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食事-習慣連関:高脂肪食がサーカディアンリズムを乱す

📖 文献情報 と 抄録和訳

標準食および高脂肪食摂取下における迷走神経背側運動核の神経活動の日内変化について

Chrobok L, Klich JD, Jeczmien-Lazur JS, Pradel K, Palus-Chramiec K, Sanetra AM, Piggins HD, Lewandowski MH. Daily changes in neuronal activities of the dorsal motor nucleus of the vagus under standard and high-fat diet. J Physiol. 2022 Feb;600(4):733-749.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

✅ 前提知識:サーカディアンリズムとは?
- 概日リズム(サーカディアンリズム)を形成するための24時間周期のリズム信号を発振する機構。
- 生物時計とも呼ばれる。
🌍 参考サイト >>> site.
🔑 Key points
- 最近、我々は背側迷走神経複合体が自律的な概日時計の特性を示すことを発見した
- 迷走神経背側運動核(DMV)は、消化管の副交感神経支配の源であるこの複合体の実行部分である。
- ここでは、ラットDMVの発火率、固有興奮性、シナプス入力などの神経活動の日変化(いずれも深夜にピークを迎える)を明らかにする。
- さらに、短期間の高脂肪食がこれらの日内リズムを乱し、発火率の変動を高める一方で、摂食の合図に対するDMVの応答性を鈍らせることを明らかにした。
- これらの結果は、副交感神経の流出に関する日々の制御の理解を深めるとともに、その高脂肪食への依存性に関する証拠を提供するものである。

[背景・目的] 視交叉上核(SCN)は脳の主要な概日時計として機能しているが、概日時計遺伝子はSCN以外の脳のいくつかの部位でもリズミカルに発現しており、生理や行動に対して局所的な時間制御を行うことができる。最近、我々は後脳背側迷走神経複合体が強い日内時計機能を持ち、その中でも最後野と孤束路核が最も強固な時計特性を示すことを見いだした。この複合体の実行部分である迷走神経背側運動核(DMV)も日変化を示す可能性は、これまで広く研究されていなかった。DMVは、胃の運動と排出を制御する迷走神経遠心性運動ニューロンの源であり、結果として食事のサイズとエネルギー恒常性に影響を与える。

[方法-結果] 我々は、マルチチャンネル電気生理学とパッチクランプ記録を組み合わせて、1日の時間帯と食事がDMV細胞に及ぼす影響について理解するために使用した。その結果、DMVニューロンは、日中の遅い時間に自発的活動、興奮性、代謝性神経調節物質への反応性が増大し、このことは、これらのニューロンへのシナプス入力の増大と平行していることがわかった。高脂肪食は一般に概日リズムを減衰させるが、我々は高脂肪食の摂取が逆説的にDMVニューロンの活動の日内変動を増幅し、一方で代謝性ニューロモジュレータに対するニューロンの応答性を鈍らせることを見いだした。

[結論] 我々は、DMV神経活動が時間帯によって変化し、この時間変化が食事によって調節されることを初めて明らかにした。これらの知見は、迷走神経放出と副交感神経流出の日常的な制御に関する我々の理解に対して、明確な示唆を与えるものである。

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✅ 図. 食物摂取調節の日内強化の様子を示す模式図:食物摂取調節機構のいずれかの時点でこれらの日内リズムが乱れると、食物摂取パターンが乱れ、エネルギー恒常性に影響を及ぼすと考えられる。NTS、孤束核;DMV、迷走神経背側運動核;GLP-1、グルカゴン様ペプチド-1。
📕雑誌内 review(open access):Page, 2021 >>> doi.

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

僕は、習慣化の技術に大きな関心を抱いている人間である。
note内に、習慣化の技術を探求する専門のマガジンまでつくる熱の入れようで、その中で最近、『過食を防ぐ』ための習慣について計画案を策定し、実行し、結果を出した。

多くの人が抱いている、食事と習慣に関する構図がある。
すなわち、『過食を防ぐ』のための『習慣化』、という構図だ。
だが、今回の論文は、その全く逆のことにも威力があることを示した。
『習慣化』のための『過食を防ぐ』、があるということを。
高脂肪食品の暴食は、サーカディアンリズム(概日リズム)を乱す。
少し飛躍すると、サーカディアンリズムが乱されると「決まった時間」に「決まったこと」をする機能が低下すると思われる。なぜなら、サーカディアンリズムとは「決まった時間」を発信する生物時計だから。毎度毎度違った時間を指す、狂った時計に合わせても、それは習慣化にはつながりにくいだろう。
逆に考えれば、サーカディアンリズムを温存できることは、『習慣化の能力』を高める可能性があるのではないか。そうであるならば、『過食を防ぐ』ことは、それがそのまま『習慣化の能力』を高めることにつながるということ。

『食事』-『習慣』、これは一方向性に関連を持つのではなく、相互に連関しスパイラルループを構成する間柄だった。
そのスパイラルループは正方向にも、負方向にも伸びる。
僕は、『過食を防ぐ』ために『習慣化』を利用したが、それはまったく同時に、習慣化の能力を高めていた、というわけだ。
1つの善いことは、まだ見ぬ善いこととつながっている、ことが多い。
だから、バタフライ効果のすべてがわからなくてもいい。
目の前の、確かな1つの善いことをしよう。
そう思った。

事物と世界とは、私の身体の諸部分とともに私にあたえられているが、これは自然幾何学によってではなく、私の身体そのものの諸部分のあいだに存在する連関にも比較しうるような、あるいはむしろそれと同一の、生ける連関においてなのである。
モーリス・メルロー・ポンティ『知覚の現象学』

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