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慢性疼痛のコスト


📖 文献情報 と 抄録和訳

慢性疼痛のコスト-長期的推計

📕Stubhaug, Audun, et al. "The costs of chronic pain—Long‐term estimates." European Journal of Pain (2024). https://doi.org/10.1002/ejp.2234
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[背景・目的] 慢性疼痛は、仕事、機能的能力、生活の質など、生活の様々な側面に深刻な影響を及ぼす疾患であり、身体的、精神的、社会的幸福を低下させる。慢性疼痛は有病率が高く負担が大きいにもかかわらず、研究や公共政策において注目されることは少なく、慢性疼痛の社会的コストはほとんど知られていない。本研究では、自認する慢性疼痛を持つ人と持たない人の長期的な医療費と休業コストを明らかにすることを目的とした。

[方法] 研究対象者は、ノルウェーの2つの集団健康調査(HUNT3およびTromsø6)の参加者である。参加者は、2008年の健康調査における慢性疼痛に関する質問に対する自己申告に基づき、慢性疼痛を有すると定義された。研究集団の個人は、医療資源の利用と欠勤に関する4つの全国登録データベースにリンクされた。

[結果] 本研究では、36%(n = 63,782)が慢性疼痛を有すると自己申告し、平均年齢は56.6歳であった。2010年から2016年までの慢性疼痛の有無による費用の差は、1人当たり55,003ユーロ(CI:54,414-55,592, ※日本円で約949万円)であった。これを全人口に外挿すると、慢性疼痛はGDPの4%の年間負担を課していることになる。コストの80%は生産性の損失と推定された。

[結論] 本研究から得られた知見は、慢性疼痛患者による医療利用と生産性低下の程度をより深く理解し、リハビリテーションやケアの質の向上、慢性疼痛の負担に関する一般市民への教育の重要な基礎となるものである。意義本研究は、リンクされた個人レベルの行政データと自己申告による調査回答を用いて、一般人口における慢性疼痛に関連する経済的負担を推定した初めての研究である。慢性疼痛の年間コストは120億ユーロ、GDPの4%にも上る可能性があることを示した。この研究から得られた知見は、慢性的な痛みを持つ人々の間の実質的な医療利用と生産性の損失に対する理解を深める必要性を浮き彫りにしている。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

痛みが気になって、仕事に集中ができない。
こんな経験をしたことが、誰しも一度はあるだろうと思う。
今回抄読した研究の結果によれば、慢性疼痛によるコストはとても高くつく。
7年間で、慢性疼痛の有無による一人当たりコストの違いが949万円、らしい❗️
そして、これはGDPの4%負担に相当する額で、その80%は生産性の損失によるものと推測された。

今回の論文を読んで痛みが経済に及ぼす影響は、とても大きいものであることを知った。
つまり、理学療法士として目の前の患者さんの疼痛と対峙することは、間接的に経済と対峙していることにもなる。
目の前の慢性疼痛を1つ治癒させることができたなら、7年間で949万円のコストが削減されることになるのだから。
社会的なコストも意識しつつ、臨床に邁進したい。

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