今日は会社に行けないや。

新卒で今の会社に入って、初めて会社を休んだ。

表向きは体調不良、朝の検温は6度3分。


体はまったく辛くなかったけれど、ベッドの中で目を覚ました瞬間に、あーーなんか今日は無理だなあと思ってしまった。


歯を磨こうと起き上がって、休んでしまおうかとふと脳裏をよぎったが、いやいや全然いけるし、ともう1人の自分が遮る。


仕事をしている上で、そりゃ嫌なことももちろんあるけど、今日特別キツそうな商談があるとか、すごく意地悪な上司がいるわけでもない。


そして、クローゼットを開けたとたんに思った。


やっぱり、今日は会社に行けないや。


社会人として失格なのは重々承知している。甘やかされて育った平成育ちと言われてしまえばそうかもしれない。


その日のTwitterはこんな感じ。


文面そのままであるが、わたしはなんとなく二度寝をした後、起きてまず食事をした。とろとろとした眠気の中で食べたのは、無印のトマトキーマカレー。レトルトのやつ。無印のカレーってめちゃくちゃいっぱいあるんだけど、トマトキーマが1番美味しい。とろけるチーズをかけて、セブンの温泉卵を落とすともっと美味しい。わたしはカレーを、いつもよりだらだらと、でも味わって食べた。


そのあとふらふらとあてもなく街に出た。近くのヴィレッジヴァンガードで、ずっと読みたかった岡崎京子さんの「pink」を買った。表紙が可愛い。

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【以下ネタバレ注意𓃴𓃵𓃶】

主人公のユミちゃんは、夜の仕事を掛け持つOLで、ワニを飼っている。ワニを飼い続けるために、そして綺麗なキラキラで溢れた生活を営むために、ユミちゃんは昼夜はたらく。しかしそこに泥臭さやキツさは漂っておらず、あっけらかんと、奔放に、ユミちゃんの毎日は続く。ーー恋も仕事も。



「pink」の中でユミちゃんが残す言葉はかなり印象的だった。

こんなキレイなものが買えるんなら、あたしは何だってするんだ
そんなにお金欲しければカラダ売ればいいのに
自分の心が貧しいからって人まで巻き込むことないじゃん。ウチのワニのエサよ‼︎エサ‼︎ひき肉にしてやる!
ピンク色はやさしくてきれいだったお母さんの爪の色。あたしのしあわせのいろ

欲望に忠実で、欲しいものは手に入れないと気が済まない。亡くなったお母さんが大好きで、来るもの拒まず、とっても優しいユミちゃん。ところが、物語の結末は恋人が事故にあったことを知らず、待ち合わせ場所で今後の幸せに思いを馳せるユミちゃんが描かれている。大好きなワニは意地悪な継母によってワニ皮のカバンにされてしまう。女の子のキラキラと、ファンタジーを織り交ぜているのにどこかリアルな残酷さが、痛かった。


レビューを読んでいたら、ユミちゃんほどいろんなことに対して奔放に、自分の欲望のままに動けることを「羨ましい」と書いている人が多かった。わたしもユミちゃんが羨ましい。まず、自分の欲望がはっきりこれだ!と自分で的確に認識できるってすごいことだと思う。わたしはこの日会社に行けなかった理由すらよく分からなくて、自分が結局何になりたいのかもどう生きていきたいのかも未だよくわからない。ただ、わたしの中に、ユミちゃんの持つ「女の子パワー」みたいなものがお揃いで秘められていたら本当に幸せだな。自分の幸せへの道を、ドレスの裾を持ち上げてズンズン進んで勝ち取っていくようなプリンセスになりたいよ、わたしは。


ユミちゃんについて考えながら、これまた大好きなガトーショコラを食べていたら、いつのまにか日付を超えていた。夜中の甘いものは乙女には大敵だけど、明日を頑張るためのご褒美の前借りだから良いかなってことで、美味しく頂いた。ちょっとお酒が効いたチョコレートの苦味は、次の日を乗り越えるためのエンジンにもってこいの、優しい大人の味だった。



しがないOLの独り言でした。


2020.7.12

suu









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