ひっぴー

アメリカで大学生をしています。日々感じたこと、考えたことを気まぐれに言葉にする場所。適…

ひっぴー

アメリカで大学生をしています。日々感じたこと、考えたことを気まぐれに言葉にする場所。適当に全力で生きたい。

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近頃、流浪人の夏

日記を書こうとするとネガティブなことばかり書いてしまって、それがストレス発散にはなっているのだけど、それでいいのかなとも思ったりする。私の周りには思っていたより日記をきちんと書いている人がたくさんいて感心した。私はいつも三日坊主で終わってしまうから。 その時の自分が何を考え感じていたかを振り返れるから、日記を書くのが好きだと誰かが言っていた。人は簡単には変わらないと言うけれど、細胞が時間をかけて生まれ変わっていくように、私が世界を見るレンズも、目に見えない速度で毎日少しずつ

    • 普通の日のエッセイ

      眠れない夜にぼーっと考え事をしていたら、去年は色んな人からたくさんの愛をもらった一年だったなあと思い、それじゃあ今年は私がたくさんの愛をあげる一年にしようと思った。 冬休みの間、たった三週間だったけど、恋人との共同生活は思いの外居心地が良く、寮の部屋でひとりぼっちの今はずいぶん味気ない。体はそわそわしているのに、心は何もやりたくないと言って聞かないから、あんまり何も捗らないし、レンジでチンした冷凍のマカロニチーズは味がしなかった。 夕方、私の部屋に恋人が遊びにきた。私に会

      • 愛おしい無駄

        季節はすっかり秋めいてきた。暑苦しい蝉の声はすっかり影を潜めて、ブーツが落ち葉を踏み締めるくしゃっという音で、もう秋がすぐそばに来ていることに気づいた。夏から秋へと移り変わる時、その色彩の変化に心が躍る。眩しいくらいの鮮やかな花々は色褪せて深みを増し、新緑の木々は黄金の葉を落としてせっせと絨毯をこしらえる。夏のはつらつとした感じももちろん好きだが、秋の色たちは、鮮やかながらどこか心を落ち着かせるような深みがあって、それもまた良い。何より気温が丁度良い。ここ最近は雨続きで、その

        • 肺いっぱいに満ちた今日

          木漏れ日がちらちらと揺れている。鼻から思い切り息を吸い込むと、新鮮な土と緑の匂いが肺をいっぱいに満たして、隙間から降り注ぐ太陽の光がじんわりと背中を温める。ずっとこの場所にとどまっていたいと思う。地球からずっと離れた、遥か遠くの太陽の熱がこの地上まで届いているだなんて、太陽は一体どれほど熱いのだろう。 毎日は淡々と過ぎて行くけれど、季節の境目は私たちが思うよりずっとドラマチックだ。やらなければいけないことに追われて、はっと気がつくと一日が終わっている。自分は一体何をしていた

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        近頃、流浪人の夏

          憂鬱の雨が降る

          朝目が覚めると体が重たくて、昨日まで留守にしていた憂鬱がちゃっかり心の中に居座っている。どうしたものかと思って外を見ると、雨が降っていた。 雨はじっとりと心を湿らせる。頼んだところで憂鬱は立ち去ってはくれない。雨のせいにしてしまうのは気が引けるが、そういうどんよりした日には、計画していたこともなかなか思い通りにいかないものだ。眠気覚ましに頼んだ抹茶ラテは、こちらの気も知らず余計に熱くて、舌を火傷した。むしゃくしゃしたり、悲しくなったりしながら、濡れたコンクリートの上を歩く。

          憂鬱の雨が降る

          生と死とゴッホ

          アンテナを張って生きている人が好きだ。例えば日々の小さな気づき、頭の片隅に浮かんだ気持ち。そういうものをちゃんと掬い上げて、大切にしまっておく。私もそんな風に生きてゆきたい。 幸せは謙虚にさりげなく毎日に潜んでいる。忙しくしていると、ついそれを忘れてしまう。それはお風呂に入ることと似ている。熱いお湯で体を流して、シャンプー、リンスをする。体を洗う。そしてまた流す。手順が完全に体に染み付いていているから、意識を使う必要がまるでない。あまりに頭と体が繋がっていなくて、シャンプー

          生と死とゴッホ

          大人になるということについて

          愛読書はさくらももこの「もものかんづめ」だと言いたい。新調したリップスティック、日記帳、ハンドクリーム、非常用のお菓子と一緒に、お気に入りの鞄にいつも忍ばせて歩く。良いことがあれば表紙を撫で、落ち込んだ時は頁を捲る。そういう大人になりたい。 この間、家族でブックオフに行った。子供の頃は手が届かなくて諦めたものたちが買い占められるくらいの手頃な価格で並んでいるのを見ると、なんだかいい気分になる。あの時欲しかったゲームソフトの数々。別に今更買おうとは思わないけど、手に入れようと

          大人になるということについて

          旅支度

          美容室に行った。美容室は私を清潔な気持ちにさせる。シャキシャキとリズミカルに動く鋏の音。つんと鼻を刺激するカラー剤の匂い。伸び切って質量の多いたっぷりとした黒髪が、コンクリートの床に無惨に散らばる。かつて私の一部だったものの残骸。私の体はぎこちなくシャンプー台に収まっていて、柔らかく透けた布の裏側を見つめている。人に苦労をかけるのが嫌いだから、頭を完璧な角度のまま保てるように、頭の重さを預け過ぎないように、細心の注意を払う。その努力が身を結んでいるのか知る術はない。 したく

          飛行機の中の蝿

          飛行機の中に蝿が飛んでいた。その辺の蝿では到底辿り着けないような空の彼方にいることを、その蝿は知る由もない。あの蝿はどこに行ってしまったのだろう。今も何も知らずに世界を旅しているだろうか。 空港は甘ったるい匂いがする。国にはそれぞれ特有の匂いがあって、日本は醤油の匂いなのだと昔誰かが言っていたのを思い出した。長い長い列が続いている。さまざまな理由でさまざまな場所からやってきた人達が、みんな一緒くたになって並んでいる。それぞれの言語で、列がなかなか前に進まないことに文句をつけ

          飛行機の中の蝿

          木漏れ日、線香、麦茶、きゅうり。

          木漏れ日。蝉時雨。線香。湿った菊の香り。 墓地は夏の匂いに満ちている。花を包むビニールがパキパキと新鮮な音を立てる。蝋燭の炎は夏風にくすぐられて、ちらちらと揺れている。陰湿とか侘しさとか、墓地というとそういうものを連想しがちだが、夏の墓地はそれとは無縁に思える。家族のざわめきが聞こえる。人の思いが籠る場所というのは、不思議と温度が高いような気がする。 お墓の前で、私は両手を合わせる。心の中で挨拶をする。そこにいるのかもしれない祖父や祖母に、会ったこともない名前も知らぬ先祖た

          木漏れ日、線香、麦茶、きゅうり。

          乾いたハンバーガーの味

          人を知るということは、新たな世界を見ることであって、そこには言葉では形容し難い、思いがけないときめきが潜んでいる。自分とは違う誰かと出会うことで、人は自分の外側の世界の存在に気づく。そして同時に、自己の特異性に気づく。一方で、それは自分の無知さ、愚かさを知ることでもある。人を知るということは、時に残酷で苦しい。 「いつも美味しいから困る」と、マックのダブルチーズバーガーを頬張りながら友人が言った。私は「マックの匂い」が好きだ。どんな時でも無性に食欲を掻き立てるあの特有の香り

          乾いたハンバーガーの味

          前髪を切った日

          前髪を切った。 古い自分を切り落として、少しずつ新しい自分に生え変わる、 髪を切るとそういう気分になれる。 誰にでもなりたい自分というのがあって、誰もが、そういう自分に近づかなければというプレッシャーと日々闘っているのだと思う。 髪を切るみたいに、自分の嫌な部分は切り落として、代わりになりたい自分が生えてくれば良いのにと思ったりする。 自分以外の誰かの前で、本当の自分でいることって案外難しい。 知らないうちになりたい自分になろうって背伸びしていると、それはなおさら難

          前髪を切った日

          サンタも私も多忙な師走

          気がつけば早12月。バタバタしていている内にゆっくり振り返る暇もなく、なんと秋学期がついに終わってしまった…!というわけで、ちょっと遡って、最高にアメリカンだったここ1ヶ月を振り返ってみようと思う。 11月の中頃、クラスメイトが「11月に流れるクリスマスソングを許せるかどうか」で口論していた。非常にアメリカンな議論だ。ハロウィンが終われば次はクリスマスなのだから別にいいのでは…と思っているそこのあなた。アメリカにはハロウィンとクリスマスの間にもう一つ、忘れてはいけない祝日が

          サンタも私も多忙な師走

          肉まんが食べたい冬【留学日記】

          アメリカではハロウィンが終わると一気にクリスマスムードになる。家の前を陣取っていた巨大な蜘蛛や骸骨は姿を消し、マライア・キャリーの「All I Want For Christmas Is You」があちこちで流れ出す。 昨日ふらっと街へ出かけたら、早くもイルミネーションが点灯していた。祝日がやってくる随分前から浮き足立つこの感じ、アメリカ人の祝日に対する本気度。アメリカの好きなところだ。 ハロウィンは友達の家で過ごした。住宅街をドライブして気合の入ったハロウィーンデコレー

          肉まんが食べたい冬【留学日記】

          マツケンサンバは世界を救う【留学日記】

          突然だが、「マツケンサンバ」をご存知だろうか。 “上様”の愛称で親しまれる日本の名優・松平健が煌びやかな衣装に身を包み歌って踊る、サンバ調の歌謡曲だ。日本で広く親しまれているあのマツケンサンバは、正式には「マツケンサンバII」である。 2004年にCDがリリースされて以降、軽快なメロディ、派手な衣装とパフォーマンスが人気を博し、この「マツケンサンバII」は日本で一大ブームを巻き起こした。 それから時を経て2021年。コロナ禍で鬱屈とした日々を送る人々に、マツケンサンバは

          マツケンサンバは世界を救う【留学日記】

          誰かに認められたいと思ったっていいじゃない【留学日記】

          今日は珍しく雨が降っている。 私は雨の日が好きだ。低く垂れ下がった灰色の雲。まるで朝じゃないような薄暗い奇妙な朝。雨粒を照らすハイビーム。濡れた土の匂い。こんな日にはしっとりした音楽を聴く。物語の中で何か特別なことが起こる時は、大抵天気が悪い。雨は平凡に繰り返される毎日を少しだけ特別なものにしてくれる気がするのだ。 先日、渡米してから今までの私の成長を振り返る記事を書いた。 四年間の限られた大学生活。両親をはじめ多くの人からの支援で叶っている留学という夢。だからこそ留学生

          誰かに認められたいと思ったっていいじゃない【留学日記】