大腿骨近位部骨折患者におけるFIMのMCID
📖 文献情報 と 抄録和訳
股関節骨折の高齢者における機能的自立度測定の臨床的に重要な最小限の差異
[背景・目的] 入院リハビリテーションを受ける股関節骨折高齢者において、臨床医の立場から機能的自立度測定法(FIM)の反応性と臨床的に重要な最小限の差(MCID)を検討した。
[方法] 当院のリハビリテーション施設に入院中の股関節骨折高齢者701名のデータを後方視的に収集した。
<MCIDの算出:分布法>
・分布に基づく方法に関しては、入院時と退院時のアウトカム測定値間の対の標本のt検定と、Cohenのd ESで評価される治療効果の大きさを考慮した。
・ES=0.2は小さな差、0.5前後は中等度、0.8以上は大きな差を表す。
・スコア-またはサブスコア-がES < 0.2を示し、入院と退院の差が無視できることを示唆した場合、次の分析では考慮しなかった。
<MCIDの算出:アンカー法>
・アンカーに基づく方法の場合、MCIDはFIMの変化スコアを外部アンカーと比較することによって推定された。
・FIMスコアとの相関が少なくとも中程度(≥0.40)であれば、BI、FACスコア、および移乗者チェックリストの質問のMCIDを外部アンカーとして使用した。
・移乗のチェックリストの質問で「はい」にチェックが入った者は「自立」、「いいえ」は「非自立」に分類された。
・FACスコア<3または≧3の場合、それぞれ「非機能的歩行者」または「機能的歩行者」に分けられた
・BIスコアは先行研究によるMCID値7.1によって、改善、非改善を区分。
・三角測量は異なるアプローチからの結果を統合し、MCIDの算術平均の計算に相当する
・アンカーベースと分布ベースの方法から得られたMCIDと95% C.I.をプロットし、三角測量した。
[結果] 治療後のFIMスコアの効果量は大きかった(total = 1.38, motor = 1.78)。FIMの変化点合計とBarthel Index (BI), rs = 0.51, Functional Ambulation Categories (FAC), rs = 0.52, 移乗の自立度に関するチェックリストとの間に中程度の相関が認められた(rs = 0.59).また、BI、FAC、チェックリストをアンカーとした場合の受信動作特性下面積は、それぞれ0.82、0.81、0.85であった。これらの結果から、FIMは高い反応性を示した(9/10の仮説を満たした)。また、MCIDは、FIMの総得点で22点、運動スコアで21点が最も適切であることが示された。
[結論] FIMスケールは股関節骨折高齢者の自立と機能回復を評価するのに適している。FIM総得点が40点から80点でリハビリテーション施設に入所した者において、FIM総得点で22点、運動スコアで21点の改善が最小限の臨床的変化の指標として同定された。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
このような疑問は、すべての量的な評価尺度の結果において、考えられることだ。
それに対して、『臨床的に重要な最小限の差異(MCID)』は解釈の一助となってくれる。
今回の場合、大腿骨近位部骨折患者のFIMにおいて、1ヶ月で総得点で22点、運動項目で21点以上の向上が見られた場合、移乗、FAC、BIの視点からは良くなったと解釈できそうだ。
点数の変化への解釈にも、しっかりとした根拠をもっていきたいものだ。
⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨
○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓
‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●○
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び