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なんだかんだ筋力。 膝OA者の病態進行と関連

📖 文献情報 と 抄録和訳

軽度および中等度変形性膝関節症患者の変形性膝関節症進行における下肢筋力の役割

Xu, Chunyan, et al. "Role of Lower Limb Muscle Strength in Knee Osteoarthritis Progression for Patients With Mild and Moderate Knee Osteoarthritis." American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation 101.5 (2022): 433-438.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

🔑 Key points
■ What is known(これまで):下肢筋力の低下は変形性膝関節症(KOA)発症のリスクファクターである。大腿四頭筋は、変形性膝関節症の発症と管理において重要な役割を担っている。筋力の向上は、KOA患者の痛みの軽減や機能の改善と関連している。しかし、KOAの進行における下肢筋力の役割を評価する際に、下位領域の軟骨と半月板の形態を定量化した研究はほとんどない。また、これまでの研究では、大腿四頭筋の筋力や半月板が動的安定性の維持に果たす役割については考慮されておらず、KOAの進行について検討されていなかった。
■ What is new(新知見):下肢筋力はKOAの進行に不可欠な役割を担っている。下肢筋力の低下に伴い、膝蓋軟骨、内側半月板、外側半月板の体積は、脛骨軟骨や体重を支える大腿骨顆の体積よりも減少した。大腿四頭筋の最大筋力が最も感度の高い筋力変数であり、外側半月板の体積と他の下位領域よりも正の相関があった。

[背景・目的] 軽度および中等度の変形性膝関節症患者を対象に、下肢筋力と軟骨・半月板の体積減少との関連について明らかにすることを目的とした。

[方法] データベースから軽度および中等度の変形性膝関節症患者170名を対象とした。等尺性筋力テストから5つの筋力変数を測定した。膝磁気共鳴スキャン(MRI)による内側および外側半月板と7つの亜領域軟骨の体積測定は、2年間の変形性膝関節症の進行の評価に使用された。

[結果] 筋力変数(最大伸筋力、最大屈筋力、正規化最大伸筋力、正規化最大屈筋力)は、伸筋/屈筋比を除き、他の下位領域よりも外側半月板体積と正の相関があった。筋力変数のうち、最大伸筋力は外側半月板体積とより正の相関があった。筋力変数と軟骨および半月板の体積との間には、ベースラインから24ヶ月後までの変化において、有意な相関は認められなかった(P > 0.05)。大腿四頭筋の最大筋力は最も感度の高い筋力変数であり、ベースラインと24ヶ月のフォローアップにおいて、他の下位領域よりも外側半月板の体積と正の相関があることが分かった。

[結論] 本研究は、軽度および中等度の変形性膝関節症患者において、下肢筋力と軟骨および半月板の体積の関係を示したものである。また、大腿四頭筋の筋力と半月板に関連した膝の動的安定性が、軽度から中等度の変形性膝関節症の進行に影響を与えるというバイオメカニカルメカニズムが示された。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

なんだかんだいって、筋力。
最新のエビデンスに触れていて、そう思う。
さて、その筋力が膝OAの病態進行に良い影響を与える仕組みとは、何だろう。
大きく2つあると思っている。

①力学的負荷分散効果:たとえば、股関節外転筋筋力の低下が膝内反モーメントの増大につながり、荷重負荷量が増大する(📕Kean, Crystal, 2015 >>> doi.)
②代謝的保護効果:たとえば、膝OA者の筋トレが膝周囲組織の代謝において異化傾向を減少させることで、膝関節を摩耗から保護する(📕Vasilceac, 2021 >>> doi.)。
変形性膝関節症なので、とりあえず膝関節伸展筋の筋トレは大事だと思ってやってます。

こんなセラピストは、ダサいだろうか。
鍵穴が明確になっていない中で、なんとなく良さそうな介入をやるのは、ダサいだろうか。どう思う?
セラピスト-患者間でもっとも大事なことは何だろう?
『効果』
効果が出るのが、一番大事だ。それは正鵠である。それ以外は余事である。
その観点から見れば、「とりあえず筋トレ」は多分、間違ってはいない。
少なくとも、鍵穴-鍵療法にこだわりすぎた結果、筋トレをやらないセラピストより、効果を出す。
一般的だろうが、部位特異的だろうが、患者にとってはどっちでもいいのだ。
冷たい頭で、効果がでる方を選ぼう。

おそらく、鍵穴-鍵療法の重要度が高まるのは、もっと高次のレベル(運動制御、運動学習など)への介入のときだろう。
たとえば、トレンデレンブルグ兆候が出ていて、中殿筋筋力が保たれているにも関わらず、とりあえず筋トレをしていても、これは良くならないかもしれない。
だが、筋力-病態間の関係性においては、「とりあえず筋トレ」は正解に近い、そうエビデンスは語っている気がする。

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