加藤恭

作家志望の社会人です。小説、アニメ、映画、舞台、漫画、旅行、美術館にyoutubeにV…

加藤恭

作家志望の社会人です。小説、アニメ、映画、舞台、漫画、旅行、美術館にyoutubeにVtuberが好き。物語が好き。綺麗なもの、楽しいもの、歌やダンスが大好きです。何かを作るのも見るのも大好きです。まだまだ修行中の身ですが、一クリエイターとしてやっていけたらな、と思う次第。

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記事一覧

ブックティータイム「妖異金瓶梅」

透明なガラスポットの中に、種々の色彩がゆらゆらと揺れている。彼女が優雅な所作で取り出したのは、よく使うマグカップではなく白い花びらのように薄い磁器の湯呑だった。…

加藤恭
2か月前
2

夜明け前の旅

朝日も昇らぬ朝夜のはざま 闇夜を歩むと 思いたつ くらい夜道の灯りを追って とおく とおくを 目指してあるく なんにも残らぬ歩みがあって 誰にも遭わない歩みがあって…

加藤恭
1年前
1

「コンビニ人間」村田沙耶香著を読んで。

コンビニ人間はハッピーエンドだ。 読んだ人によって意見は分かれる作品だろうが、わたしは完全無欠なほどにハッピーエンドだと思った。 映画「スパイダーマン」の冒頭で…

加藤恭
1年前
1

さよならだけが人生だ 

さよならだけの人生なれど 得難い出会いに足をとめ さよならだけの人生は それらを愛するためにある

加藤恭
4年前
2

「秋から冬へ」 詩

雨がぴしぴし降っている 風も僅かに吹いている 紅葉と銀杏が色付く森の 向こうのお山は雪被る 潮の香りが漂う街に 冬の匂いが僅かに混じる ただ今頭上の雨雲は 山の…

加藤恭
4年前
3

「雨降る朝に」140字小説

朝、寝台で雨の音を聞く。朝の雨は良い。君は濡れるのを嫌がって、いつもより遅く出て行くから。残念なことに、今朝は通り雨。すぐに雨音が遠くなって行く。腕の中で、眠た…

加藤恭
4年前
1

「雨降る日に」140字小説

ふと窓を見ると、向こう側の景色を隔てる硝子に、一滴、雫がぶつかった。そう思っている間に、雫は見る間に増えて、幾筋もの流水になっていく。不安そうに窓を見る彼女は、…

加藤恭
4年前

何も求めることはない 詩

何も求めることはない 浅く微睡む時間さえ。 後悔ばかりが生まれては 長き途上に立ち竦む。 振り返っては悩みに悩み 先行く人らの旅路を妬む。 我がことながらに情けな…

加藤恭
4年前
1

我が生は (短歌)

我が生は 花をも実をも つかじとも 葉は青々と 育ちぬるかな

加藤恭
4年前
1

黄金の葉々は

刈りてこまれた 枝葉の中に 黄金を放つ 灯りがありき 葉脈透かして見る見る 葉々(はば)は 雨に打たれて 艶を増す

加藤恭
4年前
2

「もはや望みません」 詩

加藤恭
5年前
1

「鮫の少年」 詩

加藤恭
5年前

「こそあど。」 詩

加藤恭
5年前
3

「背高のっぽの杉の木が」 詩

加藤恭
5年前

「真水」詩

加藤恭
5年前

『ぶどう。』詩

加藤恭
5年前
ブックティータイム「妖異金瓶梅」

ブックティータイム「妖異金瓶梅」

透明なガラスポットの中に、種々の色彩がゆらゆらと揺れている。彼女が優雅な所作で取り出したのは、よく使うマグカップではなく白い花びらのように薄い磁器の湯呑だった。
注がれる液体の香りは紅茶に似ていたが、紅茶よりずっと色味の薄い金色がかった茶色であり、湯呑の隣に置かれた皿に乗っているのは、無邪気な華やかさに溢れた中華菓子だった。花や草木を象った月餅菓子は、気取った和菓子のような繊細さはない代わりに、親

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夜明け前の旅

夜明け前の旅

朝日も昇らぬ朝夜のはざま
闇夜を歩むと 思いたつ
くらい夜道の灯りを追って
とおく とおくを 目指してあるく

なんにも残らぬ歩みがあって
誰にも遭わない歩みがあって
けれどもその時 わたしは確かに
世界の全ては わたしの物に

とおく とおくの 旅路の果ての
どことも知らぬ 歩みの果ては
夜空をあおく にじんで染めた
星のきらめく 夜明けの空だ

「コンビニ人間」村田沙耶香著を読んで。

「コンビニ人間」村田沙耶香著を読んで。

コンビニ人間はハッピーエンドだ。
読んだ人によって意見は分かれる作品だろうが、わたしは完全無欠なほどにハッピーエンドだと思った。

映画「スパイダーマン」の冒頭でこんな台詞がある。
「あらゆる物語のテーマは『自分は誰なのか』である」

初めて映画を見てから数年、あのセリフをこれ以上ないほど体現した作品だと思う。

この話は、人間に擬態しようと苦労しているコンビニ店員の物語だ。彼女をサイコパスと呼ぶ

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さよならだけが人生だ 

さよならだけが人生だ 

さよならだけの人生なれど
得難い出会いに足をとめ

さよならだけの人生は
それらを愛するためにある

「秋から冬へ」 詩

「秋から冬へ」 詩

雨がぴしぴし降っている
風も僅かに吹いている

紅葉と銀杏が色付く森の
向こうのお山は雪被る

潮の香りが漂う街に
冬の匂いが僅かに混じる

ただ今頭上の雨雲は
山の向こうで雪降らす

乾いた地面を見せてる道は
もうじき白々飾られる

「雨降る朝に」140字小説

朝、寝台で雨の音を聞く。朝の雨は良い。君は濡れるのを嫌がって、いつもより遅く出て行くから。残念なことに、今朝は通り雨。すぐに雨音が遠くなって行く。腕の中で、眠たげに君が身動いだ。
「…雨?」
「…うん」
些細な僕の嘘。
もう少しだけ、このまま。

「雨降る日に」140字小説

ふと窓を見ると、向こう側の景色を隔てる硝子に、一滴、雫がぶつかった。そう思っている間に、雫は見る間に増えて、幾筋もの流水になっていく。不安そうに窓を見る彼女は、確か傘を忘れていたはず。…下校時刻。言うのだ。きっと言うのだ。僕は、傘を握りしめた。

何も求めることはない 詩

何も求めることはない 詩

何も求めることはない
浅く微睡む時間さえ。

後悔ばかりが生まれては
長き途上に立ち竦む。

振り返っては悩みに悩み
先行く人らの旅路を妬む。

我がことながらに情けなし
今日も己を嫌悪し斃(たお)る。

我が生は (短歌)

我が生は (短歌)

我が生は 花をも実をも
つかじとも
葉は青々と
育ちぬるかな

黄金の葉々は

刈りてこまれた 枝葉の中に
黄金を放つ 灯りがありき
葉脈透かして見る見る 葉々(はば)は
雨に打たれて 艶を増す