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聴覚フィードバックの威力。慢性脳梗塞患者の異常動作を抑制

📖 文献情報 と 抄録和訳

リアルタイム聴覚フィードバックが慢性脳梗塞患者の異常動作を抑制する可能性

📕Douglass-Kirk, Pedro, et al. "Real-time auditory feedback may reduce abnormal movements in patients with chronic stroke." Disability and Rehabilitation (2022): 1-7. https://doi.org/10.1080/09638288.2022.2037751
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※ Connected Papersとは? >>> note.

[背景・目的] 本研究では、慢性期脳卒中患者における能動的到達課題中の異常動作を軽減するためのリアルタイム聴覚フィードバックの使用について評価する。

[方法] 20名の慢性脳卒中患者が全データを収集した(年齢:M = 53 SD = 14、性別:男性75%、脳卒中発症からの経過時間(月単位):M = 34, SD = 33)。M = 34, SD = 33)。患者は、臨床セラピストが設定した閾値により異常な動きが検出されると自動的にミュートされる、自分で選択した音楽を聴きながら、能動的リーチング課題を100回繰り返した。被験者内デザインは、2つの条件(聴覚フィードバックあり対聴覚フィードバックなし)を無作為にカウンターバランスさせた順序で提示することで行われた。従属変数は、試行時間に対する異常動作の持続時間の割合とした。

✅ リアルタイム聴覚フィードバックの方法詳細
①異常動作を定義
・異常動作は、(i) 肩の外転 (ii) 肩の挙上 (iii) 体幹の屈曲 からなる別々の ML モデルに記録された。
・肘を約15cm伸ばす肩関節外転、椅子の背もたれから約10cm前傾する体幹屈曲、肩を約5cm上げる肩関節挙上、各患者は一度に5秒間静止した。
・これらの異常位置は、3つのMLモデルの最大上限を1.0とし、下限は、最も最適な動作パターンで目標動作を行った5例を記録することで0.0とした。
②ビデオから異常検出→③リアルタイム聴覚フィードバック
・サポートする3つのポジション(腕、体幹、肩)に対して、異常な動きがリアルタイムでフィードバックされる閾値を設定し、正確な閾値がシステムに保存された。
・フィードバックレベルは、通常0.2~0.3(すなわち、上限測定値の20~30%)の範囲であり、常に下限0.0と上限1.0の間であった。記憶された閾値以上の異常な動きは、参加者が姿勢を正すまで聴覚フィードバック(音楽のミュート)をもたらし、その時点で音楽のミュートが解除された。

[結果] 聴覚的フィードバックを受けた場合、異常動作の持続時間の有意な短縮が観察され、F(1,18) = 9.424, p = 0.007, 大きな効果量 (partial η2= 0.344)を認めた.

[結論] 脳卒中患者は、リアルタイムの聴覚フィードバックを活用することで、最適な動作パターンで過ごす時間の割合を増やすことができる。このアプローチは、動きの質に重点を置きながら、高い運動量を促す動機付けの枠組みを提供するものである。

[臨床意義] 上肢のリハビリテーションにおける動作の質は、バランスのとれたリハビリテーションプログラムの一部として目標とされるべきです。聴覚フィードバックは、慢性期脳卒中患者の代償動作を減らすのに有効なツールである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前より、バイオフィードバックについては積極的に抄読をしてきた。
その内容は、主に視覚フィードバックを用いた研究だった。

一方、今回抄読の研究は聴覚フィードバックを用いている。
僕がとくに気になったのは、成功/失敗と音響の強弱の関係性だ。
通常の考え方では、エラーした場合に『エラー音』を付けたくなるような気がする。
これを叱責型フィードバックと呼ぼう。
失敗したときに、「失敗したぞ」と知らせるフィードバックだ。

だが、今回はそれとは逆に、失敗した場合に「好きな音を無くす」という効果を与えている。
つまり、成功には「好きな音楽」という報酬を与え、失敗には「報酬が与えられない」という消極的な効果を与えている。
これを照善的フィードバックと呼ぶ。
成功したときに、「成功しているね」と知らせるフィードバックだ。

『二匹の狼の話』という話がある。

■ 二匹の狼の話
ある晩インディアンチェロキー族の老人が、孫に、人々の心の中に起こる闘いの話をしていました。
「この闘いは我々の心に住む2匹の狼の闘いなんだ。
一匹は悪を象徴する。恐れ、怒り、妬み、悲しみ、後悔、欲、傲慢、自己憐憫、罪悪感、恨み、劣等感、嘘、うぬぼれ、優越感、エゴ。
もう一匹は喜び、平和、愛、希望、分かち合い、安らかさ、謙遜、真実、思いやり、信頼の象徴だ。」
孫はちょっと考え込んでいましたが、やがて老人に聞きました。
「どっちの狼が勝つの?」
老人は答えました「エサを与えた方が勝つのさ」。

🌍 参考サイト >>> site.

フィードバックを与えるときに、照善的か叱責的か、は目的は同一だが全く違う効果を与えかねない。
失敗にムチを与えるより、善行に光を照らしたい。
今後のフィードバックを与える際の参考にしていく。

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