乾いたハンバーガーの味

人を知るということは、新たな世界を見ることであって、そこには言葉では形容し難い、思いがけないときめきが潜んでいる。自分とは違う誰かと出会うことで、人は自分の外側の世界の存在に気づく。そして同時に、自己の特異性に気づく。一方で、それは自分の無知さ、愚かさを知ることでもある。人を知るということは、時に残酷で苦しい。

「いつも美味しいから困る」と、マックのダブルチーズバーガーを頬張りながら友人が言った。私は「マックの匂い」が好きだ。どんな時でも無性に食欲を掻き立てるあの特有の香り。でも食べてみると存外味気がないところも。ほとんど自動的に口に運んだポテトが無遠慮に口の中の水分を奪っていく。私はハンバーガーをひとかけら残した。

駅の改札があまり好きじゃない。私にとっては別れの象徴みたいなものだ。それは内側と外側の世界を隔てている。一度通ったら、向こう側に佇む友人は、遠い世界に住んでいるように見える。私だけがいつも旅立っていく。改札を通った後、振り返って手を振ったほうが良いのかわからなくて、結局いつも振り返れずにいる。背中に寂しさと罪悪感を感じながら、それがバレないように早足で歩く。

東京駅は人でごった返していた。人の波が絡まってはほどける。無規則なリズム。構内放送で見知らぬ誰かの名前が呼ばれている。「お伝えしたいこと」があるらしい。どこか秘密めいた響きがある。一体何をお伝えするのだろう。駅のホームで子供が泣いている。私たちの未来が、確かな存在を主張している。

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