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最強の院内転倒予防策。明らかになった『教育』の威力

📖 文献情報 と 抄録和訳

病院での転倒を減らすための介入策:システマティックレビューとメタ分析

📕 Morris, Meg E., et al. "Interventions to reduce falls in hospitals: a systematic review and meta-analysis." Age and ageing 51.5 (2022): afac077. https://doi.org/10.1093/ageing/afac077

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 転倒は依然として世界中の病院でよく見られる衰弱させる問題である。本研究の目的は、転倒予防のための介入が病院での転倒率および転倒リスクに対してどのような影響を及ぼすかを調べることであった。

[方法] デザイン:システマティックレビューおよびメタ分析。参加者:入院中の成人介入予防法には、スタッフや患者の教育、環境の改善、補助器具、方針とシステム、リハビリテーション、薬物管理、認知障害の管理などが含まれた。単一要因アプローチと多因子アプローチを評価した。アウトカム評価:転倒率比(率比:RaR)および転倒リスク(介入群と対照群の転倒者である確率で定義)(オッズ比:OR)。

[結果] システマティックレビューの基準を満たす研究は43件、メタアナリシスの対象となったのは23件であった。介入方法と研究デザインには著しい異質性があった。メタ分析で有意な結果を得た唯一の介入は教育であり、転倒率(RaR = 0.70 [0.51-0.96], P = 0.03)および転倒のオッズ(OR = 0.62 [0.47-0.83], P = 0.001)を減少させた

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✅ 図. 転倒率(a)転倒リスク(b)に対する教育の効果;メタアナリシスの結果

メタアナリシスにおける患者教育および職員教育の研究は、GRADEツールで高い品質であった。システマティックレビューの個々の試験では、臨床医教育、いくつかの多因子介入、選択的リハビリテーション療法、およびシステムについて、バイアスリスクが低~中程度であることを示すエビデンスが示された。

[結論] 患者教育および職員教育は病院での転倒を減らすことができる。多因子介入はプラスの影響をもたらす傾向があった。椅子アラーム、ベッドアラーム、ウェアラブルセンサー、スコア化されたリスク評価ツールの使用は、転倒の有意な減少に関連しなかった。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

突然だが、ガンダムが転んだとしよう。
そのとき、『機械』に原因があると思う?
それとも、『操縦者』に原因があると思う?

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ある基準までは、前者も大事だろう。
だが、メインは後者であることが多い。
どんなに高性能な機械であろうと、いやむしろ高性能であるほど、使い手を選ぶ。
ハードよりソフト。機械より人。
院内転倒の防止策において、それが明らかになった❗️
今回抄読した論文の中で、リハビリテーションは効果が有意でなかったのに対し、『教育』は唯一効果を認めた。
言い換えれば、ハードへの介入は効果を得ず、ソフトへの介入のみ功を奏した。

さて、実施に向けて重要なことは、方法の詳細を知ることだ。
今回、特に高品質と評価されたLancet誌掲載のHillらの論文をミニレビューし、患者教育の詳細に迫った。

✅ Hillらによる患者教育 & スタッフ教育の詳細
- 患者に個人の転倒リスクを知らせ、転倒疫学と転倒予防に関する知識を高め、転倒予防策に取り組むよう動機付けることを目的としていた
【患者教育】
- 教育担当者は、各病棟の臨床担当者2名とともに、試験研究者(TPH)が実施する6時間のオンラインビデオ会議ベースのトレーニングを受講した
- プログラムの患者側の構成は、マルチメディア教育パッケージ(デジタルビデオディスク[DVD]と文書によるワークブック)と、教育担当者による個別に調整されたフォローアップセッションから構成されていた
- 各患者はベッドサイドでDVDを鑑賞し、ワークブックを受け取り、復習して保管した。その後、教育担当者は、患者さん一人ひとりの状況に合わせてフォローアップのセッション(2~4回のセッションで約30分)を行った。
- 教育者は、患者が転倒のリスクを減らすための個人的な目標を設定し、行動計画書を完成させるのを支援した(例:歩行時には常に移動補助具を使用する)
【職員教育】
- ユニットでの介入開始週に行われた対面式のスタッフトレーニングで構成されていた。
- この研修では、スタッフが患者が受ける教育の種類を理解できるよう、プログラムに関する情報を提供した。
- また、教育担当者は、毎週、病棟のスタッフ個人とグループに対してフィードバックを行った。
- このフィードバックでは、患者さんが設定した目標や、患者さんが選んだ転倒予防策に取り組む能力に影響を与えると思われる障害(病棟の環境など)に関する情報がスタッフに伝えられた。
- 例えば、教育セッション中に、患者さんが移動補助器具がベッドサイドの手の届くところに置かれていないと報告した場合、教育係はスタッフに警告を発した。
- スタッフは、患者がアクセスするのに適した場所に移動補助具が置かれるようにした。
📕 Hill, Anne-Marie, et al. The Lancet 385.9987 (2015): 2592-2599. >>> doi.

当たり前のこと。
僕たちが相手にしているのは、機械ではない。
だから、機械的なものだけを相手にせず、人を相手にしたい。
人を相手にした介入について、直感的にではなく、もっと、科学したい。

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