管疾患の社会的決定要因

📕Powell-Wiley, Tiffany M., et al. "Social determinants of cardiovascular disease." Circulation Research 130.5 (2022): 782-799. https://doi.org/10.1161/CIRCRESAHA.121.319811
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✅ 前提知識:健康の社会的決定要因とは?
健康の社会的決定要因(Social determinants of Health: SDOH)
・人々が成長し、生活し、働く社会的条件のことで、人種や民族、幼児期の発達、性的指向、教育、所得、食料安全保障、住宅、交通、医療へのアクセスなどの具体的な要因が含まれる
・一部のモデルでは、社会的、経済的、環境的要因とそれらが引き起こす行動パターンが健康アウトカムの80%以上を占め、医療が占める割合はわずか20%であると推定されている

[レビューにおける図の説明]

● 図の題目:健康の社会的決定要因および逆境の生物学
● 健康の社会的決定要因の概要
・個人の経済的安定性、近隣環境、建築環境、教育へのアクセス、医療へのアクセス、社会的・地域的関係などが含まれる。
● 慢性的な心理社会的・環境的ストレッサー
・これらの領域は、社会経済的地位の低さ、安全でない住宅、近隣の暴力、医療へのアクセスの制限、幼児期の逆境、差別、騒音への暴露の増加、食糧不足、睡眠の質の低下などに苦しむ個人にとって、慢性的な心理社会的ストレスの源となる。
■ 慢性炎症への経路
・逆境がもたらす生物学的結果は、慢性炎症への経路を促進する。
・神経造血軸:慢性的な扁桃腺の活性化は、おそらく交感神経系(SNS)の骨髄への直接的な神経支配によって、クローン性造血に関連している。ストレスによる白血球の増加は、動脈硬化性プラークに直接関連している。
・交感神経-副腎髄質(SAM)軸と視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸:SAM軸とHPA軸は心理社会的ストレスによって活性化し、それぞれカテコールアミン(ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン)とグルココルチコイドの生成を制御している。
・慢性ストレス下でのグルココルチコイドとカテコールアミンの情報伝達:(1) グルココルチコイド受容体(GR)は、慢性ストレス下で核内転位障害と抗炎症遺伝子転写の減少を示す。(2) β-アドレナリン受容体(AR)は、遺伝子シグナルを非正規経路(β-アレスチン2足場経由)に変更し、炎症性サイトカインの産生を高め、NLRP3(NLR family pyrin domain-containing 3)インフラマソーム活性も上昇させることが分かってきた。また、β3レセプターは、動脈硬化性プラークの形成に寄与すると考えられるクローン性造血に関与していることが判明している。
● 心血管疾患の発症と進行
・これらの炎症過程はすべて、肥満、高血圧、糖尿病、動脈硬化などの心血管疾患(CVD)危険因子の増加につながり、最終的に主要な有害心疾患(MACE)やCVD死亡の原因となる。
※ 略語:ACTHは副腎皮質刺激ホルモン、AP-1は活性化タンパク質-1、CREBはcAMP応答要素結合タンパク質、CRHはコルチコトロピン放出ホルモン、MAPKはマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ、NF-κBは核因子κ-光鎖-活性化B細胞エンハンサー、SNSは交感神経系を示している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

これまで、SDOHについてはいくつかの論文を抄読してきた。
これまでの切り口は、主にSDOHと活動・参加との関連を明らかにした研究だった。
例えば、環境要因としての犬は参加のトリガーとなる。

ただ、SDOHがどのようなプロセスで疾病リスクなどの健康アウトカムと繋がってくるのか具体的に理解できていなかった。
その中で、今回の論文における1つの図は、SDOHの問題がどのようなプロセスで疾病リスクにつながるかを美しいグラフィックで示してくれた。
SDOHがストレッサーとなり、慢性炎症を引き起こし、それが結果として心血管疾患リスクになるという。
SDOHへの理解、だんだんと深まってきた…。

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