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脳卒中後の痛み:画像から神経障害性疼痛を判別

📖 文献情報 と 抄録和訳

脳卒中後の痛みと神経因性疼痛の区別:白質内の痛み

Lemos, Marcelo Delboni, et al. "Dissecting neuropathic from poststroke pain: the white matter within." Pain 163.4 (2022): 765-778.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 脳卒中後疼痛は、中枢神経障害性疼痛(中枢性脳卒中後疼痛[CPSP])非神経障害性脳卒中後疼痛(CNNP)の両方を包含する異質な用語である。CPSPは、古典的には外側脳幹、後部視床、頭頂葉の損傷と関連しているが、これらの構造をつなぐ白質の役割は無視されがちである。さらに、脳卒中のトポグラフィーとCNNPの関係も完全には理解されていない。

[方法] 本研究では,35名のCPSP群と2つの対照群(CNNP患者27名,痛みのない脳卒中患者27名)における脳卒中部位を比較することにより,これらの問題を検討した.脳MRI画像を2つの相補的アプローチで解析した。ボクセル単位の病変症状マッピングを用いた探索的解析では、脳全体にわたってCPSPで損傷を受けた有意なボクセルを検出し、仮説駆動型の関心領域ベース解析では、CPSPに関わる既報告の部位を再現した。また、各損傷ボクセルにおけるCPSPのリスクを示すためにオッズ比マップを算出した。

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✅ 図1: 平均T1画像に重ね合わせた先験的仮説駆動型解析のためのカスタムアトラスを構築する。アトラスの軸方向、冠状、矢状方向の画像。関心領域のラベルは表1に記載。

[結果] その結果、視床と頭蓋島の既知の領域以外に、視床と頭蓋島の結合を包含する白質にCPSPの高いリスクを持つ有意なボクセルがあることがわかった(片側閾値Z > 3.96、補正P値<0.05、オッズ比= 39.7)。

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✅ 図2. 有意なボクセルのORマップ。最も高いORを示したボクセルは、視床島結合に関連する白質(OR 5 39.7)およびVPLとプルビンア核の交差点(OR 5 44.6)に位置していた。CPSP, central poststroke pain; WM, white matter. ラベルは表1に記載。AAL3. Automated Labeling Atlas version 3.

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✅ 図3. VLSM研究で同定された有意な白質ボクセルを、標準的なコネクトーム(Human Connectome Project 1065テンプレート)上の線維追跡の種として使用した、ポストホックトラクトグラフィー解析の結果。小脳の流線と交差しないように正中線に排除マスクを配置した。(A)島皮質に到達する被殻線維(6882本、7057mm3容積)、(B)小脳、視床、中心後回を結ぶ線維(164本、8246mm3容積)、(C)脳幹から視床と体性感覚皮質に到達する感覚線維(117本、6066mm3容積)からなり、白質ボクセル上を横切る3本主要ストリームラインは側面図に示すとおりです。(DおよびE)有意な白質ボクセルを構成する色分けされた流線。緑:視床島繊維。赤:歯状-歯槽-視床線維。オレンジ:体性感覚野に到達する棘突起視床線維。E)では、島皮質が緑、一次体性感覚皮質がオレンジで表されている(FreeSurfer DKTアトラスより、DSI studioに含まれる)。VLSM, voxel-based lesion symptom mapping.

[結論] これらの結果は、視床皮質白質結合の中断がCPSPの重要な構成要素であることを示しており、非神経障害性PSPや痛みのない脳卒中の所見とは対照的である。これらのデータは、CPSPを発症するリスクのある患者の選別に役立ち、先制的あるいは治療的介入の候補となりうるものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

抄読部分のボリュームが大きかったので考察はサラッと。
この研究は、臨床上非常に意義の大きい研究だと思う。
なぜなら、とくに脳卒中者において「この痛みって侵害受容性なの?、それとも神経障害性なの?」と悩むことが、非常に多いからだ。
前者なら、その疼痛を引き起こしている力学的な要因に対処することになる。
後者なら、その疼痛を引き起こしている精神や神経障害要因に対処することになる。

「この痛みって神経障害性ですか?」
ダイヤグラムの、その1つの問にどう答えるかによって、その後にとるべきアクションがガラッと変わってしまう。
臨床思考過程を取る上で、とても大きな岐路。
そして、今回の研究は、その判断において信頼できる、1つのコンパスを提供してくれた。
視床のちょっと外側に外れた後方領域。
覚えておこう。

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