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2型糖尿病者のサルコペニア評価。握力より椅子立ち上がりテストが優れるかも


📖 文献情報 と 抄録和訳

2型糖尿病を有する成人における握力または椅子立ちのパフォーマンスによるサルコペニアの有病率

📕Belfield, Archie E., et al. "Sarcopenia prevalence using handgrip strength or chair stand performance in adults living with type 2 diabetes mellitus." Age and Ageing 53.5 (2024): afae090. https://doi.org/10.1093/ageing/afae090
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[背景・目的] 高齢者サルコペニアに関する欧州作業部会(EWGSOP2)の最新版では、筋力評価として握力(handgrip strength, HGS)と椅子立ち上がりテスト(chair stand test, CST)を推奨しており、CSTは下肢筋力の便利な代用法である。しかし、脂肪率はこれらの筋力基準に異なる影響を与え、サルコペニアの有病率にばらつきを生じさせる可能性がある。目的:2型糖尿病の成人において、HGSまたはCSTを用いてサルコペニアの有病率を明らかにし、これらの筋力基準と脂肪率との関連を検討すること。

[方法] EWGSOP2定義を用い、probable(筋力低下)、confirmed(筋量低下)、severe(身体能力低下)のサルコペニアの有病率を評価した。線形回帰モデルを用いて、筋力のさまざまな指標と脂肪率との関連を検討した。

[結果] 2型糖尿病の成人732名(女性35.7%、年齢64±8歳、肥満度30.7±5.0kg/m2)のデータを用いた。HGSと比較してCSTを用いると、probableサルコペニア(31.7%対7.1%)、confirmedサルコペニア(5.6%対1.6%)、severeサルコペニア(1.0%対0.3%)の有病率が高く、可能性の高いサルコペニアを同定する強度基準の一致度は低かった。

この図は、732人の参加者におけるサルコペニアの有病率を示している。サルコペニアの診断には、握力(HGS)、椅子立ち上がりテスト(CST)、またはこれらの組み合わせ(both)を使用している。図は、筋力の低下(probable)、筋肉量の低下(confirmed)、および身体機能の低下(severe)を評価している。

CSTの成績は、HGSではなく、非調整および調整モデルにおいて脂肪率のすべての指標と有意に関連していた。

この図は、BMI、腹囲(WC)、体脂肪率(FM)、および脂肪質量指数(FMI)の四分位範囲ごとに、握力の調整推定平均値を示している。
この図は、BMI、腹囲(WC)、体脂肪率(FM)、および脂肪質量指数(FMI)の四分位範囲ごとに、椅子立ち上がりテストの調整推定平均値を示している。

[結論] 脂肪率の高さはCSTの成績に影響を及ぼすがHGSには影響を及ぼさず、その結果、2型糖尿病成人におけるサルコペニアの有病率が高くなる可能性がある。このような集団では、筋機能の最も適切な測定法を考慮すべきである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

高齢者サルコペニアの筋力評価として推奨される握力と椅子立ち上がりテスト。
そのどちらがサルコペニア診断において優れる指標なのだろうか。
今回の抄読研究は、その疑問に1つの答えを与えてくれた。

研究の結果として、椅子立ち上がりテストがサルコペニア有病率に大きな関わりを示し、その理由としてサルコペニア有病に影響を与える脂肪関連指数との関わりが強いことが示された。
同じく推奨されている握力と椅子立ち上がりテストにおいて、これだけの違いがあることに驚いた。
目的に対して使用している検査が適切なのかどうか、その視点を忘れず、確かめる重要性を学ばせてもらった。

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