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肉まんが食べたい冬【留学日記】

アメリカではハロウィンが終わると一気にクリスマスムードになる。家の前を陣取っていた巨大な蜘蛛や骸骨は姿を消し、マライア・キャリーの「All I Want For Christmas Is You」があちこちで流れ出す。

昨日ふらっと街へ出かけたら、早くもイルミネーションが点灯していた。祝日がやってくる随分前から浮き足立つこの感じ、アメリカ人の祝日に対する本気度。アメリカの好きなところだ。

ハロウィンは友達の家で過ごした。住宅街をドライブして気合の入ったハロウィーンデコレーションを楽しんだ後、おやつとブランケットと猫をお供にmovie marathonをして(Stranger Thingsを一気見しました)、友達の家族と食卓を囲んで、かぼちゃを彫った。

友達と彫ったカボチャ。左:私作 右:友達作
部屋のデコレーションから伝わるハロウィンへの本気度。

ちなみに、子供たちが仮装してお菓子をもらいに近所を訪ねて回るハロウィンならではの光景は「Trick-or-treating」と呼ばれていて、今でもアメリカではメジャーな習慣だ。ハロウィンの日の夕方には、キャンパス周辺の街を歩く小さな魔女や恐竜やホットドッグをたくさん見かけた。

私はtrick-or-treatingにもハロウィンパーティにも参加しなかったが、まさにアメリカのハロウィン!といった感じの素敵な週末を過ごした。

と、楽しい話はこのくらいにして、キラキラして映る留学生活だが、残念ながらそういうことばかりではない。

先日音楽を専攻する生徒と教授が集まるミーティングがあった(私はJazz Studies major)。「願書や履歴書にはどんなことを書けばいいのか」「大学院に進む前に現場で経験を積むべきか」なんて周りの生徒が次々と教授に質問する中で、私はただ呆気に取られて座っていることしかできなかった。

もともと私は「学びたいことをとにかく思い切り学びたい」という思いでアメリカの大学に進学したのだし、「今は卒業後の進路ばかりに囚われる必要はない。卒業後すぐにやりたいことを仕事にできなかったとしても、普通に働いてそれまで食い繋ぐことはできる」という楽観的思考で生きている。それでもやっぱり、周りが早くも明確な将来設計を持っていると焦らずにはいられない。

その不安に拍車をかけるように、私は自分が音楽面でスランプに陥っていることに気づいた。二年生になってすでに前期が終わろうとしているが、入学してからずっとがむしゃらに頑張ってきたはずなのに、ちっとも成長が感じられなかった。

頑張っているのに前に進めていないとわかった時って一番辛い。どう頑張っていいのかわからなくなってしまって死ぬほど落ち込んだけど、ずっと落ち込んだままでいるわけにもいかないので、今はなんとか前を向いてスランプから抜け出すための努力をしている。

アメリカ大学生活のリアルをもう一つ共有すると、ど定番なのが「ルームメイト問題」。アメリカの大学に通う多くの留学生が寮でルームメイトと一緒に生活している。私ももちろん、一つの部屋をルームメイトと二人でシェアしている。

留学生の間では、「ルームメイトとはすごく仲良くなれるかその真逆かの二択」と言われている。私はというと、今年のルームメイトとはとても上手くやっている。それでもやっぱりストレスフリーの生活を送るということは不可能に近い。

この時期は、期末試験が迫ってきているのに加えて急に気温が下がるので、心身共に調子を崩す人が続出する。私のルームメイトはストレスを溜めておけないタイプで、ここ最近は毎晩泣いたり叫んだり弱音を吐いたり、かと思えば気力を失って一日ほとんど寝ていたり、情緒が気圧並みに不安定だった。

いつもなら辛い思いをしている人のために何かしたいと思う私も、今回ばかりは余裕がなく、ルームメイトの嵐のような情緒に影響されて私まで気が滅入ってしまった。過酷なアメリカ生活で一番の悩みを挙げるとするなら、誰も人の悩みを聞く余裕なんてないのでしんどい時に頼る人がなかなかいないということだ。

そんな感じで私は最近、いや、いつも通り、怒涛の日々を送っている。楽しいことも辛いことも巨大な波のように襲いかかってくる。嵐の連続。大航海だ。うっかり気を抜いて船が転覆しないように毎日必死なのだ。

今週末から地獄のように気温が下がって、来週には雪も降るらしいと聞いたので、暖かくして乗り切ろうと思う。コンビニの肉まん食べたいな。

世界中で今日も頑張っている人たちに、少しの休息と小さな幸せが訪れますように。



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