退院後の歩行能力は、身体活動量の必要条件であって十分条件ではない
📖 文献情報 と 抄録和訳
外来リハビリテーションにおける活動能力の向上と日常生活動作の遂行能力の向上の比較
[背景・目的] 我々は、身体活動量の向上と日常生活における活動能力の向上との間の潜在的な不一致についての疑問を解決した。この不一致は以下の通りである。
①日常的な外来診療でよく見られるものか、介入研究の成果なのか。
②上肢(Unique to upper limb, UL)のリハビリテーションに特有のものか、それとも歩行リハビリテーションにも見られるものか?
③脳卒中患者にのみ見られるのか、それともより広範な神経リハビリテーションの問題なのか?
[方法] 5つのクリニックで外来リハビリテーションを受けている脳卒中またはパーキンソン病(parkinson disease, PD)患者156名の縦断的観察コホートについて、入院時およびエピソード期間中の毎月の評価を行った。個々のCapacity measure(C:Action Research Arm Testまたは歩行速度)およびPerformance measure(P:ウェアラブルセンサーによる使用率または歩数/日の測定値)データをモデル化し、予測される変化点を抽出した。個人の変化が 1 標準誤差より大きいかどうかを判断するために,シミュレーション法を用いた.参加者は、Capacity(C+またはC-)および/またはPerformance(P+またはP-)が向上したかどうかに基づいてカテゴリに分類された。
[結果] 大多数(59%)がC+P-に分類された。C+P+(20%)とC-P-(21%)に分類される人は少なく、C-P+に分類される人は1人(1%未満)であった。C+P-の割合は,脳卒中(χ2 = 48.7, P < 0.0001)およびPD(χ2 = 24.3, P < 0.0001)の歩行サブグループで,脳卒中ULサブグループより有意に大きかった。
[結論] 歩行能力の向上とパフォーマンスの向上が一致しないことは,日常的な外来での神経リハビリテーションにおける問題点である。パフォーマンスに関する情報があれば,患者や臨床医はそれに対処するために行動することができる.
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例えば、歌が上手いことは歌手になるためには必須と思われる。
この場合、「歌が上手いこと」は歌手になるための必要条件だ。
一方で、歌が上手い=歌手になれる、ではない。
運/縁や、人柄や、時勢など、さまざまな要因があることだろう。
この場合、「歌が上手いこと」は歌手になることの十分条件ではない。
今回の研究は、「歩行能力は、身体活動量向上のための必要条件であって十分条件ではない」ことを明らかにした。
つまり、歩行能力が向上したからといって、必ずしも身体活動量が向上するわけではない。
身体活動量がチャーハンとしたら、歩行能力は米らしい。
チャーハンをつくるためには、米は絶対必要だが、それだけではチャーハンにはならない。
まず、他の具材が必要だろう。
身体活動量に対しては、例えば心理社会的因子(うつや自己効力感、破局的思考 etc...)、疼痛など多数の因子が考えられる。
そして、具材だけあれば十分なわけではなく、料理人と調理過程が必要だ。
身体活動量に対しては、セラピストを料理人として患者教育や、モニタリング/フィードバックなど(調理過程)が当てはまる。
退院支援に向けたメッセージを一言でいえば、「歩行能力だけでは不十分」である。
退院支援における金言的論文として、記憶しておきたい。
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